亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

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(79)「秘密の花園 Vol. 8」

今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


前回、アランがホラー映画のように目を開けるという衝撃的なコマで終わった「秘密の花園」。


ど、どうなる!?
もしや珍しい狩りの場面が展開されるのか!?
おののきつつも、いやいや「花の中のランプトン」の絵はまだ仕上がっていないようだからアランはまた眠ってしまうだろうとタカをくくっていた私ですが…


甘かったです。
まさか絵が前日に完成していたとは。


という訳で(?)今号の扉絵はこちら。

 

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小学館『flowers』2021年8月号より)


物語の中にタイトルが組み込まれたスタイルです。
緊迫感が途切れなくて良いですね。


・*・・*・


で、アランですよ。
私の予想を上回る迫力で、ひえ~っと驚きながらも、目が光っているコマとかフォルテに噛まれて流血する首を両手で押さえている正面向きのコマとか、いいなあと思って見てしまいました。


狩りの場面というと旧シリーズでは美しい印象が強かったのですが、新シリーズは違いますよね。
特に「春の夢」のエドガーと今回のアランは怖い。


勝手な想像なのですが「春の夢」のエドガーはブランカの視点で、今回のアランはポールとポーラの視点で見たリアルなモンスターとして描かれているからかもしれません。
それに比べるとパトリシアの祖父母やブラザー・ガブリエルを襲う場面は読者目線なのでモンスターになっていないのかも。


エドガーが妹思いのポールを脅すところは、「メリーベルと銀のばら」で儀式を目撃したエドガーを一族がメリーベルを人質にして脅していたのを思い出しました。


・*・・*・


ケイトリンの過去もびっくりでしたね!
前号で登場した時、普通の人間と違う感じがして始めは「もしやポー?」と疑ったのですが「村から逃がしてもらったのだからそんなはずはない」と、これまたタカをくくってしまい…甘かったです。


そういえばVol. 4 の予告に「そして訪れる村からの使者。」という一文があって「ブラザー・ガブリエルが登場したけど村からの使者じゃないよね~?」と不思議に思っていたのですが、あれはもしやケイトリン登場のフライングだったんでしょうか。


それからシルバー。
9月からずっとレスター駅の近くのホテルに滞在していたんでしょうかね?
そこでエドガーを見張りつつケイトリンを看護助手としてクラウディア先生のもとに送り込み、パトリシア一家に近づけて里帰りに同行させたと?


何と手の込んだことを!
さすが古参のポー。


そうなるとつい気になってしまうのがホテルの高額な宿泊費と諸々の経費。
これ旧シリーズからの謎なんですけど、もしかして錬金術でも使えるのかな。
それかエドガーも使っていた催眠術?


まあ、それはさておきシルバーは犬を使うんですね!
新事実。


そして吠える犬に怯えるアラン。
ああ~、やっぱり!
ユニコーン Vol. 3」でアランが犬を怖がっていたのがずっと引っかかっていたのですが、フォルテに噛まれたせいだったんですね。


このこととシルバーが犬を使うことは今後別のエピソードにも関わってきそうなので覚えておかないと。
ユニコーン Vol. 1」で2016年(正確には2015年の暮れ)のアーサーはフォルテ位の大きさの犬を飼っているので、何かあるかもしれません。


なぜか何度も出てきたオオアラセイトウの花も、ついでに覚えておきます。


エドガーとアランがこれからどうなるのか、とても気になりますね。
例の「契約」が結ばれて2人は自由になるのでしょうか。


ケイトリンが村との連絡役になるのかも。
いや、そうすると「春の夢」でのエドガーとクロエの会話がおかしくなるから、それはないのか。


・*・・*・


ポールとポーラは運が悪かったとしか言いようがありませんね。


ポーラは本当に何ともないのかな。
「小鳥の巣」のキリアンみたいな単なる貧血状態だったなら大丈夫でしょうけど。


ポールは「春の夢」のアダムに続いて、またも少年の目撃者。
これがトラウマにならなければいいのですが。
アーサーは上手く収めたなと思います。


そういえばアダムは、あの後も誰にも話していないのかな。
後にキーパーソンとして登場するのではないかと密かに気になっています。


・*・・*・


さて、問題はアーサーですよね。
パトリシアとはお互いに何も言わず心の中で別れを告げました。
これで人間界への未練にひとつ終止符が打たれた、ということでしょうか。


エドガーとアランが人間でないことはすでに感じ取っていましたが、今回の件でバンパネラだと察したのか?


次回ダニーを訪ねてまた話が動きそうですが、今後どのようにエドガー達と再会して一族に加わるのか?


可能性として、後見人の弁護士・ウィンクル氏が村と通じていたと知ったエドガーが、代わりにアーサーに後見人になってもらうべく戻って来るというのもありそう。
しっかりした大人が付いていなければ少年2人で人間界を生きていくのは壁が多過ぎますから。
でもウィンクル氏との関係は続くかもしれないし、分かりませんけど。


アーサーがよく咳をしているのも気になります。
「ランプトンは語る」では「8月末に33歳でなくなっています たくさん血をはいて 後年は病気だったらしい」と言われているので、もしかして不治の病とか?


いろいろ気になりますが来月は休載で続きは10月号だそうです。
萩尾先生、楽しみにお待ちしております!


・*・・*・


秘密の花園」これまでの感想はカテゴリー一覧からご覧いただけます。よろしければどうぞ。

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(78)「秘密の花園 Vol. 7」

今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


今月は遅くなってしまいましたが、皆様もうとっくに読まれましたよね?
秘密の花園 Vol. 7」。


ラストシーン、私は本当にドキッとしました!
気を落ち着けて、まずは扉絵から。

 

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小学館『flowers』2021年7月号より)


エドガーはランプトンの服を着ています。
アランが目覚めた~!
と思ったら、物語の中でもそろそろ目覚めるようですね。


それでは今回は人物ごとに5つに分けて感想を書いてみます。


1 ダニー
2 エドガーとアーサー
3 パトリシア
4 新キャラ
5 アラン


・* 1 ダニー *・


前号でメリッサの霊に遭遇して2階の窓から転落したダニー。
てっきり死んでしまったのかと思ったのですが早合点でした。
どうもすみません。


病室にいる医師はVol. 1 に登場したドクター・ベイリーと、Vol. 6 に登場したアーサーの主治医と思われるドクター・ローソンですね。


急を聞いてダニーの妻のディジーと息子のディックが駆けつけました。


ディジーって健気な奥さんだなあと思います。
はじめはダニーが誰かに突き落とされたのかとアーサーの好意(と言うか罪滅ぼし)を無下にしますが、夫が回復して事情を知ると礼に訪れ、アーサーのために毎日祈るとまで言って。
貧しくてもプライドがあり純真で。


