亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(35)「ポーの一族」イラスト集~予告・表紙・合同扉絵⑦

⑦は「一週間」「エディス 前・中・後編」のイラストです。予告・表紙・合同扉絵はこれが最後になります。


特に記載のない限り出版元は小学館です。
ほとんどが古い雑誌のコピーの画像ですのでコンディションが良くないものもあります。特にモノクロは不鮮明だったり裏写りしたりしています。また、絵の傾きを補正しきれていません。どうぞご了承ください。
このイラスト集は旧作のレアなイラストをご紹介してファンの方にポーの世界をより楽しんで頂きたいという思いで作りました。萩尾先生ならびに小学館様より削除のご要請がありました場合は速やかに削除いたします。

 


「一週間」

予告カット
別冊少女コミック』1975年11月号

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どちらも花とアランの素敵な絵です。
特にカラーは瞳の緑色がきれいで私のお気に入りです。
モノクロは女の子たちと楽しく遊んでいる時、カラーは1週間で戻ると言ったエドガーの帰りが遅くなって不安な気持ちで待っている時でしょうか。

予告カット
ポーの一族 プレミアムエディション 上巻』2019年刊(2020. 6. 22 追加)

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上のモノクロ予告の完全版です。
掲載誌ではトリミングされていましたが、窓の向こうに小さくエドガーがいます!

カット
『テレビランド増刊イラストアルバム⑥萩尾望都の世界』1978年 徳間書店

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こちらも花の中で微笑むアラン。
この絵は赤い表紙の『萩尾望都作品集〈第Ⅰ期〉』(いわゆる赤本)にも口絵として収められているのですが、初出は不明です。
予告などに使用されたかどうかも確認できていません。
もしかすると予備のカットだったか、予告とは別の用途に描かれたものの使われなかったのかもしれません。

 


「エディス」前編

予告カット
別冊少女コミック』1976年3月号

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タイトルはどちらも仮題となっています。
カラーはエディスを中心に右上から時計回りに、エドガー、アラン、メリーベル、シャーロッテです。
どちらも意味深な絵ですよね。
特にモノクロは背を向け合うエドガーとアランの間にメリーベルがいて、アランの方を見て涙を流しているという…。
これはアランへの涙? エドガーへの涙? きっと2人への涙。
改めて見ると切なくなります。

 


「エディス」中編

予告カット
別冊少女コミック』1976年4月号

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「ん? エディスのはずだけど何だか違う感じ」と思いませんか?
実はこちらの絵は『週刊少女コミック』1974年32号に掲載された漫画家からの暑中見舞の流用なのです。
その画像がこちら。

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この暑中見舞が載ったのは「トーマの心臓」の連載中でした。
ということは、これはもしやエーリク!?
そう思って見ると確かにエーリクに見えます。
別人のようだとは思ったけれど、まさか男の子だったとは!

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「移りゆく時の影に身をひそめ
はるかな旅をつづける
少年たちは今…!?」

こちらのモノクロにも、ちょっとした話が。
実はこのアランは全体の右半分で、本当は左側にエディスもいるのです。
記事(28)でご紹介したTogetterの記事で画像をご覧頂けます。

萩尾望都先生2017年アメリカでの講演会のツイートまとめ - Togetter

薄くて見にくいのですが、スクリーンの下列の右端がこの絵です。
アランの隣にエディスが描かれているのが、おわかり頂けるでしょうか。
とても幸せそうな2人。この幸せがずっと続いてほしかったです…(涙)

予告カット
ポーの一族 プレミアムエディション 下巻』2019年刊(2020. 6. 22 追加)

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上のモノクロ予告の完全版です。
アランの隣にいる少女は顔と髪形はエディスなのですが、金髪に小さなリボンをつけていて少し違う雰囲気。
『LaLa』1976年11月号に掲載された「水色のエプロンの女の子」みたいな感じです。

 

 

「エディス」後編

予告カット

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こちらは本物のエディスです。
上のエーリクと比べると違いがはっきりわかりますね。

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エドガーがとても麗しいのですが裏写りしていて残念。
そこで逆向きではありますが、こちらの絵をどうぞ。
(画像は『別冊少女コミック』1976年8月号「ポーの一族アイロンプリント」より。記事(26)に掲載)

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文は読めない部分もあるのですが、多分こうだと思います。

「エディスを中心にエドガーたちは新たな危機に直面する! 時の流れにさからう彼らの存在にハンターたちは!?」

予告カット
『週刊少女コミック』1976年24号(2018. 9. 18 追加)

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このアランには見覚えがありますよね。
本編の最後から5ページ目、つまり第2シリーズのラスト近くの絵なのです。
それがこちら。

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私などはこの絵を見るだけで胸が詰まってしまうのですが…
とりあえずそれは忘れて予告カットをよく見ると、拡大して比べても確かに同じ絵なのに本編にはない影が付けられています。
先生が原稿をコピーして加筆されたのでしょうか。
本編の絵をそのまま予告に使っている例はよくありますが、このように加工されているのは珍しいです。

 

今後の「ポーの一族」イラスト集は、少し先になりそうですが「1ページ劇場」などをご紹介していく予定です。

 

~2020. 6. 22 追記~


ポーの一族 プレミアムエディション』と「ポーの一族」展図録には、このブログのイラスト集にないカットが3点掲載されています。


リーベルと老ハンナ(メリーベルと銀のばら)
ユーシス(メリーベルと銀のばら)※『プレミアムエディション』のみ
エドガーと眠るアラン(ペニー・レイン)


どれも今のところ雑誌では見つからないので未発表なのかもしれません。

 

 

(34)「ポーの一族」イラスト集~予告・表紙・合同扉絵⑥

⑥は「ランプトンは語る」「ピカデリー7時」「はるかな国の花や小鳥」「ホームズの帽子」のイラストです。


特に記載のない限り出版元は小学館です。
ほとんどが古い雑誌のコピーの画像ですのでコンディションが良くないものもあります。特にモノクロは不鮮明だったり裏写りしたりしています。また、絵の傾きを補正しきれていません。どうぞご了承ください。
このイラスト集は旧作のレアなイラストをご紹介してファンの方にポーの世界をより楽しんで頂きたいという思いで作りました。萩尾先生ならびに小学館様より削除のご要請がありました場合は速やかに削除いたします。

 


「ランプトンは語る」

予告カット
別冊少女コミック』1975年6月号

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カラーは全体が見える絵もあります。
(画像は『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』より)

