亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

*ポー復活で舞い戻ってきたファンがゆっくり綴ります。ネタバレご了承ください

(51)「ユニコーン Vol. 4 カタコンベ」

今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになった後で、ぜひまたいらしてくださいね ♪


ユニコーン Vol. 4」、今号は私にとって「やっぱりそうか!」と「こう来たか!」の回でした。
まずはいつものように扉絵からどうぞ!

 

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小学館『flowers』2019年6月号より)

 

なっ 何でしょうかっ このシュールな絵は!?
でも、どこかで見た覚えが…


と思ったら、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」だとわかりました。
「快楽の園」は3枚のパネルからなる祭壇画です。
中央のパネルに「快楽の園」が、左に「エデンの園」が、そして右に「地獄」が描かれていて、この扉絵は「地獄」の一部がアレンジされています。


前の記事で私は「天国」と「地獄」が新しいキーワードになるかもしれないと書きましたが、さっそく出ましたね。


◆◆・*・◆◆・*・◆◆


さて、Vol. 2 では1958年にベニス(ベネチア)のコンサートでバリー=ダイモンと出会ったアラン。
Vol. 3 では1975年のロンドンで再会。
そしてこのVol. 4 の舞台は1963年のロンドン郊外。
ここでまたバリー=ダイモンと再会…と言うより時系列でいくとベニス以来、初めての再会です。


やっぱりそうでしたか!
実は後付けみたいになってしまうんですが、75年の2人のやり取りが58年のベニス以来にしては不自然な感じがしていまして。
そうしたら友人が、75年にアランがバリー=ダイモンを1度「バリー」と呼んでいることを指摘してくれて、58年の時点では「バリー」という名前を知らなかったはずなので間に1回は会っていたんじゃないかなと思っていたんです。


それにしても今回のバリー=ダイモンの登場の仕方、怖くないですか?
池のボートでうたた寝しているアランをいきなり覗き込むなんて。
しかもアランがベニスで付けていたネコの仮面を付けて!
これって、その仮面を5年間大切に持っていたということですよね。
まるっきりストーカーじゃないですか。


そんなバリー=ダイモンに対して警戒しながらも話し相手になるアラン、素直ですね。
でも、その素直さが裏目に出たようです。

 

◆◆・*・◆◆・*・◆◆


バリー=ダイモンに手を取られてアランが「移動」した先はローマのカタコンベ(地下墓地)。
そこはバリー=ダイモンが誰にも見せたことのない秘密の場所。
何百年もかけて1人で塔を造り続けている。
人骨と石を石膏で固め、蛍光塗料を加えた白いペンキを塗った塔を――。


やっぱり!
前号のモノクロ予告の人骨から何となく雰囲気は予想していたんです。
でも、こんな塔を造っているとは想像していませんでした。
こう来たか!


骨を美しいと言うバリー=ダイモン。
人間のように裏切らず、文句を言わず、嘘もつかないと。
人間? そう言えばファルカがバリー=ダイモンは「バチカンからも人間からも仲間からも嫌われてる」と言っていましたが、誰のことでしょう?
その相手に余程苦い思いを味わわされたのでしょうか。


バリー=ダイモンにとって骨でできた美しい塔のあるカタコンベは、やすらげる「天国」。
でもアランにしてみれば「地獄」ですよね。
扉絵は、バリー=ダイモンの「天国」がアランの目にはああいうシュールな「地獄」に映るというイメージなのでしょうか。


75年に会った時にバリー=ダイモンが「オレはただ…あの…地下を見せようと…きみが面白がるだろうって思ったんだ オレの作った天国を」と言い、アランが「天国? 地獄だろっ」と言っていますが、これは行ったことがあるから出た言葉なんですね。


でもアランが嫌がることを知っているのに「きみが面白がるだろうって思ったんだ」って、ちょっと変?
それにアランは「エドガーに知らない人からモノをもらっちゃいけないって言われてるんだ」とも言っているし、もしかしたら2人は63年から75年の間にも会っていたのかな?