ディジーは多分、夫がアーサーをゆすろうとしていたことを知らないんでしょうね。
もし知ったら叱りつけそう。
妻としてのふるまいがパトリシアと対照的で、これは階級の違いなのかなと面白く読みました。


ダニーはロンドンの病院に転院することになりましたが、また登場するのでしょうか。


そもそも10年前にダニーの姉のダイアナがアーサーの子を身ごもったのは、姉が準男爵の息子にピアノを教えていると知ったダニーが、うまいこと玉の輿に乗せて恩恵にあずかろうとダイアナをそそのかしたんじゃないか…。


そんな気がしてるんですけど、さすがに考え過ぎですかね。
それにダイアナの死の真相について何か知っているのかも気になるところです。


・* 2 エドガーとアーサー *・


前回の記事で私は「アーサーがダイアナを直接手にかけたとは思わない」と書きましたが、どうやら間違っていたようです。


アーサーの衝撃の告白。


水仙…イチイ…
スズラン…ベニテングダケ……
ブラザーから教わった
毒のある植物やキノコのこと
笑いダケなんかすごいぞ!
笑いが止まらなくなる
笑って笑って死んじまうんだ!」


「子供なんか ほしくなかった
結婚なんか したくなかった
……ダイアナのアパートで お茶を入れた」


「…ただ赤ン坊だけが流れるはずだった
彼女まで…彼女まで……
それは………」


えーと、エドガーの言葉も合わせて素直に読むと、アーサーはワライダケを食べてダイアナの家に行き、お茶に毒を入れて飲ませたということですか?
その毒とはワライダケの粉末?


気になったので調べてみると、ワライダケ中毒の症状は主に幻覚作用で、他にしびれや嘔気などがあるものの死ぬことはないらしいです。
で、可能性としては


①妊娠していたので重症化して死に至った(実際にそういう例があるかどうかは置いといて)

②幻覚による事故死

③ワライダケではなくベニテングダケなどのもっと強い毒を使った


この中のどれかということでしょうか。


死因はお茶じゃなかった説も一応考えてみたのですが、傍目には流産で亡くなったように見える状況だったなら、やっぱりお茶の毒が原因のように思えます。
つまり、アーサーが殺したことに間違いない。


前号を読んだ時、私はダイアナの一件はアーサーにとって大した出来事ではなかったのではないかと思いました。
でも今は、アーサーはダイアナとの過去を決して忘れることはできなかっただろうと思います。
忘れようと努めて生きてきたかもしれませんが。
自分を「鬼」と言う所以は、ここにあるのかも。


ダイアナはパトリシアのような「心に住む」存在からは遠かったけれど、愛情が全くなかったとも言えず、だからこそ罪滅ぼしにディジーに経済的援助を申し出たのでしょう。
でもディジーはダイアナを愛していたから援助してくれると信じているので、アーサーはいたたまれない気持ちなんでしょうね。


そしてそんなアーサーが嫌がると分かっていて「毒キノコ」としつこく言うエドガー、大好きです(笑)。


エドガーがアーサーの告白に対して言った言葉が私にはとても印象的でした。


「エルフだって人を殺すことがあるんですよ…
ぼくには めずらしくも恐ろしくもありません
でもね…
エルフは殺しても後悔しません
人間と…違ってね」


そう、バンパネラにとって人間は生命の糧、麦と同じですから。


これを聞いてアーサーは眠っているアランが死体ではないかと疑い、2人で様子を見に行きます。
と、一瞬ぱちっと目を開け、また眠るアラン。


彼らは本当にエルフかもしれないと思い始めるアーサー。


「きみは見た目よりは長く生きてるのだろうね」

「きみはナマイキな少年でもあるだろうが
なまじな大人より
…長い経験を重ねている…
そんなふうに思えるよ…」


春の花が咲き始めた庭を歩きながらアーサーは言いました。


「次のランプトンは
花に埋もれてるのを描こう…
春の庭だ…」


いよいよエドガーが最後にモデルを務めた10枚目のランプトンですね!
ということは、この時すでに9枚目に取りかかっているんですね。


「ランプトンは語る」の中で4枚目から10枚目までの日付は言われていないのですが、オービンの「およそ20日に1枚の速いペースで描かれた」という言葉から20日ずつ数えてみると、9枚目は3月5日頃、10枚目は3月25日頃になります。
でも20日以上かかった時もあるだろうし、11枚目の「ランプトンのいない部屋」は5月20日で間が空き過ぎてしまうので、実際はもっと後なのだろうと思います。


エドガーが人間でないと分かっても受け入れるアーサー。
最後のランプトンの絵。
エドガーとアランがクエントン館を去る日、そしてアーサーが一族に加わる日が近づいているのを感じます。


・* 3  パトリシア *・


今回はパトリシアの家庭の様子が描かれました。
夫オリバー、12歳になったばかりの息子ポール、もうすぐ10歳になる娘ポーラ。
使用人も数人いる裕福な家です。


前号でパトリシアはオリバーの浮気が原因で家出していましたが、今号で母に連れられて家に戻りました。
でも夫に対しては常に敬語で無表情。


オリバーは小犬の一件からして相当な頑固者かと思っていたのですが、意外にも家庭を大事にしようと努力し始めています。
きっとパトリシアのお母さんが娘の代わりにお詫びして、うまく取りなしたんじゃないでしょうかね?
オリバーも妻に出て行かれてかなり焦ったと思うし。


アーサーにだまされたと嘆いていたパトリシアですが、偶然クラウディア先生に会って心がほどけていきます。


クラウディア先生、アーサーの祖母・グロリア夫人の絵の先生、名前だけは何度も出てきたけれど、やっと登場!
私は「月曜日はキライ」のマダムを思い出しました。


クラウディア先生がアーサーの話を始めた時、パトリシアは名前を聞くだけでも辛いのに傷口に塩を塗られたようで涙がこぼれます。
でもアーサーが母親に愛された思い出のない孤独な人だと分かり、自分をだましたひどい人という気持ちが薄れていく。
追ってきた彼を振り払ったことを申し訳なく思う。
この時、辛い涙は苦く温かい涙に変わったのではないでしょうか。


その夜は一家でポールの誕生祝い。
慣れない家族サービスに努めるオリバーが、ぎこちなくて何だか可愛い。


その後、アーサーが描いたレスターの絵を居間に飾るパトリシア。
オリバーが田舎くさいと言うのでしまっていたけれど、自分の好きな故郷の絵だからと。
この行動はアーサーに対する心の変化と、オリバーに対する自己主張を表しているのかな。


ところでVol. 6 の感想の中で、メリッサの霊の場面には必ず光のようなスクリーントーンが貼られていると書いたのですが、誕生祝いと居間の場面にも同じものが使われています。
でもこれはメリッサとは関係なさそうですね。