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エドガーを中心に登場人物が描かれています。
本編と多少違いますが右上から時計回りに、ロジャー、クエントン卿、ドン・マーシャル、1人おいてルイス、テオではないかと思います。
でもエドガーの左下のリボンタイをした人物が誰なのかわかりません。
男性の主な登場人物でこの中に描かれていないのはオービンさんだけですが、オービンさんには見えないし…。
それとも私がクエントン卿かドン・マーシャルだと思った人がオービンさんなのでしょうか。
実は「ランプトンは語る」には本編にも謎の人物がいるのです。
そのコマがこちら。
(画像は『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』より)

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オービンさんとシャーロッテの間に背広とネクタイ姿の男性がいますよね?
決して胸像なんかじゃありませんよ。この人、一体誰なんでしょうか。
オービンさんの仲間?
集会では先に夕食をとったという話なので、その関係者?
しかも作品中にこの男性が描かれているのは、このコマだけなんです。
ま、まさか「11人いる!」状態!?
この男性と予告カットの正体不明の男性は、果たして関係あるのか、ないのか。
非常に気になります。

~2019. 2. 26 追記
カラー予告のリボンタイをした人物は、コメント欄にみっしさんが書いてくださったようにマルグリットだと思います。
男性だと思い込んでいましたが髪形が似ているし、唇が他の人物より赤くてルージュを引いたように見えるし。
追記するのがこんなに遅くなってしまって申し訳ありません。

表紙カット
別冊少女コミック』1975年7月号

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表紙カットはちょっとわかりにくいですが髪の色と同じ青いバラが1輪、顔の左に描かれています。

 


「ピカデリー7時」

予告カット
別冊少女コミック』1975年7月号

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どちらも灯りのともった歪んだ窓の列が背景に描かれていますね。
これは作品の扉絵にも共通しています。
(画像は『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』より)

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作品中に描かれているピカデリーサーカスに面した建物の窓、またはポリスター卿のアパートかポールの勤務先のホテルの窓のイメージでしょうか。
扉絵の窓には人影も見えます。
窓の他に共通しているのはバラの花。
そして扉絵とモノクロ予告ではエドガーが懐中時計を手にしています。
バラはポーシリーズのイラストによく登場するので別として、窓と懐中時計がこの作品の隠れたモチーフなのかもしれません。
イギリスの探偵小説風の作品にぴったりな扉絵と予告カットです。

予告カット
別冊少女コミック増刊ちゃお』1975年8月号(8月15日号)

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作品の内容とは全く関係ないのですが、とても美しい絵です。
掲載されたのが増刊号で、しかもサイズが小さかったので、覚えている方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
私は当時見た記憶がありません。
まさに眠れるお宝カットですね。

 


「はるかな国の花や小鳥」

予告カット
『週刊少女コミック』1975年36号

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えっえっ? この予告にもびっくりですね。
予告用に描かれたものではなく、どこかから流用されたことは明らかですが、右のアランはまだわかるとしても左の女の子は一体誰?
もしかして2つの絵を合成しているのでしょうか。
文は次のとおりです。

「今なお、別れた恋人への愛に生きる彼女の前に現れたエドガー。ほほえみを浮かべたエドガーの瞳の中に、彼女が見たものは……!? おなじみ “ポーの一族” の番外編!!」

「番外編」とありますが、作品の内容からいうと番外編とは思えません。
ポーシリーズの他の作品が『別冊少女コミック』に掲載される中、本作だけが『週刊少女コミック』に掲載されたので番外編扱いされたのではないでしょうか。
これは掲載誌(37号)の前号(36号)ですが、実は前々号(35号)にも「はるかな国の花や小鳥」のモノクロ予告が載っていて、絵はこの女の子の顔の部分だけが使われています。文は、

「恋に破れた女の心をファンタスティックに表現する萩尾望都の世界」

「ポーシリーズ」とは一言も書かれていませんね。
この時にはまだ編集部に詳しい内容が伝わっていなかったのか、またはポーシリーズということを36号まで伏せておく方針だったのでしょうか。

ちなみにカラー予告は36号に載っていて、下の表紙カットの一部が使われています。

表紙カット
『週刊少女コミック』1975年37号(9月7日号)

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掲載号の表紙ですが、こちらには「番外編」とは書かれていません。
イラストは華麗かつ繊細で、エドガーもメリーベルもうっとりするほどですね。
特にエドガーはエルゼリへのほのかな思慕や哀切が入り混じったような表情が何とも言えません。
表紙なので背景がゴチャゴチャしていて絵の美しさを存分に味わえないのが残念。
ぜひ無地の背景で鑑賞したいものです。

表紙カット
『週刊少女コミック増刊フラワーデラックス』1976年8月刊(2018. 9. 18 追加)

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背景が無色の絵がありました!
どうぞ心ゆくまでご堪能ください ♪
こちらは増刊号の表紙の裏側に載っていたものです。
画像はトリミングしていますが、絵の上に落合恵子さんの「ポーの一族によせて」という詩が掲げられています。

 

~2018. 5. 19 追記 番外編について~マニアックです)

上で35号には「ポーシリーズ」の文字がなく、36号では「番外編」とされていることを書きましたが、もう少し詳しく調べてみました。

〈30号〉
読みきりシリーズの予告の1つとして、この作品も紹介されています。
作品のタイトルとカットはなく、萩尾先生の自画像です。

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「週刊の読者のみなさまに “ポーシリーズ” の続編をお贈りしようとはりきってます」
この時に「ポーシリーズの続編」とはっきり書かれていました。「番外編」ではありませんね。

〈35号〉
上でご紹介したように、女の子の顔の絵のモノクロ予告が載っています。
「ポーシリーズ」とは書かれていません。

〈36号〉
上のモノクロ画像です。
「おなじみ “ポーの一族” の番外編」と書かれています。

〈37号=作品掲載号〉
上のカラー画像が表紙カットです。「番外編」の文字はありません。
作品扉には「ポー・シリーズより」とあるだけで「番外編」とは書かれていません。
巻末目次

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絵は36号のモノクロ予告の一部です。
「華麗なるタッチで描く “ポーの一族” 番外編!!」
最後に再び「番外編」という言葉が出てきました。

〈まとめ〉
萩尾先生は「ポーシリーズの続編」と書かれていますし内容的にも番外編とは思えないのですが、編集部(の一部)では番外編という認識だったのかもしれません。
モノクロ予告の女の子が誰なのかはまだわからないのですが、もしわかりましたら、また追記します。

