亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

*ポー復活で舞い戻ってきたファンがゆっくり綴ります。ネタバレご了承ください

(13)この作品は、いつ頃のお話?~③「はるかな国の花や小鳥」

「はるかな国の花や小鳥」はどこか牧歌的な雰囲気が漂う作品で、舞台はロンドンから離れた地方のようです。
ホービス市に自転車で日帰りできる距離であることは確かなのですが、ホービス市がどこにあるかというところまでは調べられませんでした。
ご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示頂けると嬉しいです。


ロンドンと地方では少し違うところもあるかもしれませんが、1つずつ見ていきましょう。


①アランの髪
「はるかな国の花や小鳥」のアランの髪は「ピカデリー7時」と同じセンター分けですがウェーブが弱くなっていて、前期のスタイルから後期のスタイルへ移行する途中のように見えます。
「ピカデリー7時」と「ホームズの帽子」の間、つまり1900年代から1934年までの間ということです。


②室内の照明
この作品でも家の中で電気を使う描写は見られません。
照明器具としては、ドアが開く音にアランが振り向くコマの背景にランプが描かれています。
そして最終ページのエルゼリの家にもランプのアップのコマがあります。
まだ電気は引かれていないようなので1930年代より前ではないでしょうか。


③女性のファッション
「ピカデリー7時」と同様に、エルゼリもばあやさんも足首まで隠れるロングスカート姿ですから、第1次世界大戦(1914~18)の前なのでしょう。
ただ、エルゼリの服はリリアの服と少し違っています。
レースやフリルも施されていますが、1900年代よりは控えめ。
そしてネックラインが詰まっていなくて、ゆったりしています。
これは1910年代の戦争前の傾向と一致するようです。


1910年代の戦争前と考えれば①②とも合います。
イギリスがドイツに宣戦布告したのが1914年8月ですから、大体1910~13年頃でしょうか。
他の面からも考えてみましょう。


④馬車
「(12)ピカデリー7時」で「現代のマイカーや都市バスの代わりとして馬車が活躍したのは20世紀初頭まで」と書きました。
この作品ではハロルド・リーが馬車の下敷きになって亡くなりますが、絵から馬車の種類はわかりません。
荷馬車かもしれませんし、もしマイカーやバス代わりの馬車だとしても1910~13年頃の地方の話ならば、おかしくはないでしょう。


⑤郵便局
エドガーはホービス市の郵便局でハロルド・リーの居所を尋ねています。
イギリスでは19世紀にすでに近代的な郵便制度が整っていたそうです。
ですから、20世紀の話なら何も問題はありません。


というわけで他に手がかりになりそうなものが見当たりませんので、1910~13年頃としたいと思います。


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仮説
「はるかな国の花や小鳥」=1910~13年頃

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もし「ピカデリー7時」を1900年代後半とすると、この作品のわずか数年前ということになります。アランの髪の違いを考えて少し間をあけるために、そちらを1900年代前半としました。


(初投稿日:2017. 4. 4)


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2017. 4. 22追記


ホービス市について、「Hovis Limitedから名前を取った架空の市」ではないかというコメントを頂きました。どうもありがとうございました!
念のため図書館に行ってイングランドの大きな地図を目を皿のようにして見てきましたが、ホービスという地名は見つかりませんでした。
その地図は1992年版だったので、もしかするともっと前には存在したのかもしれません。
けれど「はるかな国の花や小鳥」はメルヘン的な作品なので、私も何となく架空の地名のような気がしています。


Hovis Limitedはイギリスの大手製パン・製粉会社です。
1886年の創業から数回の社名変更や吸収合併を経て現在に至っています。
スーパーにはHovisのパンや小麦粉が何種類も売られていて、イギリス人にはとてもポピュラーなブランドだそうです。
萩尾先生は「はるかな国の花や小鳥」の執筆前にイギリスにホームステイされていたことがありますから、Hovisのパンや小麦粉をご存じだったことでしょう。
そこから名前を使われたのかもしれないですね。