話を戻して、久しぶりに同じ部屋で休む夫婦。
1ページちょっとのパトリシアのモノローグが揺れる心を伝えています。
が、私は読解力不足で特に前半をちゃんと理解できているのか自信がないんですよ。
とりあえず、こんな風に解釈しましたというのを書いてみます。


「オリバーは変わると言った
私も……変わるのだろう
まだ夫に心も肌も許せないけれど
私も…夢の中に逃げてしまってたんだわ
初恋の少年がそのまま大人になるはずはないわ……
女もいれば生まれなかった子供もいる」

 ↓

「オリバーは変わると言ったし実際に努力している
そんな夫を自分もだんだん受け入れていくだろう
これまで夫婦の間に愛はなく、夫は逃げて愛人をつくった
自分もまた逃げていたのだ
初恋の少年がそのまま大人になっているという夢の中に
でもそんなはずはない
彼は私が知らない現実を生きてきた」


「かわいそうなアーサー
私の出した手紙を
あの時アーサーが読んでいたら
アーサーが読んでいたら……
あの時……
あの時に…
もう遅い
あの時は…
…過ぎてしまった…」

 ↓

「ずっと孤独で可哀想なアーサー
もし『あなたを愛している 結婚したい』という私の手紙を
あの時に読んでくれていたら
私達は結ばれたかもしれないのに
今もやっぱりあなたが好きだけれど時は戻らない」


こういう気持ちかな~と思うのですが果たして合っているのでしょうか。


さて、オリバーの努力は本気だったようで、神経痛を押してパトリシアの実家に一家で里帰り。
パトリシアはアーサーと顔を合わせることになるのか。
また一波乱あるのか。


私はこのまま夫のそばにいる気がするのですが、アーサーが一族に加わろうと決意するにはパトリシアとの関係も影響していくんじゃないでしょうか。


・* 4 新キャラ *・


上に書いた人々の他にも新キャラが登場しましたね。


私が気になるのは、何と言っても看護助手のケイトリン!
エドガーも名前を聞いて反応していますけど、ケイトリンて「春の夢」にチラッと出てきた、あのケイトリン!?
ポーの村にエサとして連れて来られ、メリーベルに助けを求めてエドガーに逃がしてもらった、あのケイトリンですか~~!?


えっと、ポーツネル一家はポーの村に20年もいなかった(by クロエ)。
村を出て割とすぐに男爵夫妻とメリーベルが消滅したのが1879年。
そして今は10年後の1889年。


ということは、このケイトリンがあのケイトリンと同一人物だという可能性は大いにあるわけですね!
まさか、こんなところに繋がるとは…。


で、仮に同一人物だとしたらケイトリンはエドガーを見てどう反応するのでしょうか。
バンパネラに再び遭遇した恐怖でエドガーに危機をもたらす?
命を助けてもらった恩返しをする?


見た目も普通の人とちょっと違う感じがするし、とにかく気になります!


もう一組、気になるというより笑っちゃう新キャラはパトリックの4人の子ども達。
見事に3人、パトリックと同じ顔。
祖父母とも同じ顔。
何と強烈な遺伝子だ。


ブルックリンだけ可愛いのはパトリシアに似たんでしょうか。
「妖精のとりかえっ子?」と聞くエドガーも好きです。


・* 5 アラン *・


春になり、いよいよアランの目覚めも近いようです。


2月にエドガーとアーサーが見に行った時、一瞬ぱちっと目を開けました。
その時アーサーが「死体ではないのか……やっぱり彼らはエルフなのか」と考えるコマでバックに描かれているアラン、バンパネラっぽくて「わ~素敵!」と思っちゃいました。
バンパネラモードのアランの絵って意外と少ないんですよね。
自分で狩りをしないから。


そしてラストシーン。
犬のフォルテを追いかけて、ポールとポーラがアランの眠る小屋へやって来ます。
戸板をクンクンするフォルテ。
ああ、やっぱりアランをここに寝かせた時にフォルテがついて来たのは、この伏線だったんですね!


戸板をこじ開けるポール。
パッと目を開けるアラン。
こっ 怖っ。
同じバンパネラモードでもこれは怖い!
「春の夢」で棺の中で目を開けてゆら~っと上体を起こし、ノアやアダムを恐怖に陥れたダン・オットマーみたいに怖い。


前にも書いたのですが、アランが眠っている間のエナジーがどうなっているのか私は気になっていまして。
エドガーがせっせとバラを運んでいましたが冬の間はバラもないし、このところ人間も襲っていないようだし。


変化した直後は飢餓状態で本能的に山賊を襲ったアランですが、眠りの時季から覚める時も同じ状態になるのでしょうか。
もしや珍しい狩りの場面が見られるのか?


でも花の中のランプトンの絵はまだ仕上がっていないようなので、エドガーはもうしばらく館に留まるはず。
それならアランはまた眠りにつくのかな。


・*・・*・


ということで、とても内容の濃いVol. 7 でした。
だんだん終わりが近づいてくるのを感じますね。
続きを読みたいけれどまだまだ終わってほしくない複雑な気分ですが、もうあと2週間ほどで次号が発売されます。
一体どうなるのでしょうか~!?


・*・・*・


秘密の花園」これまでの感想はカテゴリー一覧からご覧いただけます。よろしければどうぞ。

ポーの一族 カテゴリーの記事一覧 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

 

記事(61)に追記しました

徳間書店の『テレビランド増刊』に掲載されていた「トーマの心臓」のカットの出典について貴重な情報と画像をご提供頂きましたので追記しました。

(61)「トーマの心臓」イラスト集② - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(77)「秘密の花園 Vol. 6」

例によって盛大にネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


始まりましたポーシリーズ「秘密の花園」!
7か月ぶりに連載再開、今回はVol. 6 です。


こちらは掲載誌の表紙。

 

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小学館『flowers』2021年6月号より)


アーサーが描いたランプトンの絵は3枚目が椅子に座って本を読むポーズなので、その制作中の1コマといったところでしょうか。


エドガーはVol. 4 で3枚目の絵のモデルをしていて、その時に読んでいた本は『カンタベリー物語』でしたが、この本は違うようですね。
題字がはっきり見えないのですが「S」と読めるような。
シェイクスピア


嬉しいことに今月号の『flowers』はA5サイズのクリアファイル付き!