 


「ホームズの帽子」

予告カット
別冊少女コミック』1975年10月号

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作品中でオービンさんが身に着けていたホームズファッションのエドガーです。
赤いリボンがオシャレ。パイプも似合っていますね。
と言っても外見は14歳なんですけど…。
あ、でも「小鳥の巣」では慣れた手つきで煙草を吸ってましたっけ。
「ホームズの帽子」掲載号は「11人いる!」完結編が同時掲載というファンにとっては贅沢なものでした。
この予告も左に「SF超大作『11人いる!』の完結編ものります!」と書かれています。

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リーベルの霊を呼び出して消えたクレイバスとエドガー。
「怪奇と幻想」のムードたっぷりの予告カットです。

 

 

(33)「ポーの一族」イラスト集~予告・表紙・合同扉絵⑤

ポーの一族」旧作のイラスト集、予告・表紙・合同扉絵編の続きです。
⑤は「エヴァンズの遺書 前・後編」「ペニー・レイン」「リデル・森の中」のイラストです。


特に記載のない限り出版元は小学館です。
ほとんどが古い雑誌のコピーの画像ですのでコンディションが良くないものもあります。特にモノクロは不鮮明だったり裏写りしたりしています。また、絵の傾きを補正しきれていません。どうぞご了承ください。
このイラスト集は旧作のレアなイラストをご紹介してファンの方にポーの世界をより楽しんで頂きたいという思いで作りました。萩尾先生ならびに小学館様より削除のご要請がありました場合は速やかに削除いたします。

 


エヴァンズの遺書」前編

予告カット
別冊少女コミック』1974年12月号

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第2シリーズ第1作となる「エヴァンズの遺書」。
通常の予告とは別に丸々1ページを使って出された予告です。

「*おまたせしました! ポーの一族 続編ついに登場――

萩尾望都先生の一大ロマン
永遠の生命(いのち)を持ち 時の流れを越えて生きる
吸血鬼(バンパネラポーの一族の物語

別コミ新年特大号より 堂どう掲載!

新企画 ポー・シリーズ
エヴァンズの遺書」

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いつもとちょっと感じの違うキラキラお目々のエドガーです。
エヴァンズの「ズ」が「ス」になっていますが、この間違いは予告に限らず結構多いです。

「ついに登場!
熱狂的な話題をまいたポーの一族の物語
構想も新たに贈る萩尾先生の意欲作!」

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ヘンリー・エヴァンズと仮死状態から目覚めたエドガー。

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(2019. 9. 20 追加)
こちらは他の作家さんの作品内に挿入されていたため見落としていたのを発見しました。
これまで載せていた『週刊少女コミック増刊フラワーコミック』1974年冬の号の予告カットは、こちらの絵の一部ですので削除しました。
1冊の雑誌の中に全面広告を含む予告を4つも載せるとは、新シリーズに寄せる期待の大きさが窺えますね。

エドガーは…
アランは…
時の流れのままに
なにを見るのか……」

予告カット
『週刊少女コミック増刊フラワーデラックス』1976年8月刊(2018. 9. 18 追加)

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上の2つのモノクロ予告カットの完全版です。

表紙カット
別冊少女コミック』1975年1月号

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水の中で魔性に目覚めるエドガーをイメージさせるカットです。
お正月号の表紙ということで扇形にトリミングされています。

目次カット
別冊少女コミック』1975年1月号(2020. 6. 22 追加)

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雪の中のアーネストです。

目次カット
ポーの一族 プレミアムエディション 下巻』2019年刊(2020. 6. 22 追加)

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上の絵の完全版です。

 

エヴァンズの遺書」後編

予告カット
別冊少女コミック』1975年1月号

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樹の上で眠っているかのようなエドガー。
木洩れ日がセピアの世界を金色に染め、どこかノスタルジックな雰囲気で私の大好きなカットです。

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さびしげな表情のエドガー。
アオリは前編の予告と同じです。

予告カット
別冊少女コミック』1975年1月号 前編内

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エヴァンズの遺書《後編》
別冊少女コミック2月号

時がきた めざめ出ておいで
うずもれた追憶の中の金色のネコ
少女がおまえをさがしているよ」

この文章は多分萩尾先生が書かれたのだろうと思いますが、まるで上のカラー予告のエドガーに語りかけているようです。
黒猫を抱いたエドガーは新鮮な感じが。
そういえばポーシリーズには今まで馬以外の動物が出てきませんね。
あ、「春の夢」にカラスが出てきましたか。

本編内の予告はこれが最後になりました。

 


「ペニー・レイン」

予告カット
別冊少女コミック』1975年4月号

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(モノクロは『別コミ』の画像が暗いため、『週刊少女コミック』19号掲載の同じものを使用しています)
カラーはアランを抱きかかえるエドガー。
モノクロは上にエドガーが、下に眠るアランが横向きに描かれ、間に館があって雨が降っています。
どちらも物語が思い浮かぶ予告カットです。
リーベルと男爵夫妻を一度に失い、なかなかこないアランの目覚めを祈るような気持ちで待つエドガー。
山賊に銃を突きつけられても動じないのに、アランが外に出ていったことに気づいて取り乱すエドガー。
カラー予告からは「これから自分がアランを守っていかなければ」という決意のようなものまで伝わってくる気がします。
この絵は掲載誌の表紙にも載っていて当時とても印象に残りました。

 


「リデル・森の中」

予告カット
別冊少女コミック』1975年5月号

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これ、どちらも「リデル・森の中」の予告なんですよ。もうびっくりです!
カラーはタイトルが「一週間」で絵はアランのアップとエドガー。
どう見ても「一週間」の予告ですね(「一週間」はアランが留守番する話です)。
そしてモノクロはタイトルが「一週間(仮題)」で絵はリデル。
ただ、本編のリデルより少し大きい女の子という印象です。
これは一体どうしたことでしょうか?
カラー予告はモノクロ予告よりも入稿が早いと聞いています。
おそらくカラー予告が描かれた時点では「一週間」の話の予定だったのが、何かの事情で「リデル・森の中」の話に急遽変更になり、モノクロ予告の入稿時にはタイトルがまだ決まっていなかったのではないか――というのが私の想像です。

表紙カット
別冊少女コミック』1975年6月号

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はい、こちらは本編そのままのリデルです。

 

 

記事(21)に画像を追加しました

「(21)ヨハンナスピリッツのパイの謎」に「湖畔にて」「トリッポンのカエル」「トリッポンと王様」の画像を追加しました。

(21)ヨハンナスピリッツのパイの謎 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

記事(26)に画像を追加しました

「(26)『ポーの一族』イラスト集~綴じ込み付録③」の最後に画像を追加しました。
別冊少女コミック』1976年8月号に付いていたアイロンプリントです。

(26)「ポーの一族」イラスト集~綴じ込み付録③ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

(32)宝塚「ポーの一族」ライブビューイングを観てきました~原作ファンの初ライビュ

宝塚歌劇の「ポーの一族」東京公演観劇から3週間。
3月25日(日)、楽しみにしていた映画館での千秋楽ライブビューイングに行ってきました。
前日にブルーレイを鑑賞して感動も新たになったところで、いざ!