 

◆◆・*・◆◆・*・◆◆


バリー=ダイモンは大老ポーを「敵」と呼んで、兄を助けるために自分は戦い続けるのだと語ります。
戦っては負け、干からびてカタコンベに放り込まれるが、100年ほどで回復し、また戦いを挑む。
それでも兄を助けるには敵を滅ぼすしかないし、絶対に平伏しないと。


けれどアランに不毛な戦いだと図星をさされると、姿を消してしまう。
ベニスでブランカに「泣けないって かわいそうだわ」と言われた時もそうでしたけど、言い返せないと逃げる人なんですね。


不気味なカタコンベに置き去りにされてアランは叫びます。


「ユニコ―――ン!!」


ついに出ました!
作品タイトルにしてバリー=ダイモンの本名が!
似合わないからまさかと思っていたけれど、やっぱりそうか!
異母兄フォンティーンが名付けた、フォンティーンだけが知る名前。
んー? そうすると一緒に暮らしていたローマ人の継母と異母姉妹(?)は「ユニコーン」という名を知らなかったんですよね?
なのに「本名」でいいのかな。


ま、何か事情があるのかもしれないので、それはひとまず置いといて。
ベニスでバリー=ダイモンは、やはり言葉にして名前を教えていたんですね。
で、すぐに忘れる暗示をかけていたのにアランは思い出した、と。
それはなぜ?
しかもバリー=ダイモンはその名で呼ばれると逆らえない。
それもなぜ?
もしかするとフォンティーンが、「ユニコーン」と呼ぶ相手に逆らえないように暗示をかけていたのか?
でもバリー=ダイモンはフォンティーンの行き過ぎた行動を止めようとしていたというから、違うかな。

 

◆◆・*・◆◆・*・◆◆


とりあえずアランが無事に戻ってこられて、よかったよかった。
けどバリー=ダイモンのアランに対する執着は気になりますね。
「友達になりたい」と再三言っていますが、単にアランを気に入ったから本気で友達になりたいのか、兄を助けるためにアラン(またはエドガー)を利用しようとして近づいているのか、よくわからないところがあります。


ベニスで名前を教えたのは、歌を褒められて嬉しかったのと気に入ったからのような気がするし。
ネコの仮面をずっと持っていたのも、純粋に会いたかったからのように思えるし。
でもやっぱり、すべて下心あってのことかもしれない。


前の記事で私は気に入った理由を「兄と同じ金髪の、ピュアでイノセントな同族だから?」と適当に書きましたが、「子どもだから」っていうのもありますよね、きっと。
兄を助けるには「子どものポー」が必要なんでしょうか。


そしてバリー=ダイモンは塔を造って何をしようとしているのか。
何かの儀式?
予想通り「目」を使って移動できるとわかりましたが、アランやエドガーの行動をどうやって把握するのか。
他にどんな能力があって、皆が彼を恐れるのか。
カフェの時計を進ませたのは時間を支配できるということなのか。
カラカラに干からびた状態から、どのようにして回復するのか――それがアラン再生に繋がるはず。
まだまだ謎だらけですね。

 

◆◆・*・◆◆・*・◆◆


今号は最後にやっとエドガー登場。
2人が修道院に住んでいるというのは初めてですね。
神父も同族?
ルチオに滞在先をお世話してもらったのでしょうか。


エドガーの秘密主義は前からわかっていましたけど、アランもエドガーに言わないことが結構あるんですね。
じゃあベニスでの一件も詳しく話していないのかもしれません。
2人のこの距離感、いいな。
「タマに ひとりでいるのは楽だ」で「一週間」を思い出しました。


今回はアランの出番が多くて絵もきれいで嬉しい私です。
個人的に一番嬉しかったのが、特に何ということのないこちらのコマ。

 

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「エディス」の頃の顔に似てるなあと思うんですよ。
旧作と似ている絵を見つけると喜んじゃうって、オールドファンの、さがですかね。


今月も予告がカラー・モノクロ共に描き下ろしで、それもとても嬉しいです!

 

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「運命の相手を求める、人ならざる者たちの想いは――」

 

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「永遠を生きるゆえに、切実なエドガーの想いは――!?」


ユニコーン」、まだまだ先は読めません。
次号も本当に楽しみです!