 

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絵柄は表と裏でVol. 2 の扉絵です。
Vol. 2 の感想にも書いたのですが、私はこの絵を「いばら姫」や「眠れる森の美女」みたいだなあと思っていまして。


眠りの時季に入ったアランを守るためイバラを切り開いて戦うエドガー。
襲いかかるバラは、ポーの村や人間などアランを脅かす全てのもの。


あるいは1976年以来、炭のような状態で眠り続けているアランを必死に復活させようとするエドガー。
バラはバリー=ダイモンやフォンティーンか。


そして前月号に載った今月号の予告カットがこちら。

 

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小学館『flowers』2021年5月号より)


上のVol. 2 扉絵の中世風コスチュームが、「秘密の花園」の時代である19世紀末のコスチュームに変わったような感じです。


そして今回の扉絵は

 

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小学館『flowers』2021年6月号より。以下同)


おおお! エドガー、なんか神々しい。
これは予告の絵のマントを広げた姿でしょうか。
アランは無事に眠りから覚めたんですね。
今月号はアランが本編に全く登場しないので、この美しい扉絵が嬉しいです。


・*・・*・


では、そろそろ本編の感想に参りましょう。
今回はアーサーとパトリシアの恋愛模様と、招かれざる客の話でした。


1889年の年明けに、パトリシアがロンドンから突然アーサーを訪ねて来ます。
聞けば夫のオリバーに前々から愛人がいたことがわかり、大ゲンカの末に家出してきたとか。
オリバーの顔の引っかき傷は、やっぱり女性が原因だったんですね。


パトリシアは離婚したいと言い、アーサーへの想いをぶつけます。
新たにわかったことが2つ。


①祖父母がパトリシアとアーサーの結婚を申し込みに行ってメリッサに断られたことを、パトリシア本人も知っていた。


②パトリシアはアーサーに「愛している。結婚したい」という手紙を書いたがアーサーの手に渡らなかった。
メリッサが気づいて捨てたんでしょうか?


これを受けてアーサーも「ずっとずっと愛している きみ以外の女性がぼくの心に住んだことはない…」と、ついに告白。
そしてプロポーズ。
幸せの絶頂にいる2人。
ところが、そんな2人をどん底に突き落とす人物が!


その人物とは、パトリシアの兄のパトリックが経営する商社に転職してきたダニー・ダム。
アーサーと同じケンブリッジ大に在籍していたことがあり、アーサーのことをよく知っている様子。
はじめのうちは好意的なことを言っていましたが、いきなり爆弾を落としました。


10年前、ダニーの姉のダイアナはケンブリッジでピアノ教師をしており、アーサーにも教えていた。

ダイアナはアーサーの子を身ごもり、2人は婚約。

しかしダイアナは流産して亡くなった。

ダイアナの家族が恥だと言って来なかったのでアーサーが葬式を出し、ダニーと2人で埋葬した。


この衝撃的な話をアーサーも認めたものだから、パトリシアはショックを受けて去り、絶望したアーサーは前にエドガーがしたように池に飛び込んで叫びます。


「もう人間でいるのはいやだ
ぼくはエルフになる」


これ、重要なセリフですよね?
ポーの一族への第一歩!


犬のフォルテに助けられて命拾いしましたが、そもそもダイアナの一件はアーサーにとって大した出来事ではなかったのではないでしょうか。
そうでなければダニーに再会した時、たとえ相手が10年前に一度会ったきりだとしても、今は髭を生やしていたとしても、誰だか思い出しそうなものです。


エドガーが言うように当時の貴族はそういう場合、お金で解決するのが常だったのでしょう。
アーサーは少なくとも本気ではなかった。
だからパトリシアに言った「きみ以外の女性がぼくの心に住んだことはない」という言葉も、本人的には嘘ではなく本心だったのだろうと思います。


・*・・*・


アーサーをひどい男と見ることもできますが、ダニーの話もちょっと胡散臭いところがありますよね。
ダイアナのことを「美人でやさしくて…彼女も人気者でした」と言っていますが、アーサーの回想の中のダイアナはお世辞にも美人とは言えません。
子どもができたと言って結婚を迫っているし。


ダニーは一見誠実そうで実はアーサーから大金をせしめようという魂胆。
転職先の経営者であるパトリックがアーサーの親戚だと知って、始めからゆすり目的で来たんでしょうね。


ダニーの話で気になるのは、ダイアナの死について「流産して…それで亡くなったんです」と言う一方で「急でした…元気だったのに」とも言っているところ。
何だか変だなあと思っていたら、最後にエドガーがアーサーに「あなたは…ピアノ教師を殺したの…?」。
まさかアーサーが直接手にかけたとは思いませんが、何があったのでしょうか?


・*・・*・


今号で他に気になるのは、まずメリッサの霊。
息子のアーサーを苦しめに来たダニーを転落死させてしまうとは。
ということはエドガーに「ひとつだけ お願い」と囁いたのは、アーサーを守ってほしいとか、そういうことだったのかな。


ふと気づいたのですが、こちらのコマ ↓

 

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背景に光のようなスクリーントーンが貼られていますよね。
このスクリーントーン、このコマだけでなく前後のエドガーとダニーが話している場面にずっと使われているんです。


それからここにも

 

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ここにも

 

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前にブラザー・ガブリエルがお清めをしている場面でも見たような気がするし、もしかしてこの光のようなものはメリッサの霊の存在を表しているのでは?


そう思って単行本の1巻を見てみると、やはり幽霊に関する場面に使われていました。
ただ、Vol. 1では関係なさそうなところにも貼られているのですが…。


メリッサの強すぎる愛がアーサーを救うのか、それとも逆に破滅へと導くのか気になります。
個人的にはエドガーとメリッサが対話するところが見たい。


エドガーは人間達を冷静に観察していますね。
ダニーが金銭目的だと見抜いたのは、さすが。
ダニーが転落した音を聞いても落ち着き払って「なんでもありませんよ」と言っていますが、何が起きたのか知っていたのかな。


そして、ついにマルコが疑念を抱き始めましたね。


「去年から あのランプトンが現れてから 死者が多すぎる」


エドガーとアランが館に来たのが9月1日。
それから1月までに亡くなったのが、パトリシアの祖父、祖母、ブラザー・ガブリエル、ダニーと、これで4人目。
確かに普通じゃない。
この疑念は何かを招くのでしょうか。


最後に、今号で一番楽しかったのはパトリシアの両親が登場したこと。
父・母・兄と3人同じ顔で笑いました。
いやあ、パトリシアが両親に似なくて本当に良かった。
もし似てたらストーリーが変わっていたし、アーサーもポーにならなかったかも?


そんなこんなで不穏な空気をはらみつつ、次号へ続く。
どうなるんでしょうか? 目が離せません!