私はライビュ自体が初体験で、ライビュとはどんな感じなんだろうと思っていました。
お客さんは観ながらどう反応するのだろうか?
考えられるパターンは


①映画のように静かに鑑賞する
②宝塚の舞台のように拍手だけする
③コンサートのように一緒に歌う、またはセリフを言う


結果、会場によっても違ったかもしれませんが、私が行ったところは①でした。
皆さん、しーんと静まり返って食い入るようにスクリーンを見つめている。
そこで私も拍手したくなる気持ちを抑えてスクリーンに集中しました。

 

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館内壁面のチラシ

 

ライビュの映像って、とてもいいですね。
私は劇場では1階の後ろから2列目の席だったので、全体は見渡せるけれど表情を見るにはオペラグラスが必要でした。
でもライビュでは全体とアップの映像をうまい具合に切り替えてくれて、アップはオペラグラスを使うよりずっと大きく見えるんですから。


その点はDVDやブルーレイも同じですが、こちらは1月19日の宝塚大劇場公演を収録したもの。
初日から3週間もたっていない頃の映像です。
それに比べると東京の千秋楽は3か月間公演を積み重ねてきた集大成と言えるわけで、演出も変わっているし、出演者の方々の演技もぐっと深化していると感じました。

 

明日海りおさんは完璧なエドガーで、フィナーレの最後に大階段を降りてきた時は達成感・充実感にあふれた最高の笑顔でした。
アラン役の柚香光さんは特に深化が感じられ、原作のアランと重なって見える瞬間が何度かありました。
他の皆さんもそれぞれ良かったですし、作品の完成度が一段と高まったように感じました。

 

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ブルーレイに付いていたブックレットの表紙

 

以下は極めてマニアックな気づき2題です。


1
前の記事にも書いた、エドガーがアランを迎えに行くことを決意した時に見せるバンパネラの小さな笑み。
これがブルーレイの映像にはなかったので、「あれ、自分の見間違いだったのかな?」と思ったのですが、ライビュでも一瞬笑みを浮かべていました。
いつからか解釈が変わったのでしょうね。


2

ラストのギムナジウムの場面。
ブルーレイを観ていたら最後の最後にエドガーとアランにスポットが当たって、


エドガー、客席から見て左方向に顔を向ける
 ↓
アラン、右やや後方からエドガーの肩に手を置く
 ↓
エドガー、振り向く
 ↓
2人、微笑みあう

 

きゃあ~~~!
これってまさしく「小鳥の巣」の最終ページじゃないですか!
しかも私の大大大好きなコマですよ!!
でもこれ、観劇した時にはなかった気がする…。
そこでライビュで気をつけて観ていましたが、やはりありませんでした。
うう、残念です。どうしてやめちゃったんでしょうか?
やってほしかったのになあ。まあ、ブルーレイを観ればいいという話ではありますが。

 

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ここの2人が大好きなんです
しかも、この後のコマがとても良いのですよね
ご存じない方は、ぜひ原作をご覧ください
(『萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』「小鳥の巣」2007年 小学館より)


ついでと言っては何ですが、前の記事に書いていなかったことも。
この場面の柚香アランは人間時代と明らかに違う完全なバンパネラに変化していました。
2人が寄り添って立っている姿は「小鳥の巣」そのものでゾクゾクするほど嬉しかったです。


おまけ
友人が「婚約式の場面にクロエはいないか」と言っていたので探してみましたが、式には欠席だったようです。
その頃のクロエが別人のように若く美しくなっていたなら、わかりませんが。


さて、劇場・ブルーレイ・ライビュと3回観た今、楽曲の良さがとても印象に残っています。
特にプロローグと1幕ラストの総出演でのコーラスが圧巻でした。
そして驚いたことに、頻出する「愛」と「絆」に対する最初の頃の強い違和感がだんだん薄らいできて、すでに「まあいいか」という心境になりつつあります。
これぞ宝塚の魔法でしょうか。

 

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ブックレットの裏表紙

 

ライビュは楽日の夜の部だったので終演後に退団する方々のセレモニーがあり、そこまで中継を観ることができました。
全員による「TAKARAZUKA  FOREVER」の合唱を聴いて、私も一気にヅカファン時代にタイムスリップ。


当時はカーテンコールの習慣がありませんでしたが、今は楽日に必ず行われているんですね。
それを観られたのも嬉しかったです。
この日、カーテンコールは3回も。
1回目は全員で
2回目は明日海さんと退団する方々(最後は全員)
3回目は明日海さんだけ(最後は全員)
しかも3回目の緞帳が降りてからも拍手が鳴りやまず、ついに緞帳の前に明日海さんがカニさん歩きで登場して(大きな羽根を背負っていて普通に歩いては通れないので。その姿がとても可愛い)、「この場に出るのは組替えの挨拶の時以来です」と。
劇場にいらしたお客様、ライビュ会場の私達の分まで拍手してくださってありがとうという気持ちでしたね。


明日海さんはご挨拶の中で「ポーの一族」についてもお話しされていました。
例によって正確な言葉ではありませんが覚えている範囲で。


「永遠の時を生きるバンパネラにとっては瞬きしたかしないか位の時間ですが、期間が通常より長めの公演を無事に終えられて感無量です」

 

「生きていれば皆さんもいつかエドガーに会えるかもしれません。その時は……よろしくお伝えください(場内爆笑)」
(その後に「『覚えているよ』くらいは言ってくれるかもしれません」と続けられていました。あのセリフを! なのに私ときたら何をボーッとしていたのかすっかり忘れていて、ネットで話題になっているのを見て思い出しました。面目ない。)

 

