亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

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(52)「秘密の花園 Vol. 1」

今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになった後で、ぜひまたいらしてくださいね ♪


『flowers』2019年7月号発売日。
「さあ、今日は『ユニコーン』の続きが読めるぞ~ ♪」と足取りも軽く書店に行って、表紙を見るなり目に飛び込んできた文字は


ポーの一族 秘密の花園
新章突入!


えっえっえ~っ?
ユニコーン」は前号で終わりだったの!?
予告にも「ユニコーン」って書いてありましたけど??


混乱しながら帰宅して本を開く。
ほとんどの皆様は似たような状態だったのではないでしょうか。


1ページ目、雨の中を馬車で行くエドガーとアラン。
何となく「ペニー・レイン」を思わせるオープニング?
アランが「ねえ 馬 曳かせてよ エドガー」。
このセリフ、「一週間」にもあったよね。
ここはどこ? いつの話?
と思っていると


1888年9月1日 レスター郊外」


えっ、1888年と言ったらアランが仲間になってわずか9年後じゃないですか。
リデルをおばあ様の元に帰した直後頃。
わ~、そんな昔まで遡っちゃうんだ!


まだ混乱したままページをめくると、見開きの扉絵が。

 

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この扉絵、前号のモノクロ予告( ↓ )とよく似ていますね。

 

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はっきり違うのは、予告ではアランの目が閉じていたのが開いていること。
でもこのアランの表情、何だか人形みたいで生きているようにも死んでいるようにも見えます。


再び物語に戻ると、馬車が揺れて放り出されたアランが川の中に。
今度は「エヴァンズの遺書」を思い出してしまう。
どうなることかと思っているうちにアーサー登場!
ここでやっと気づきました。


1888年、レスター!
秘密の花園」ってエドガー達とアーサーの出会いの話なんだ!
アーサーがどうしてエドガーをモデルにランプトンの絵を描いたのか、どうして仲間に加わったのか、そのいきさつが語られようとしているんだ!


そう気づいてからは興奮してページをめくる手が止まらない(まあ、いつものことですけど)。
そしてアーサーがエドガーに絵のモデルになってくれるよう頼むところでラスト。
あああ、ここで休載か~!


・*・・*・


旧作をお読みの方はご存じのように、アーサーは「ランプトンは語る」で初登場した人物です。
本人が出てきたのではなく、エドガーを追うジョン・オービンによって語られました。
オービンの言葉を書き写してみます。


「アーサー・トマス・クエントン卿は
幼年時代の事故で左耳がなく
アゴにかけて裂傷がありました
そのため長く髪をのばしていた」

「彼は がんこで無口で
画商にも あいそなしで
親族も村人も そばによせず
結婚もせず
ずっと この館にひとりで住んでいた
年とった下男に身辺のせわをさせるほかは…」


アーサーはエドガーをモデルにして11枚のランプトンの絵を描きました。
1枚目の日付は1888年9月30日。
10枚目が1889年の春。
そして最後が1889年5月20日付の「ランプトンのいない部屋」というタイトルがついた無人の部屋の絵です。
オービンによると


「この後 クエントン卿は絵を描かず
3か月後の8月末に33歳でなくなっています
たくさん血をはいて
後年は病気だったらしい」


今号でエドガー達がアーサーの館に来たのが9月1日なので、1か月後に最初の絵が完成し、エドガーは(多分アランも)少なくとも翌年の春まで滞在することになるんですね。
約80年後の1966年にこの館で集会が開かれ、エドガーの放火によってシャーロッテが死んでしまう…と考えると感慨深いものがあります。


オービンが言っていた「年とった下男」というのがマルコなんでしょうね。
パトリシアがわざわざ「老けたこと…」なんて言っていますし。
他の使用人は別の場所に住んでいたのか…なるほど。
マルコはインド人なのかな。なかなか面白い人ですね。


アーサーがなぜエドガーをモデルにランプトンの絵を描いたのかは、ファンが前から知りたかったことの1つですよね。
その話が何の前触れもなく始まるなんて、嬉しい驚きとしか言えません。
アーサーは自宅にあった古いランプトンの模写を見て子ども時代の初めての友達の面影を重ね、友達に似ていたエドガーをモデルに自分なりのランプトンを描こうとしたんですね。
その子に会って許しを乞いたいけれど、もういない…。
アーサーが大けがを負った幼年時代の事故が、その子と関わっていそうな気がします。

 