・*・・*・


秘密の花園」Vol. 1から5 までの気になることをこちらにまとめています。もしよろしければどうぞ

(72)フラワーコミックススペシャル『ポーの一族 秘密の花園1』 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記


各話の感想はお手数ですがカテゴリー一覧からご覧ください

ポーの一族 カテゴリーの記事一覧 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

 

(76)ぼくはエドガーにとってメリーベルの みがわりで… エディスはぼくにとって…

今回は久しぶりに「ポーの一族」旧シリーズの話です。


実は私、ずっとわからないことがありまして。


それは「エディス」のラスト近く、アランがエディスを仲間に入れようとして時計の中に隠し、エドガーを呼びに家に戻った場面でのこと。
エドガーは元々アランがエディスを好きになっていくことを快く思っておらず、2人は口論になります。


前置きが長くなってしまうのですが、その部分を引用させて頂きます。
青い文字がエドガー、緑の文字がアランのセリフです。


「エディスに なにかしたのか?」

「…気絶させただけ…仲間に…」

「アラン!!」

「ぼくはエディスが好きだ――
エディスも――」

「きみはエディスなんか好きじゃないんだ!!」

「好きなんだ!」

「うそをつけ!」

エドガー!」

「どこに彼女をおいてきた!」

「だって ぼくが呼んだのに――
ふりむかないんだもの あの子は
だから…だから…」

「だから?
きみ幸福にできるのかエディスを?
ロジャーやヘンリーや学校から引きはなしても
それ以上に?」

 

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(『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』2007年 小学館より。以下同)

 


エドガーは更に続けます。


「好きなら好きなほど
愛してれば愛してるほど
きみは後悔するんだ
幸福にしてやれない もどかしさに!」

 

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この言葉を聞いてアランの脳裏にメリーベルの姿が浮かびます。
そしてハッと気づくのです。


「ぼくはエドガーにとって
リーベルの みがわりで…
エディスは ぼくにとって…」

 

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この言葉の続きは何か?
エディスはアランにとって誰の身代わりなのか?


私がずっとわからないのは、これなのです。
いえ、正確に言えば確証が持てずにいるんです。


・・・・・・・・・・・・


この答えをネットなどで何度か見かけたことがあります。
それはすべて「エドガーの身代わり」でした。


「アランはエドガーに自分のことだけを考えていてほしいのに、エドガーの心の中にはメリーベルが棲んでいる。だからエドガーの代わりにエディスの愛を欲しがった」
私が今までに見た答えは大体こういったものでした。


「アランは最後まで『エドガーは自分のことだけを見てくれない。自分はエドガーに愛されていない』と思ったまま炎の中に消えた」と書かれているものも、いくつかありました。


逆に「エドガーの愛を確信したので更にエディスの愛を欲しがった」という解釈もありました。


もし皆様の答えが「エドガーの身代わり」で一致しているなら、そうなのかもしれません。
でも考えれば考えるほど私は違う気がするんですよね。


だったら誰なんだ?というと、


「エディスはアランにとってシャーロッテの身代わり」


ではないでしょうか。


・・・・・・・・・・・・


シャーロッテは「ランプトンは語る」に登場しました。
エディスの10歳上の姉で1966年当時14歳。
オービンがクエントン館で開いた「バンパネラ狩り」の集会に招待されていました。


しかしエドガーの放火によって火災が発生。
シャーロッテはランプトンの絵を持ち出そうとして逃げ遅れ、助けようとしたアランの目の前で亡くなりました。

 

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それから10年後。
「エディス」でエドガーとアランは運命的にエディスと出逢います。
エディスがシャーロッテの妹と知ってアランは激しく動揺しました。


私はアランがこの10年間、シャーロッテを忘れたことはなかっただろうと思います。
きっと思い出すたびに「救えなかった」「殺してしまった」という罪悪感にさいなまれたことでしょう。
エドガーの放火を止められなかった自責の念もあったのではないでしょうか。


アランはエディスに尋ねます。


「…きみ幸せ?」


そして「どうして? 幸せよ」と屈託なく答えるエディスの笑顔を見て安心するのです。
エディスが幸せなふうだと自分も幸せな気持ちになる。
その気持ちを恋だと思う。


けれど、そんなアランの様子をエドガーは冷静に見ていました。


「それは まちがいだよ
きみはシャーロッテを助けられなかった
そのハンデを うめたいだけだよ」

「うそだ! ちがうよ」

「彼女が不幸だと きみも不幸だ
きみは負い目でいっぱいだ
だからね 教えてあげるよ
きみはエディスに借りをかえしたいだけさ」

 

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きみはシャーロッテを助けられず結果的に焼死させ、彼女の幸福を奪ってしまった。
だから妹であるエディスには姉さんの分まで幸せでいてもらいたいんだ。
妹が幸せなら、きみの罪悪感が軽くなるから。
きみは無意識にエディスとシャーロッテを同一視している。
エディスをシャーロッテの身代わりにしているんだよ――


エドガーは、そう言っている訳ですね。
これにはエドガー、アラン、メリーベルの関係も重なります。


エドガーはメリーベルを愛していたがゆえに幸福にしてやれないことがもどかしく、仲間に入れたことをずっと後悔していました。
人間でいる方が幸せだったのに、その幸福を奪ってしまった。
呪われた身にしてしまった。
そんな罪悪感からメリーベルに持てるだけの愛情を注いでいました。


その妹を失った時(やはり助けが間に合わなくて)、エドガーは空っぽになった心を埋めるようにアランを仲間にしました。
アランをメリーベルの身代わりにして、無意識に2人を同一視していたのだと思います。


エドガーは孤独と喪失感を埋めるためにアランをメリーベルの身代わりにした。


アランは罪悪感を埋めるためにエディスをシャーロッテの身代わりにした。


私にはこう思えて仕方ありません。
だからアランのモノローグを最後まで続けると


「ぼくはエドガーにとって
リーベルの みがわりで…
エディスは ぼくにとって
シャーロッテの みがわり…」


ではないかと思うんです。


それに、もしエディスがエドガーの身代わりだとすると、エドガーとはいつも一緒にいるのに、その心を独占できないからと言って人間を代わりに求めるかな?という疑問もあるんですよね。
エディスがアランを好きだとしても常にアランのことばかり見て愛してくれるわけではないと、アラン自身もわかっていたでしょうから。


ただ、アランのエディスに向かう気持ちが100%シャーロッテと重なるものだったかというと、そうでもない気がするんですよ。
もちろん始めに近づいたのはエドガーに似ていたしシャーロッテの妹だったからですが、知り合ううちにエディスの持つ明るさ、素直さ、優しさといった魅力に惹かれた面もあると思います。
自分のために初めてクッキーを焼いてくれたら、そりゃ嬉しいですよね。


