★思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになった後で、ぜひまたいらしてくださいね ♪
8か月ぶりに連載が再開された「ポーの一族 ユニコーン」、皆様もう読まれましたでしょうか。
私、いつも以上に興奮してしまいましたよ。
だって、あの「エディス」が再現されている!
ポーの歴史も語られている!
これがこうで、あれがああで、実はそうだったのか!
その上、新たな謎も次々に。
今回も長い感想になってしまいますが、その前に表紙&扉絵を。
(小学館『flowers』2019年5月号より)
なんて美しいんでしょうか。
特に扉の一面のバラ!
2人の服がオシャレというか大胆。
今回初めて表紙と扉で同じ服、しかも本編も同じスタイルです。
エドガーのポーズ、特に手のあたりが、どちらも宝塚っぽいなあと思うんですが…
このままカンカン帽を持って踊り出しそう。
ディズニーの「メリー・ポピンズ」という声もあったりして…どうもすみません。
この2人の絵は次号のカラー予告まで続いています。
画像が粗かったら申し訳ありません。
ポップで可愛いですねえ!
ポーでこういう感じの絵は初めて。
足元が文字で半分隠れていますが、よく見るとスニーカーなんですよね。
本編では革靴なんですけど、これも可愛い。
夏の「ポーの一族展」でこの絵のグッズがあったら思わず買ってしまうかも ♪
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
絵の話だけで長くなってしまいました。
そろそろ本題に入らなくては。
今回は全体をざっくり3つに分けてみました。
◆ 1 1975年のエドガーとクロエの話
◆ 2 1975年のアランとバリー=ダイモンの話
◆ 3 1976年の話
バリーにはいくつもの名前がありVol. 2 ではダイモンと呼ばれていましたが、このVol. 3 ではポーからバリーと呼ばれています。
感想の中で呼び名をコロコロ変えるのもいかがなものかと思うので、当面はバリー=ダイモンでいきたいと思います。
では3つの話を順番に。
◆◆・* 1 1975年のエドガーとクロエの話 *・◆◆
1975年6月、つまり「エディス」のちょうど1年前のロンドン。
エドガーがシスターの格好をしたクロエを偶然見かけて後をつけると、クロエは病院で老衰患者からエナジーを頂こうとしているところ。
Vol. 2 でブランカも「老人のいる病院に行ってみて……でも できなくて…!」と言っていましたが、現代のヴァンピールにとっては病院がメインの狩り場なんですかね。
私はクロエがエドガーに再会したらもっと修羅場になるかと想像していたのですが、それほどでもありませんでしたね。
クロエがポーの村の秘密を話してくれたおかげで一族の歴史がまた少し明らかになりました。
●クロエは1000年以上前(830年頃)にヨークシャーに住んでいたブリトン人で、老ハンナによって一族に加えられた。
●一族は大老ポーと老ハンナの他に、大老とともにローマから旅してきた8人のローマ人などがいた。
●老ハンナはブリトン人の仲間を少しずつ増やし、ポーの村をつくり始めた。
●一方、大老と8人のローマ人はトリッポの城に住み始めた。
●ローマ人の中心はフォンティーン。金色の髪、金茶色の瞳、魔をも魅了する天使のような美しさをもつ男。異母弟のバリー=ダイモンを可愛がっている。
●フォンティーンは城主の亡き後、自分が城主となり、いつも若い娘に囲まれていた。城は悪魔の城と呼ばれた。
●城に教会から征伐隊が来た。大老は征伐隊を助け、フォンティーンを棺に入れてポーの村に運んだ。バリー=ダイモンだけが逃げ、他のポーは全員死んだ。
●フォンティーンの体は密かに村のバラの地下深くに置かれていた。死んではいない。バラの根が絡みつき、大輪の花を咲かせ続けた。
●バリー=ダイモンが村に帰ってきた。兄の分も償うと言っていたが、ある日、村中のバラを枯らして逃げた。大老は村に結界を張って彼を締め出した。
●100年後、バラが再生すると大老と老ハンナはポーの村を出てスコッティの村に移った。
もう驚きですよね。
何よりもバリー=ダイモンの兄がついに登場です。
私は記事(39)で兄の正体について推測を書きましたが、やっぱり見事に外れました。あはは。
読んで何となく萩尾先生の「月蝕」と「温室」を思い出しました。
「月蝕」は若い城主を城の地下室で殺してなり代わり、美しい乙女と結婚した金毛の狼の話。
「温室」は原作付きですが、美しい少年が温室の精霊に魅入られて姿を消し、後に真っ赤なバラが狂ったように咲く話です。
フォンティーンは死んではいないけれどバラに自分のエナジーを与え続けているのですよね?