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原作ファンの間で有名な場面です
老人は長年エドガーを追っているジョン・オービンです。宝塚版には登場しません
(『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』「エディス」2007年 小学館より)


「明日から公演はありませんが……後は皆さんの心の中でどうにかしてください(場内爆笑)。DVDもありますし、萩尾望都先生の原作もありますし」


ええっ!?
でも確かに生徒さん達はすぐに気持ちを切り替えて次の公演の稽古に入るけれど、まだポーの世界に浸っていたいファンは置いてきぼり状態なんですよね。
残された映像や原作でどうにかするしかない。私は5月末から始まる新連載を楽しみに待ちます ♪


ライビュの後、一緒に行った妹と「いい舞台だったねえ。観られて幸せだったねえ」としみじみ話しました。
明日海さんの在団中に再演しない限り、もうこのキャスティングでは上演されないのですよね。
これほどクオリティの高い舞台を実現させた以上、ハードルを下げて再演というのはしてほしくない。
となると、これはきっと伝説の舞台になるのでしょう。
それを観ることができて本当に幸せだったなあと思います。


★★★★★★★★★


記事はここで終わるつもりでしたが、ふと立ち寄った書店で現在発売中の『宝塚GRAPH』2018年4月号に明日海さんと柚香さんのトークが載っているのを発見!
大劇場の初日から3週間たった頃(DVD・ブルーレイ収録の直後頃)のトークだそうで、公演について3ページに渡って語り合っておられます。
お2人が原作を読み込んだ上で小池修一郎さんの創る世界で役を深く掘り下げ、日々変わる感情を大切にしながら演じていることがわかり、原作ファンとしてとても嬉しいです。
お2人だけでなく出演者の方々は皆さんそうなのでしょうね。


トークでは原作にふれている部分もありましたので少しだけご紹介を。
「小鳥の巣」でアランに「たかだか百年がた よけいに生きてるからって いばるな…!」と言われたエドガーが、アランの頬をピシャリとやって「だれにものを言ってるんだ え?」と言う場面がありますが、明日海さんはそのセリフを「言いたかったあ~!」とのこと。
柚香さんは「絶対超怖いですよ(笑)」と応じていらっしゃいます。
明日海エドガーと柚香アランのその場面、私も観たかったあ~!

 

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 この場面、観たかったですね
(『萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』「小鳥の巣」2007年 小学館より)

 

★★★★★★★★★


2019. 1. 29 追記


今月、このライビュ時の舞台がスカイ・ステージ(宝塚歌劇専門チャンネル)で放映されたので視聴しました。

 

ブルーレイを何度も観ているので芝居の面で気づいた変化が色々あり、深化を感じました。
完成度が高く、キャストも理想的で素晴らしい!
シーラ役を演じられた仙名彩世さんは今春ご卒業されますし、他にも卒業や組替えが決まっている方々がいらして、タイミング的にも奇跡の舞台だったのだなあと改めて思いました。


上に明日海さんのご挨拶をうろ覚えで書いたのですが、その部分を確認できましたので書き出してみます。


「皆様、本日は千秋楽の舞台をご覧頂きまして誠にありがとうございました。
今回は専科より一樹千尋さん、そして飛鳥裕さんにご出演頂き、宝塚大劇場ではお正月に初日を迎えました。
それから約3か月半以上たちました(実際は3か月弱ですが、明日海さんの感覚としてこれくらい長かったのでしょう)。
永遠の時を生きるポーの一族バンパネラからしたら本当に瞬きをしたかしないかぐらいの一瞬の出来事だったかもしれませんが、やはりわたくし、しょせん人間ですので、通常よりも少し長目のこの上演スケジュールを無事全公演終えることができまして…感無量です。


本当に、連日劇場に足をお運びくださいました沢山のお客様、そして熱い想いを寄せてくださいましたファンの皆様のお蔭と思っております。本当にありがとうございました。


明日からもうエドガーを演じないのかと思いますと、もうずっと一緒にいたエドガーをまた再び永遠の終わりのない旅に独りぼっちに置き去りにしてしまうような気がして、あの、申し訳ないというか、とても寂しいような気持ちになるのですが、わたくしも含めて皆様もいつか、生きていたらどこかでエドガーに本当に会うかもしれない。


もしその時は――(拍手)はい、ありがとうございます――もしその時は…よろしくお伝えください(場内爆笑)。
もし声をかけたら『覚えているよ』って言ってくれるかもしれません」


「皆様の拍手がとても温かくて、この公演をさせて頂いて本当に、めぐり逢えて本当によかったです。
明日からね…もう明日はないので本当に寂しいのですが、皆様の心の中で、はい、あの、どうにかしてください(場内爆笑)。
DVDもございますし、萩尾先生のお描きになった素敵な漫画もございますし、『ポーの一族』は永遠だなと思います」


文字だけでは伝わりにくいのですが、役を離れた明日海さんは独特のほんわかした雰囲気をおもちの方なので、ご挨拶もほんわかした空気に包まれていました。

 

ちなみに、この公演で久々に宝塚を観た私、今やすっかりヅカファンにカムバックしております。ほほほ。

 

★★★★★★★★★


2019. 5. 16 追記


このブログは萩尾漫画の感想ブログなのでジェンヌさんの演技への言及はなるべく控えていたのですが、この記事を読んでくださる方も多いので、ブルーレイ収録時とライビュ時の演技の違いを気づいた範囲で書いてみます。


BD=2018年1月19日の宝塚大劇場公演。DVDも同じです
ライビュ=2018年3月25日の東京宝塚劇場公演千秋楽


エドガー(明日海りおさん)

アランを迎えに来た時のセリフ
 「ぼくも知らない だからメリーベルがどこへ行ったかわからない」
  BD 哀しそうに言う→ ライビュ 泣きそうな表情で言う
 「きみもおいでよ ひとりではさみしすぎる」
  BD 普通に言う→ ライビュ 少し哀しそうに言う

 以下は上に書いたことの重複になりますが

アランを迎えに行くと決意して
 ライビュ 一瞬の冷たい微笑が加わった

ラストシーン
 BD 「小鳥の巣」最終ページのアランとの絡み→ ライビュ なくなった


シーラ(仙名彩世さん)

クリフォードに重傷を負わされてからのセリフ
 BD 「大丈夫よ。ほんの少しエナジーがあれば…」→ ライビュ 「大丈夫よ」がなくなった


男爵(瀬戸かずやさん)