ところでエドガーのこの言葉、


「好きなら好きなほど
愛してれば愛してるほど
きみは後悔するんだ
幸福にしてやれない もどかしさに!」


これはエドガーのメリーベルに対する想いのすべてだったような気がします。


エディスが兄達の逮捕で悲しみに沈んでいた時、アランは何も助けになれないことがもどかしく、自分が永遠にそばにいて愛する方がエディスにとって幸せではないかと考えます。
それはエディスのためというより、自分がエディスに恋していた(と思っていた)からでしょう。


けれどメリーベルを愛すれば愛するほど後悔が募ったエドガーは、人間でいる方が幸せだとよくわかっていたんですね。

 

・・・・・・・・・・・・


はじめに書いたように、私はネットなどで「アランは『エドガーが自分のことだけを見てくれない、自分はエドガーに愛されていない』と思ったまま消滅した」という解釈を何度か目にしたことがあります。


これについても私は、本当にそうなのかな?違うんじゃないかな?という気がしています。
まあ、気がするだけで、はっきりとはわからないんですけどね。
あえて理由を挙げるとすれば「そんなふうに見えないから」です。


このブログの最初にエドガーとアランの互いの気持ちについて自分なりの推測を綴ったのですが、そこに書いたことをもう一度書いてみます。


1959年の「小鳥の巣」で、アランは「ぼくのことだけ考えてくれなけりゃいやだ!」と思いのたけをぶつけました。
「エディス」は1976年の話で、間に入るのは1966年の「ランプトンは語る」だけですが、そこに2人の関係性を示す描写はありません。
一緒にしていいのかわかりませんが、新シリーズの「ユニコーンVol. 4 カタコンベ」は1963年の話で、この作品でエドガーは最後にチラッと出てくるだけです。


なので「小鳥の巣」から「エディス」までの間のアランの心の動きはわからないのですが、「エディス」のアランは「小鳥の巣」の時と違ってわがままで甘えた感じがなく、のびのびとして健康的な、ごく普通の少年に見えます。


例えば、それまでアランが1人で楽しそうに行動しているのは「一週間」や「カタコンベ」などでエドガーが一緒にいられない時がほとんどでしたが、「エディス」ではもっと自由に単独行動しています。


また、エドガーとカフェで待ち合わせをしていた時に「エド」と声をかけていますが、「エドガー」でなく「エド」と呼んだのは今のところこの時だけで、2人の関係が少し変化したのかな?と思わせます。


更にエドガーがエディスの存在を知りながらロンドンを発とうとすると、「……じゃ…きみ やいてるんだ!」と言ったりして、心の余裕さえ感じるんですよね。


この頃のアランは自分がメリーベルの身代わりだということに、わだかまりがなくなっていたような気がします。
そしてエドガーが自分を大切に思ってくれていると心から信じられたのではないでしょうか。


・・・・・・・・・・・・


ここに書いたことはすべて私が感じたことに過ぎないので本当のところはわかりません。
間違っているかもしれません。


エディスはアランにとって誰の身代わりだったのか。
旧シリーズの最後の頃、2人は互いにどう思っていたのか。


萩尾先生も当時と今ではお考えが変わっているかもしれませんが、新シリーズの中で答えなりヒントなりを示してくださると嬉しいです。


・・・・・・・・・・・・


新シリーズといえば、4月28日頃発売の『flowers』6月号から「秘密の花園」の連載が再開されます!
しかもA5サイズのクリアファイル付き ♪

 

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小学館『flowers』2021年5月号より)


エドガーの絵を描きながら
子供時代を懐かしむアーサー。
ある日アーサーの友人が訪れ、
過去の秘密が暴かれる――…!?」


新たな登場人物、新たな展開ですね。
連休前の素敵なプレゼント、楽しみです!


・・・・・・・・・・・・


2人の気持ちについて過去に書いた記事です。もしご興味がありましたらどうぞ。
(1)から(5)までは続いています。

 

(1)アランは、わがまま? - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(2)エドガーの気持ち① - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(3)エドガーの気持ち② - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(4)エドガーの気持ち③ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(5)アランの気持ち - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(18)「春の夢」あれこれ~②ふたりの距離感 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

記事(62)に追記しました

オスカーの系譜にオズワルドを追加しました。
忘れていてどうもすみません。

(62)オスカーの系譜を辿ってみました - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

(75)梅田芸術劇場版「ポーの一族」を観てきました~宝塚版との違いを中心に

2018年に宝塚で上演された「ポーの一族」が先ごろ外部で再演されました。


主役のエドガーを演じられたのは、宝塚版でもエドガーを演じて絶賛され、その後退団された明日海りおさん。
公演は3都市を回るスケジュールでした。


1月11日~1月26日 大阪 梅田芸術劇場
2月  3日~2月17日 東京 東京国際フォーラム
2月23日~2月28日 名古屋 御園座


企画・制作は梅田芸術劇場(以下、梅芸)。
主催は大阪と東京が梅芸で、名古屋が御園座中日新聞社です。

 

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(上/プログラム表紙 下/同扉)

 


私は東京で1回観劇し、大阪と名古屋のライブ配信を1回ずつ視聴しました。
この記事では私が観た範囲でわかった宝塚版との違いを、感想を交えながら書いてみたいと思います。
もっと何度もご覧になった方も多いと思いますので、間違いにお気づきになりましたらご指摘頂けますと幸いです。


なお個々の俳優さんの演技につきましては、このブログが萩尾漫画の感想ブログであることと、舞台は生もので日々変わることから言及を控えています。


全体的なこと


男女混成キャスト


宝塚版と今回の梅芸版の一番大きな違いは、何と言っても女性だけだった出演者が男女混成になったことでしょう。
主演の明日海さんと幼いエドガー役の田中なずなさん以外は、男性の役は男優さんが、女性の役は女優さんが演じています。


原作は少女漫画ですから100%ファンタジー
宝塚も女性が演じるので男性役が非現実であるのはもちろん、女性役も男役に合わせた虚構の世界。
原作と同じファンタジーです。


梅芸版は男優さんが演じることによって男性役はリアルな男性に、女性役も現実味のある女性になりました。
また、ダンサーが男性に変わってダンス場面がよりダイナミックになり、歌にも男性の声が入って作品全体に力強さと厚みが出た印象を受けました。


キャストの人数


出演者の数は79人から半分以下の35人に減りました。
宝塚では役を増やすためにマーゴットの妹弟や2人の霊能者を創作していましたが、それらの役はなくなっています。


と言っても、宝塚も全員が舞台上に並ぶのはフィナーレの最後だけですし、梅芸版に人数の少なさは特に感じませんでした。
ただ、クリフォードとジェインの婚約披露パーティーなど華やかな場面は少し寂しかったです。


セットなど


宝塚の専用劇場には銀橋(ぎんきょう)と呼ばれる独特の舞台があります。
これはオーケストラピットと客席の間にある通路で、客席に向かって弧を描くように張り出しているので観客と距離が近く、ここで演じるとインパクトがあります。


今回は銀橋がありませんが、セットに階段が多用されていてとても効果的でした。
この作品は「ミュージカル・ゴシック」と銘打たれているのですが、ゴシック式のセットが重厚で全体的に色も照明も暗めになっていて、宝塚よりゴシック的な雰囲気が色濃く感じられました。


第1章


序章


マルグリットとルイスが、ドン・マーシャルとバイク・ブラウン4世(原作にない人物)に会う場面。
原作ではドンがマルグリットを見て「美人だ!」と喜びます。


宝塚版もそうだったのですが、今回はそれがバイク4世になっていました。
ドンとマルグリットは後に結婚するのでドンのセリフのままの方が良かったな~と思うのですが、どうしてでしょうね?