それなのにずっと美しいまま変わらないのは、なぜなのでしょうか。
バリー=ダイモンはフォンティーンと一緒に埋めてもらいたがるほど兄を慕っていた。
最初は兄の分まで償うと言っていたのにバラを枯らして逃げたのは、大老ポーに復讐を誓ったからでしょうか。
Vol. 1 でポーの村を追放されたという話でしたが、こういうことだったんですね。
でもシルバーは久しぶりに会ったバリー=ダイモンをひどく恐れていたので、まだ描かれていないことがあるのかもしれません。
シルバーと言えば1000年も前から生きていた古株だったとは、ちょっと驚きでした。
見かけによらず要領のいいヤツなのかも。
クロエはフォンティーンに恋する乙女ですね。
あれほど若返りたがっていたのは、フォンティーンに釣り合うように若く美しくなりたかったのかな。
クロエに皮肉交じりにポーの村の話をするエドガー、好きです。
サラッと「ウェールズのスコッティの村」と言っちゃってますけど、スコッティの村がウェールズにあるって前に出てきましたっけ?
これも新事実ですよね?
少し引っかかっているのは、エドガーは老ハンナをギリシャからローマ、イギリスへと来た人だと思っていたけれど、老ハンナ自身はクロエに元々イギリスに住んでいたブリトン人だと言っていたこと。
ギリシャまで遡るかどうかはわかりませんが、「メリーベルと銀のばら」で大老ポーが「わたしたちはローマの灯を見 フィレンツェの水を渡り ともに咲けるばらを追った」と言っているので、少なくともローマでは大老と一緒だったと思うのですが?
そしてエドガーがバリー=ダイモンの苗字「ツイスト」を気にしていたことも。
これは何か意味があるのか、それとも忘れていいようなことなのか、よくわかりません。
◆◆・* 2 1975年のアランとバリー=ダイモンの話 *・◆◆
ロンドンの公園で偶然出会ったアランとバリー=ダイモン。
アランは面と向かって「あんたは信用できない!」と言ったりして、かなり冷淡ですね。
まあベネチアのコンサートでは、ジュリエッタに賛辞を贈ったら隣にいたバリー=ダイモンにいきなりエナジーを送り込まれて災難でしたもんね。
「エドガーに知らない人からモノをもらっちゃいけないって言われてるんだ」って、あの後エドガーからきつく言われたのかなと思うと笑えます。
でも公園でバリー=ダイモンに会ってから急にふらついたり彼の歌を聞きながら眠ってしまったりしたのは、何かの力のせいなのでしょうか。
バリー=ダイモンの方はアランをずいぶん気に入っている様子。
とても会いたかったようだし、自分の作った地下の天国を見せたがったり遊びに行こうと熱心に誘ったり。
なぜこれほどまでに好意をもっているのでしょうか?
コンサートの時は歌が兄に届いたと言ってもらえたようで単純に嬉しかったのだろうと思いましたが、どうもそれだけではないような気がします。
アランが兄と同じ金髪の、ピュアでイノセントな同族だから?
意外とファルカを仲間にしたのも金髪が理由の1つだったりして。
金髪と言えば、Vol. 2 にはなかったアランの金髪線が今回はちゃんと入っていてとても嬉しいです。
金髪線がないとどうも寂しくて、先生はお忙しくて時間が足りなかったのかなと残念に思っていました。
突然復活したのは時間に余裕があったか、ファンからの強い要望に応えてくださったのだろうと思うのですが、もしやフォンティーンの登場と何か関係あるのでしょうか。
いや、ないだろうな…。
ちなみにファルカはVol. 1 で髪を染めていて今回も金髪線なしでした。
もう1つ気になったのはアランが吠える犬にビクついていること。
犬が怖いの?
今までこんな描写はなかったのに、急にどうしたんだろう。
アランとの別れ際にバリー=ダイモンはエドガーの姿を見ます。
多分この時に初めてエドガーを認識したんですね。
コンサートの時、エドガーはオオカミの仮面をつけていて、バリー=ダイモンが歌い始める前に席を立っていますから。
エドガーにとっては2016年にカフェで会ったのが、ほぼ初対面。
そしてアランはまだ一度もクロエを見たことがないですね。
◆◆・* 3 1976年の話 *・◆◆
1976年6月。「エディス」のラストのあの日!
旧作では特に6月とは書かれていなかったので、これも新事実(って言うほどでもないか)。
とにかくあの日が今ここに再現されている!
もう本当に感動です。
あの時と同じエドガー、アラン、エディス。
ヘンリーも服が全く同じ。
違うのはバリー=ダイモンがすぐ近くにいたこと。
アランが落ちてすぐにダイブするエドガー。
ちょうどブランカが塔から落ちた時のように。
そうだよね!
エドガー、やっぱりそうするよね!