エドガーに「この愚か者!」と手を振り上げ、下ろす時
 BD 普通に手を下ろす→ ライビュ 手がわなわなと震えている


アランの伯父ハロルド(天真みちるさん)

クリフォードを見送ろうとするアランを止める時
 ライビュ 手で制する動きが加わった

階段落ち
 BD 階段の途中まで→ ライビュ 下まで落ちる。千秋楽なので思い切ってやってくださったのでしょうか


マーゴット(城妃美伶さん)

アランに「クリフォード先生が好きなんだろ」と言われて「キャーハハ」と笑う時
 BD 原作と同じポーズ(髪に触れるように両肘を曲げる)→ ライビュ 原作とは違う自然な動き


アラン(柚香光さん)

あえて最後にしましたが柚香さんの役の深め方は素晴らしかったです。
ブルーレイ収録時の演技も十分魅力的でしたが、アランファンとして個人的に「ここはちょっとアランっぽくないかも?」と感じたところがすべて、私がイメージする方向に変わっていました。

ホテルでの登場シーン
 ライビュ シニカルな微笑が加わった

ロゼッティの焼き絵のペンダントを見つめる時
 BD 歯を見せる笑顔→ ライビュ 控えめな笑顔

「(ロゼッティより)もっといい子がいたんだ」などのセリフ
 BD やや叫ぶように言う→ ライビュ 抑えた言い方になった

エドガーに最初に仲間に誘われる時のダンスの最後
 BD 右手が高く上がっている→ ライビュ 下がっている。振りの変更でしょうか

母と伯父の関係を知って
 BD 持っていた本を床に叩きつける→ ライビュ 本を取り落とす

自分がアランが好きなので他の方より目につきやすかったというのもあるでしょうが、ライビュ時の柚香さんは本当にアランだと思えました。
柚香さん、ありがとうございました!
他の皆様もありがとうございました!


さて、明日海さんがこの秋にご卒業と発表されて、宝塚で明日海エドガーによる「ポーの一族」の再演はなくなりました。
奇跡の舞台を観られたことを大切な思い出にしたいと思います。

 

★★★★★★★★★


宝塚の関連記事です。よろしければどうぞ。

 

(31)宝塚「ポーの一族」東京公演を観てきました~原作ファンの愛のツッコミ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

原作ファンの視点からの観劇の感想です。

 

(56)「ポーの一族展」の「宝塚歌劇の世界」ゾーン - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」の「宝塚歌劇の世界」ゾーンのレポートです。

 

 

(31)宝塚「ポーの一族」東京公演を観てきました~原作ファンの愛のツッコミ

イラスト集の途中ではありますが、「ポーの一族」の宝塚歌劇東京公演を観てきましたので今回はそのお話を。


何を隠そうこの私、遠い昔にヅカファンでした。1970年代のベルばらブームの時に地方公演(今で言う全国ツアー)を観たのが始まりで、その後関東に引っ越してきてから東京宝塚劇場に暫く通っておりました。
ならば「ポーの一族」を宝塚で上演と聞いてさぞ喜んだろうとお思いになるでしょう。
ところが最初は全く反対で、喜ぶどころかズドーンと暗くなりました。
宝塚はもうとっくに卒業した気でいましたし、何よりも、特別な作品だけに舞台化も映像化もしてほしくなかったからです。


それでも、あの作品をどんな構成でどんな脚本で、どう演出するかということにはとても興味があったので、観劇された方の感想やメディアの高評価の記事を読んだり動画を見たりしているうちに、だんだんと「観たいかも…」という気持ちが芽生えてきたのですね。
そうなると話が早い。
私と同じ萩尾ファンの妹が、頑張って見事2人分のチケットをゲットしてくれたのでありました。妹よ、ありがとう。


すっかり前置きが長くなってしまいましたが、そんな訳で3月3日土曜日、桃の節句の午後の部を観劇に出かけました。
改変もあるし原作にないキャラクターも出るというので事前にプログラムと『ル・サンク』を購入し、シナリオを読んで予習済み。オペラグラスもしっかり借りて準備万端です。

 

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劇場内壁面のポスター

 

いよいよ幕が上がり目の前に繰り広げられた世界は、とにかく美しくて面白い!
エドガーもアランもイメージ通り。
原作の複雑な時系列はわかりやすく整理され、場面転換もスピーディーで極上のエンターテインメントに仕上がっていました。
衣装も見るからに上質なうえ、原作のイメージを大切にしていることがよくわかります。
私が特に感激したのは、プログラムにも載っている「エヴァンズの遺書」扉絵のエドガーの服。

 

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(画像はセイカ永遠の少女マンガぬりえ5 ポーの一族」より)

 

この服が色までそのまんま再現されている!
他にも同じくプログラムに載っている「ペニー・レイン」扉絵や、一家がホテルに現れる場面のエドガーの服も、襟や袖口などの細部以外は同じ。
更にシーラがエドガーと初めて会った時のドレスやセント・ウィンザーの制服もデザインそのまんまといった具合で、原作ファンには嬉しい限りです。


さて、物語は「メリーベルと銀のばら」と「ポーの一族」をメインに「ポーの村」「グレンスミスの日記」「ランプトンは語る」を織り交ぜ、「ホームズの帽子」のエッセンスを加えて構成されていました。
2時間半にまとめるのですから当然必要な部分だけを抜粋するわけで、整合性を取り、流れを良くするための改変もまた必要になります。
大切なのは原作の世界観を壊さずに舞台作品としての完成度を高めることで、その点でとても成功していると思いました。

 

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東京公演プログラム表紙。上の扉絵を再現した衣装です

 

とはいえ、いくら美しくても面白くても、ついつい細かいことに突っ込みたくなるのが原作ファンというもの。
ここからはそんなツッコミを交えつつ感想を書いていきたいと思います。
ツッコミと言っても決して難癖を付けようというのではありませんから、独り言だと思ってお読みくださいね。
セリフ等は『ル・サンク』所収のシナリオを基にしています。


プロローグはバンパネラ研究家達の会話から一族の登場へ。
ポーの村に迷い込んだグレンスミスや、男爵一家をバンパネラと見破ったクリフォードのエピソードを盛り込み、原作を知らなくても一族が不老不死の吸血鬼だとわかるようになっています。
歌と芝居で観客を作品世界に一気に引き込み、おおお~♪という感じでした。