プロローグ


全体の流れは同じですが、振りが変わり、大老ポーと老ハンナもソロで歌うようになりました。
振りの変更は他の場面でも行われています。


大老ポー役の福井晶一さんと老ハンナ役の涼風真世さんはそれぞれオルコット大佐とブラヴァツキーの2役を演じ、常に一緒に出ておられました。
お2人は歌う場面が多く、迫力満点でした。


スコッティ村近くの森


エドガーとメリーベルが森で老ハンナに拾われる場面。
宝塚版の老ハンナは毅然としながらも優しい印象でしたが、梅芸版はこの後の場面でも不気味さを前面に出していました。
エドガーから見たおばあちゃま」と「人間から見たバンパネラ」という視点の違いなのかな、と思います。


婚約式


シーラを一族に加える儀式の場面。
大老ポーは宝塚では棺の蓋が開いて登場していましたが、今回は階段の上に扉があり、そこからの登場でした。
また、元はセリフだったところが一部歌になり、たっぷり聴かせてくれました。


一族と村人の対決


老ハンナがビルに杭を打ち込まれて消滅し、村人達が館に押し寄せてくる場面。
ここは宝塚版では盆が回って一族と村人達が交差するスペクタクルな見せ場だったのですが、今回は盆が回らず残念でした。


ここでも大老ポーのセリフが歌になっていました。
大老ポーと老ハンナの消え方は梅芸版の方が良かったです。


馬車


エドガーが馬車の中で変化から目覚める場面。
シチュエーションは違いますが、ここに原作の会話が挿入されました!


エドガー「あなたは自分を呪わないの シーラ」

シーラ「なぜ?」

エドガー「…なぜ?」

シーラ「なぜ?」


私は原作のこの場面がとても好きで、宝塚版にないのを残念に思っていたので嬉しいです。

 

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(2007年 小学館萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』所収「メリーベルと銀のばら」より。以下同)

 


コヴェントガーデン


ロンドンの市場で人々が賑やかに歌い踊る場面。
大道芸人達の芸が大技になりました。
宝塚版のバトンも楽しかったですけどね。


そこへ、ふらふらと現れるエドガー。
ここにも原作のセリフが歌として挿入されました。


「血がほしい…
生命(いのち)の かて…
あの色はどうだ…
ぞくっとする…」

 

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この後、エドガーは「ぼくは狂っている…」と歌い、男性のダンサー達がエドガーの内面を表現します。
ダンサーは衣装が黒衣に変わり仮面をつけ、跳躍力が素晴らしくて、エドガーの葛藤がより強く迫ってきました。


その後のメリーベル


アート男爵家の養女になったメリーベルと、オズワルド、ユーシスとのいきさつが語られる場面。
ここは宝塚では時間の制約から簡単な説明だけで終わってしまっていたのですが、梅芸はフィナーレがない分だけ時間を取れるので膨らませてあり、とても良かったです。


リーベルとオズワルド、メリーベルとユーシス、ユーシスと母の短いダンス。
ユーシスの母がナイフを持ち出し、そのナイフでユーシスは自殺。
原作とは違いますが納得できる流れでした。


そしてメリーベルの歌も新しく作られました。


「もう誰も水車を作ってはくれない
あの遠い夏の日
バラの谷の小川の陰で水車が回る
エドガー どこにいるの
どんな姿だとしても
どこにいても すぐわかる
エドガー どこにいるの
たった1人の きょうだい
生きているなら会いたい」


歌詞は原作のこのあたりから採られたのでしょうね。

 

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ホテル・ブラックプール


1879年、ホテルに霊能者一行、ポーツネル一家、トワイライト一家が次々と登場します。


2幕のクリフォードとジェインの婚約披露パーティーと並ぶ華やかな場面なのですが、どちらも照明が薄暗くセットに色味も少ないので、もう少し明るくてもいいのにな、と思いました。


もっとも、ゴシック小説風の雰囲気を出すための演出なのでしょうけど。


エドガーとアランの出会い


ここは演出が変わっていて、今回の方が良かったです。


宝塚版ではエドガーが下手から、アランが上手から歩いて来て鉢合わせしていましたが、梅芸版ではエドガーが階段の上から、アランが下から歩いて来て中ほどで鉢合わせ。


その後の会話も階段上で続き、アランが少し上の段にいることで相手を見下している感じが出て、とても効果的だったと思います。


セント・ウィンザー


セント・ウィンザーに転校してきたエドガーが、アランのご機嫌取りの少年達と喧嘩になります。


この作品には他にもギムナジウムの生徒やエドガーをからかう村の子どもが登場するのですが、年齢をぼかしているとはいえ大人の男性が少年を演じるのは正直ちょっと厳しいな~と思いました。


頭の中で「少年、少年」とイメージしながら観るのでビジュアルは何とかOKなのですが、声がどうしても大人なんですよね。
配信だとアップになるので喉仏までしっかり見えてしまうし。
と言って実際に少年が演じるとかえって変な気がするし、しょうがないんでしょうね。


クリフォードの診療所


場面の最後にシーラがクリフォードに「先生、改めてお礼に参りますわ」と言って立ち去った後に、アランとクリフォードの説明ゼリフが加わりました。


アラン「ぼくも先生が母の往診でいらっしゃるのをお待ちしていますよ」

クリフォード「ああ、来週の水曜日だ」


1幕ラスト


キャスト総出演で歌い上げる最も高揚感にあふれる場面。
ここでは盆が回りました!


しかもエドガーの記憶の中の人々が、乳母、レダ、村の子ども達、シーラの儀式に集まった一族、バラを差し出すディリー…と走馬灯のように現れては消え、過ぎ去った長い年月を思わせてとても良かったです。


ただ、宝塚では最後にエドガーが銀橋で1人で決めポーズをして終わるのが鮮烈な印象を残したのですが、今回は階段の中央に立っているだけなので、何かポーズがあればもっと良かったかな、という気はしました。
まあ、宝塚版を観ていなければ感じないでしょうけど。


それと、アランファンとしてすごく個人的な感想を言ってもいいですか?