・*・・*・


エドガーとアランに関する新事実も出てきましたね。


まずはアランの眠り病。
旧作にはなかったけれど、変化した直後からの病気のようです。
実は私、以前から、エドガーがモデルを務めている間アランはどうしていたんだろうと思っていたのです。
だってそんなに長い間放っておかれたら、絶対に拗ねて出て行きたがるに決まってますもん。


だから「春の夢」で眠り病が出てきた時、眠っていたのかなと思ったのですが、やっぱりそうでした。
このまま春までずっと眠り続けるのでしょうか。
扉絵のアランの表情が人形のようなのは眠り病を表しているのかな。


そして新たに名前が出てきたウィンクル氏。
2人の後見人の弁護士。
エドガーが後見人の存在を何度も口にしていましたが、ついに登場するようですね。
この人は名前に「ポ」がつかないけれどポーの一族なんでしょうか。
それとも人間の協力者?


どちらにしても男爵が生きていた頃からの知り合いではないでしょうか。
私はリデルのおばあ様を捜し出したのも、このウィンクル氏じゃないかと思っています。
この人の登場によって、もしかしたらエドガー達の財源の謎も明かされるかもしれないですね。


それからアランの主治医もロンドンにいるという話ですが…
この人は本当にいるのかな?

 

・*・・*・


他に気になったこと&気に入ったこと。


「一週間」でアランが「ね 馬ひかせて」と言ってエドガーに「だめだ ヘタだもの」とニベもなく断られていますが、今号を読んで「本当にヘタじゃん」と思われた方が多いのではないでしょうか。


アランファンの1人として弁解したいのですが、アランは人間時代(9年前)には乗馬が得意でした。
今回は眠り病を発症していたのと、苦手な雨で暗かったせいだと思うんですよ。
暗いところでは目がよく見えないと前号にありましたからね。
でも「一週間」の時、エドガーの頭には今回のことが浮かんだんでしょう。


つまり言いたいのは、アランはトロいんじゃなくて体調に波があるんです~、元気な時は木登りや崖下りが得意だし水面に突き出た杭の上もヒョイヒョイ渡っちゃう敏捷な子ですよ~、ということなんです。


それからアランの髪形!
旧作ではこの時代はセンター分けでゆるいウェーブですよね。
今号も1ページ目と扉絵ではちゃんとセンター分けになっています。
その後は濡れていたり寝ていたりして、はっきりわからないコマが多いですが。
ウェーブじゃないのはちょっと残念だけど、こんな些細なことが嬉しいです。


アランの話が続きましたが、今号のエドガーで私が一番好きなのは、アーサーに「私もあなたを夜中に喰ったりしませんよ」と言うところ。
ちらっとバンパネラモードを感じさせるところがいいなあ、と。
「私」と言うのを聞くのはシスター・ベルナドットとの会話に続いて2回目です。


別の意味で好きなのは「赤の他人のエドガー・ポーツネルです」。
エドガー、新シリーズではマジメに面白いこと言うようになりましたよね。

 

・*・・*・

 

さて、続きが読めるのが来年の春だなんて待ち遠し過ぎますね。
これから何が起きるのでしょうか。
パトリシアも古い模写を「思い出の絵」と言っているので、絵と関わってくるのかな。
アーサーがポーになるきっかけを作るのかも。


「春の夢」「ユニコーン」「秘密の花園 Vol. 1」と新シリーズを読んできて、萩尾先生が旧作との整合性を保ちながら、隙間を縫うようにして全く新しい世界を巧みに創造されていることに感嘆するばかりです。
そして、「そうだったんだ!」という驚きと「どうなるんだろう?」というドキドキをリアルタイムで感じられることが本当に嬉しいです。


「エディス」後のエドガーとアラン、ポーの歴史、アーサーの話など、読者が知りたかったことを次々に描いてくださるのも嬉しい。
もしかしたら先生はファンの長年の疑問すべてに何らかの答えなりサジェスチョンなりを示してくださるのではないか、とさえ思ってしまいます。


もしそうならキリアンやエディスのその後もわかるのかも!
男爵がいつ頃ポーになったのか、老ハンナの館が村人に襲撃されてレダはどうなったのか、仲間同士でどうやって連絡を取り合うのか(「エヴァンズの遺書」の頃は集会があったようですが)、そんなことも知りたいな。


紀元前から21世紀までの長い歳月に亘るいくつものエピソードが1つに繋がる時、そこにはどんな物語が現れるのでしょうか。
先の先まで楽しみでなりません。
春よ早く来い!