そこから「メリーベルと銀のばら」のストーリーが怒涛のように展開します。
気になったのはビルおやじの「崖の上の館のポーツネルの一族」というセリフ、というか歌。
ポーツネルは男爵の名前で、男爵は館に住んでいるわけではないので変ですね。
老ハンナは自ら「老ハンナ・ポー」と名乗っているのだから、ここはやっぱり「ポーの一族」じゃないと。


老ハンナが消滅し、「ハンナが選びし後継者に!」とエドガーにエナジイを授ける大老ポー。
えー? 後継者なんて聞いてないけど…まあいいか。
それよりも大老ポー様まで村人達に消されてしまったではないですか!
ちょっと~ 大老ポー様消しちゃいかんでしょ~! 後々マズくない!?
まあ大老様は特別な力をお持ちなので、後から「実は生きてました」ってことにするのも十分可能ではありますが…。それに舞台に続編はないと思うから、これもいいか。


しかし問題はメリーベルですよ。原作ではアート家の養女になってから色々あるのですが、時間の制約でそのあたりがアバウトな説明だけで終わっている。
それはそれでいいのですが、原作ではエドガーが現れる前にバンパネラだと知っているのに、そこがカットされている。
つまりエドガーが来た時点では兄の身に起こったことを知らず、ただ館の火事で行方知れずとしか思っていないわけです。
で、エドガーが「僕たちの旅は永遠に続くんだ。幸せにはなれない」と言い、メリーベルは「一緒にいることが、幸せなの」「どこまでも付いていくわ。お兄様に」と言って仲間に加わるのですが…
エドガー! あなた一番肝心な「人間でなくなる」ってこと言ってないよ!
それを知らないと「旅は永遠に続く」と言われても具体的にどういうことかわからないし、何かの比喩だと思ったかも。
エドガーだって舞台ではシーラに「ポーの一族に加われたなら2人は永久(とこしえ)に生きてゆく ♪」と聞かされた時、よくわかっていなかったじゃないですか。
リーベル、目覚めて後悔したんじゃないかと本気で心配しましたよ。


ここから時代は1879年に飛び「ポーの一族」の物語に入ります。
原作の冒頭でポーツネル一家が登場したホテルが主な舞台の1つとなり、エドガーとアランはそこで出会います。原作では馬場ですが、さすがに馬は出せませんものね。
でも私、この出会いの場面がとても好きです!
エドガーとぶつかりそうになって「どこ見て歩いてんだよ!」と怒鳴るアラン。その拍子にワゴンにぶつかって転ぶ。
ゆっくり歩み寄り「どこ見て歩いてんだよ?」とオウム返しに言うエドガー。
小池修一郎さんのオリジナルですが、いかにも2人とも言いそうなセリフ!
しかも2人の声と言い方がそれぞれの人物像をよく表していて、エドガーからはバンパネラになって125年生きてきた深みが、アランからは金持ちの跡取り息子らしい尊大さに加えて鬱屈した内面が、はっきり伝わってきました。


セント・ウィンザーでの2度めの対面。
ここは出会いの場面とは反対に原作をかなり忠実に再現してくれていて、とても嬉しかったです。
「アラン・トワイライトの規律」も「どの足だ?」「この足だよ!」も。
制服も同じだし生徒達もイメージ通りで、「わっ、原作がそのまま動いてる~!」と感動でした。

 

エドガーがガラスで怪我をして男爵と言い合いに。
反発するエドガーのセリフ(後半は歌)
「分かってるよ! 僕たちがいるから2年と同じ土地にいられない」
「変ね あの兄妹は少しも成長しない」
このあたりも原作に基づいていて嬉しいな~と喜んでいたら、次の
「でも僕がどんなに孤独か あなた方にはわかるまい」
このセリフ、原作ではモノローグなんですよね。それを口に出して言って(歌って)いる。
うーん、何というか私は、この言葉を心の中だけで言うところこそがエドガーという気がするんですよ。
相手に聞こえるように言ってしまうと、もうエドガーじゃない感じ。それって私だけ?


クリフォードに往診してもらうアランの母。そこへアランが来る。
原作ではエドガーの怪我の話からアランに向かって「お友だちのケガ? おまえは大丈夫なんだろうね」
アラン「ぼくはそんな乱暴なこと やらない」
母「信用しないよ 男の子の言うことだもの」
この最後の母のセリフ、読むと愛情から出ていることがよくわかります。そして「お父さん そっくりになって…」と愛おしそうに息子の頬に手を当てる。
ここが舞台では「父親に似てきた 信用出来ない」
うっ 冷たい…字ヅラだけじゃなく言い方(歌ですが)も冷たい…。
なんで? 妙に悲しいんですけど。

 

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シナリオが載っている『ル・サンク』vol. 189表紙。エドガーがアランを連れて行く場面

 

続いてアランに嫌味を言うマーゴット。宝塚版マーゴットは意外とチャーミング。
原作では登場場面が少ないせいか「性格の悪い従妹」というイメージしかないのですが、両親に「お金のために絶対アランと結婚しろ」と迫られたり妹弟(原作にはいません)に笑われたりして、彼女なりに辛いところもあるんですねえ。ちょっと同情してしまう。


エドガーがアランを襲う場面も良かったです。
場所が海辺の砦跡から学校の塔に変更されていましたが、「あのバルコニーから海の向こうにアイルランドが見える」「海を渡る冷たい風が吹き寄せる。嫌なことも全て吹き飛ばしてくれるんだ」というセリフが海辺の断崖を連想させてくれました。
アランの唱える聖書の言葉が歌になっていたのは驚き!
最後の「願わくは 我を隠れたるとがより解き放ち給え」をそのままアラン自身のテーマに持ってきて、後の歌に繋げたのは、さすがですね。


リーベルが消え、男爵夫妻も消えたところに駆けつけたエドガー。
原作の「幕だ すべてはおわった!」から「生きる必要もない…」までの絞り出すようなモノローグ、ほぼ同じ内容だったのですが、舞台では歌なんですよね。それも歌い上げるような。
ん~、セリフが歌になるのはいいけれど、ここだけはセリフの方が良かったなあ。
その方がエドガーの哀しみがより強く伝わった気がするんですが…。
でもその後に「僕に残されたもの それは…」という言葉が加えられていて、エドガーがふっと小さくバンパネラ的な笑みを浮かべる。
アランを仲間に加えることを決意した笑みなんですよね。これは新鮮でした!
考えてみたら原作には「生きる必要もない…」の後、アランの家の窓辺に現れるまでのエドガーは描かれていないわけで。
で、アランを迎えに行く時のエドガーの様子を改めて想像してみると、私の中では「笑み」は浮かんでこなかったけれど、そういう解釈もアリなのかなと思いました。