宝塚版には、この大ナンバーの中でアランが片手を上げたまま、その場で1回転する振りがあったんです。
たったそれだけの振りの中にアランの孤独・不安・何かにすがりたい気持ちがギュッと凝縮されているように見えて、私は「ああ、アランだ!」と心が震えたんですが…。
今回はそれがなくて残念でした。


第2章


アランとメリーベルの出会い


エドガーと一緒にいたメリーベルにアランが初めて会う場面で、セリフが追加されました。


アラン「(メリーベルに)ブラックプールにきみほど純粋な子はいないよ。青い瞳が永遠を見ているようだ」

エドガー「ポーツネル家の特徴だよ。似てるだろう?」


宝塚版にこのセリフはありませんでしたが、メリーベル役の華優希さんは青いコンタクトをつけておられました。


で、疑問なのですが…
リーベルの瞳の色って青いんですか?


そもそも原作ではメリーベルの瞳が何色かという話はどこにも出てこないんですよね。


このブログの「ポーの一族」イラスト集にもカラーイラストを多数掲載させて頂いておりますが、瞳の色はほとんどが緑で、青とブラウンがちらほら。
だから私はずっと緑だと思っていたんです。


でも舞台化にあたって小池修一郎さんはエドガーの髪の色を萩尾先生にお聞きしたそうなので、きっとメリーベルの瞳の色についても了承を得ているはず。
萩尾先生がOKなら私もこれからは青もアリだと思うことにします。


セント・ウィンザーの塔


エドガーがアランを襲う場面で、その前の会話にセリフが追加されました。
正確ではないかもしれませんのでニュアンスとしてお読みください。
黒文字は元からあるセリフです。


アラン「もっと彼女のことを知りたい。もっとメリーベルに会いたい

エドガー「兄の許可がいる」


アランとメリーベルの出会いの場面に続いての追加で、アランがメリーベルにプロポーズするのが唐突すぎる印象を与えないようにとの配慮でしょうか。


降霊会


ブラヴァツキーが大老ポーの霊を呼び出した降霊会。


宝塚版にいたメイヤーとイゾルデという霊能者の役がなくなり、代わりにシーラ、ジェイン、カスター先生、ホテルの支配人・アボットが一緒に手をつないでいました。


また、大老ポーの霊を呼び出した後でオルコットがブラヴァツキーに「わしの髭とどっちが長かった?」と聞くのですが、その後にセリフが追加されていました。

 

ブラヴァツキー「あっちの方」

オルコット「あっちか。クソッ」


アランの家


アランの母が心臓発作を起こし、カスター先生とクリフォードが診察に来ている場面。


宝塚ではアランは手ぶらで現れますが、今回は「お母様の好きな白いバラ…」と花束を持ってきて執事に渡していました。
しかも執事に名前が付きました!
私は「バレット」と聞こえたのですが、合っていますかね?


それからマーゴットがアランに言う「キャーハハ! バカね!」という原作のセリフは、なくなりました。


ブラヴァツキーとオルコット


シーラがクリフォードを一族に加えるためホテルを出た後に、ブラヴァツキーとオルコットがホテルをチェックアウトする場面が追加されました。


この後の男爵夫妻が消える場面で福井さんと涼風さんが大老ポーと老ハンナとして再登場するので、ブラヴァツキーとオルコットとしては出られないからでしょうね。


ブラヴァツキーはバイクに「(男爵夫妻を撃つことになる)あの銃は持っている? 肌身離さずにね」と言っていました。


アランの家


アランが母レイチェルと伯父ハロルドの関係を知り、ハロルドを階段から突き落とす場面。


ハロルドとレイチェルが歩きながらベッドに移動する形に変わり、セリフも少し増えました。
ハロルドは抱き合った時にレイチェルから見えないところでは笑っていなくて、打算だとはっきりわかるようになっていました。


そしてアランが白バラの花束を抱えて階段を下りてきて2人に気づき、花を床に叩きつける。
これ、宝塚では本だったのが花に変わりました。
母の好きな白バラを持って来たんですね。優しい子だ。


取り繕うハロルドに向かってアランが「大方この汚い手でお母様をたぶらかしたに違いない!」と言うと、宝塚では伯母のセリフが「アラン!」でしたが、今回は「何ですって!」。
たった一言の変更ですが意味合いが変わって緊迫感が高まり、とても効いていると思いました。


で、ハロルドが階段落ちして、ここからですよ。
レイチェルが「アラン…取り返しのつかない事を…」と言い放って去るのは宝塚版から変わらないのですが、梅芸版ではバラの花束を一度拾ってまた捨てるという容赦のなさ!


私は宝塚版を観た時にレイチェルの冷たさがショックだったんですよね。
それが更に増し増しに…。


1幕で「父親に似てきた 信用できない」と憎々しげに言って(歌って)いるところを見ると、亡くなった夫との仲は冷え切っていたんでしょうか。
原作では「お父さん そっくりになって…」と愛おしそうに言いながらアランの頬をなでる優しいお母さんなのに。


アランを絶望の淵に叩き落とすための演出だとわかってはいるんですけど、「何もそこまで」ってどうしても思っちゃいます。


時の輪


エドガーがアランを仲間に加え、2人で永遠の旅に出る場面。
梅芸版ではスクリーンに、バラ、風、城、舞う花びらなどの絵が映し出されて、とても素敵でした。
あれは萩尾先生の絵なのでしょうか?


・◆・◆


以上、宝塚版と梅芸版の違いについてのレポートでした。
それぞれに良さがありますので、どちらが好きかは観る人次第かなと思います。


名古屋の配信の日は大千秋楽で、カーテンコールで小池さんと萩尾先生も挨拶されました。


萩尾先生はマスク越しにもわかるほど嬉しそう!
先生、舞台をご覧になるたびにエナジーチャージされているのではないでしょうか。
この春に連載の再開が予定されている「秘密の花園」も張り切って描いてくださりそうです。


お2人と出演者の方々の笑顔を見ながら、コロナ禍の中で1公演も落とさずに完走させた関係者の皆様のご尽力に思いを致すとともに、この作品はいつかまた再演されるだろうなと予感しました。


・◆・◆


過去に宝塚版の感想も書いています。もしよろしければご参考までにどうぞ。


原作ファン目線で見た観劇の感想です

(31)宝塚「ポーの一族」東京公演を観てきました~原作ファンの愛のツッコミ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記


千秋楽ライブビューイングの感想や、ブルーレイ収録時と千秋楽の違いなど

(32)宝塚「ポーの一族」ライブビューイングを観てきました~原作ファンの初ライビュ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記