エディスをバスルームに運んだのはバリー=ダイモンでした。
これまではエドガーだと思われていたので、よく理性を失わなかったなあという感じでしたが、これで納得です。
じゃあエドガーはアランを救い上げて、そのまま「目」を使ってグールの丘に移動したのですね。
あの「もう明日へは行かない…」というモノローグは地下の洞窟でアランを抱きしめながら想っていたのでしょう。
焼け跡に佇むアーサー、ファルカ、ブランカ。
旧作と新作がきれいに繋がったなあと感じます。
そして虚ろなバリー=ダイモンの姿からは、これから物語がどう展開していくのだろうと期待と不安が広がります。
◆◆・* 特に気になること *・◆◆
ここまで書いてきたこと以外に私が特に気になっていることは2つあります。
1つは「天国」と「地獄」、もう1つは「オルフェオとエウリディーチェ」です。
①「天国」と「地獄」
クロエはポーの村は永遠の楽園で、その楽園のために永遠の地獄があると言いました。
バリー=ダイモンも、地獄が地上に永遠の王国を作っている、と。
「地獄」とは地下で永遠にバラを咲かせ続けるフォンティーンのことですよね。
バリー=ダイモンはアランに自分が地下に作った「天国」を見せたがっていました。
「きみが面白がるだろうって思ったんだ」と言って。
地下の天国って一体どんな所なんでしょうか?
地下にバラの花畑を作っている?
それなら本当にパラダイスですが、あまりそんな気はしないんですよね。
で、ここから妄想なんですが、もしかしてバラの花畑の下に秘密基地を作っているとか。
そこはフォンティーンがいる地下のような場所で、そこにアランを連れて行って…
なんて考えると、どんどん怖い方向に行ってしまうんですよ。
2016年にカフェを出た後、エドガーをそこに連れて行くんじゃないか、とか。
バリー=ダイモンは兄を取り戻して再生させたいのでしょうか。
エドガーがアランを再生させたがっているように。
そのためにエドガーとアランが必要なのでしょうか。
「天国」と「地獄」も新しいキーワードになるのかもしれません。
バリー=ダイモンが口ずさんだ「オルフェウス」の歌はオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」の中の曲です。
Vol. 2 でバルカロールが物語に関わっていたので、この曲もちょっと調べてみました。
そうしたら気になる言葉が色々出てきてしまったんですよ。
まずオペラの基になっているのはギリシャ神話のオルフェウスの物語。
神話なので諸説あるのですが、オルフェウスは伝説的な詩人であり音楽家。
アポロン神の子という説もあるそうです。
竪琴の名手で、これを奏でながら美しい声で歌うと野獣や山川草木まで魅了したとか。
大老ポーは元々ギリシャの神官ですよね。
そして大老に血を授けられたフォンティーンは魔をも魅了するほど美しい男。
竪琴を持つ姿が多く描かれていて、地下でも胸に抱いているので名手なのだろうと思います。
オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は、すごく簡単に書いてしまうと次のようなストーリーです。
「オルフェオは妻エウリディーチェを亡くして悲嘆に暮れる。
絶望のあまり連れ戻しに冥界に下ると神々に言い、何があっても決してエウリディーチェを振り返って見ないことを条件に許される。
冥界の洞窟の入口には復讐の女神や死霊達がいたが、オルフェオが竪琴を奏でて歌うと消えていく。
オルフェオはエリゼの園でエウリディーチェを見つけ、手を引いて地上に向かう。
エウリディーチェは夫が自分の方を見ようとせず、その理由も言わないことを次第に怪しみ、ついて行こうとしない。
オルフェオが耐え切れず振り向くと妻は息絶える。
オルフェオは自分も死のうとするが、愛の神が現れてエウリディーチェを生き返らせる。
2人は喜んで抱き合う」
これを更に乱暴にまとめると、
「最愛の者を失う→絶望→冥界に連れ戻しに行く→失敗→神の力で最愛の者が蘇る」
何だかね、シチュエーションが似ているし、冥界=地獄だし、地下の洞窟はフォンティーンのいる場所のようでもあり、エドガーがいたグールの丘のようでもあり…。
ちなみに神話をパロディ化したオペレッタもあって、原題は「地獄のオルフェ」ですが日本では「天国と地獄」として定着しています。
ほら、やっぱり「天国」と「地獄」なんですよ。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
他にはクロエとバリー=ダイモンの関係も気になります。
いつも行動を共にしているのかどうかはわかりませんが、単に昔からの仲間だから一緒にいるのでしょうか。
クロエはなぜエドガーにバリー=ダイモンの行方を知らないふりをするのでしょうか。
そして次号のモノクロ予告も気になりますね。
人骨と人体解剖書ですよ!
アオリは
「炎の中に失われたアランの復活を求めるエドガーの旅は――!?」
本当に怖い方向に行ったらどうしよう。
ドキドキしますけど次回も絶対に面白いのは間違いないですよね。
ところでVol. 1 の予告に「連作形式」と書かれていたのを私は「ユニコーン」の後に別のエピソードが連なると解釈していたのですが、そうではなくて「ユニコーン」自体が連作形式という意味だったようです。
前の記事でわかったようなことを書いていまして、申し訳ありません。
さて、次回はいつの話なのでしょうか。
とても楽しみです!