一方、アランの家では伯父が階段から落ちてマーゴットがアランに向かって「人殺し!」と叫ぶ。ここまでは原作通り。
これに更に追い打ちをかけるのがアランの母。「アラン…取り返しのつかない事を…」
あああっ やっぱり冷たい…!
そりゃこのセリフ、色々な意味に取れるけど、印象としては冷たい。
原作ではいつも優しくて愛情深い母に最後に裏切られるからこそショックが大きいのだと思うのですが、それだけではアランが絶望する動機として弱いんでしょうかね? うう…。


この後、エドガーが窓から現れてアランを連れて行きます。
そしてラストシーンは「ポーの一族」のラストに「グレンスミスの日記」をかぶせて、1959年のドイツ、ガブリエル・スイス・ギムナジウムに現れるエドガーとアラン。プログラムの役名を見ると、ちゃんとキリアンとテオもいました。
このラストシーン、とても良かったです!
劇中歌の「哀しみのバンパネラ」(ヒットチャート初登場1位という設定。エドガー、歌手デビューしたのか?)を歌って騒ぐ生徒達の姿を、少し離れたところから寄り添って見つめる魔性の2人。
これから何かが起きる、彼らは今もどこかにいると思わせる幕切れで、私はそのまま「エディス」のラストさえ忘れてしまえそうでした。(←これ、最高の褒め言葉のつもりです!)

 

フィナーレの最後は私にとって久々に観る大階段のパレード。
昔と変わらずゴージャスで心が躍ります。
でもね、できればエドガー、アラン、シーラも他の登場人物のように役のコスチュームで降りてきてほしかったなあ。
そうすれば観客は最後までポーの世界に浸れたと思うんですが…。
シーラはともかくエドガーとアランは役の衣装だと地味だからですかね?
でもやっぱり1本物の芝居は最後までその役でいてほしい。
生徒役の方の制服がギムナジウムのものだったのは、着替える時間が早くすむから?
セント・ウィンザーの方が作品中に何度も出てくるし好きだったんですけど…。
ああでも、役の衣装でなくてよかったという方や、ギムナジウムの制服の方が好きという方もいらっしゃるんでしょうね。すみません、わがままで。


個人的に残念だったのが、私の大好きなエドガーとシーラの会話がなかったこと。
エドガーがバンパネラに変化した直後の会話「あなたは自分を呪わないの シーラ」「なぜ?」「…なぜ?」「なぜ?」です。
絵にモノクロが効果的に使われていることもあって空気までが感じられ、私は読むたびに映像に脳内変換されるので、舞台では当然この場面があると思って楽しみにしていたのですが…。
まあ、好きなセリフは自分の心の中に響く声が一番だと思いましょう。


最後に1つだけ、どうしても違和感を拭いきれなかったことを。
それはセリフや歌に「愛」「絆」という言葉が何度も出てきたことでした。
宝塚だからどうしてもそうなることは元ヅカファンとしてよくわかるし、お客様が求めていることでもあるので、それを言っちゃおしまいだとは思うのですが、どうも私の中の「ポーの一族」のイメージと違うのですよね。
原作も愛や絆が底に流れているかもしれないけれど、それは読者がそれぞれに感じ取るもので表立って言う言葉ではない、というのが私のイメージなのです。
特に歌の中の「人は愛が無くては生きてはいけない」というフレーズは「ポーの一族」よりもむしろ「トーマの心臓」の世界ではないかと。
でもこれが宝塚流エンターテインメントなのですね。

 

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ロビーに置かれていたピアノ

 

いろいろ好き放題に書いてしまいまして、どうもすみません。
誤解のないよう申し上げますが、私はこの舞台が本当に面白かったのですよ ♪
いまだにプログラムや『ル・サンク』を見て楽しんでいるし、千秋楽のライブビューイングにも行くし、奮発してブルーレイまで買ってしまったくらいです。


原作ファンなので原作中心の感想になりましたがジェンヌさんの話もすると、エドガー役の明日海りおさんはひたすら美しく、エドガーそのものに見えました。ビジュアルだけでなく声も佇まいもすべてにおいて。緻密に計算して演技されているんだなと思いました。
そしてアラン役の柚香光さん。アラン大好きな私にとってアラン役はとても重要で、たとえエドガーが完璧だったとしてもアランのイメージが損なわれる恐れがあれば観劇することはありませんでした。でも柚香さんは、もしアランが実際にいたらこんな少年だったかもしれないと思わせてくれました。柚香さんにありがとうございますと言いたいです。

 

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桃の節句なのでロビーには立派な雛人形

 

この日はもう1つお楽しみがありました。
チケットがたまたまサンケイリビングの貸切公演で、終演後に明日海さんへのミニインタビューがあったのです。
一度降りた幕が再び上がると明日海さんがお1人で残っていらして、司会者の質問に答えてくださいました。うろ覚えで明日海さんの言葉通りではないのですが、大体こんな内容でした。


Q:カラーコンタクトを早く外したいのではありませんか?
A:いいえ、できればずっと着けていたいくらいです。コンタクトは濃い青、薄い青と数種類あって気分によって使い分けています。


Q:ゴンドラは揺れていますが乗っていていかがですか。
A:初めは怖かったですが慣れました。客席に飛び込むような感覚です。


Q:エドガー役の演技について
A:バンパネラになる前は溌剌と。バンパネラになってからは永い時を生きている感じが出るように。(変化した直後の演技についてもおっしゃっていたのですが忘れました。すみません)


Q:子ども時代のエドガーが可愛いですが子どもを演じるコツは。
A:あまり子どもだと意識しない方が上手くいきます。声は自然と他の人より高くなります。


Q:人でないものを演じるコツは。
A:なるべく気配を消すことです。(他にもおっしゃっていましたが忘れました。すみません)


2回公演の終演直後でかなりお疲れだったはずですが、明日海さんは終始笑顔で、そして凛々しく答えてくださってとても素敵でした。
インタビューの幕が上がる前に拍手が鳴りやまず、自称ヅカ担当の司会者さんが「普段のサンケイリビングの貸切公演では自分が出るまで拍手が続いていることはないんですよ。名作なんですね~」とおっしゃっていたのも印象的でした。


さてさて、とんでもなく長くなってしまったのでライブビューイングの感想は次の記事で。
ここまでお読み頂きありがとうございました!

 

★★★★★★★★★

 

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