亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

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(70)「秘密の花園 Vol. 5」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


さあ、「秘密の花園 Vol. 5」です。
いやいや、今回も驚きの展開でしたよね~!
まさかブラザー・ガブリエルがエドガーに食われるとは。


感想に行く前に扉絵をどうぞ ♪

 

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小学館『flowers』2020年11月号より。以下同)


2人がそれぞれ蝶のように、あるいは2人で1匹の蝶のように見えます。
Vol. 2 でも背景にこのようなモチーフがありましたが神秘的で素敵ですね。


さて、物語はエドガーを中心に急展開。
今回は大きく3つに分けて感想を書いていきたいと思います。


1 エドガー自身のこと
2 エドガーとブラザー・ガブリエル
3 エドガーとアーサー


・* 1 エドガー自身のこと *・


前回カウスリップのワインを初めて飲んで体質に合わず、危機に陥ったエドガー。
バンパネラとしての自分自身についても一族についても知らないことが多く、男爵夫妻と一緒だった頃は守られていたのだと実感します。


ポーツネル一家の絵が嬉しい。
シーラが若くて可愛いです。
旧シリーズでは大人っぽかったけど20歳ですもんね。


エドガーがそれまで飲んだことのないカウスリップのワインを飲んだのは、館の人間達の中に長く1人でいたから。


「だからアランが必要だ
アランがいたらもっと用心した」

「人間の中に長くいるのは危険だ
つい人間のやることに染まってしまう
…気をつけないと…!」


このモノローグ、ハッとさせられました。


エドガーにとってアランが精神的に何ものにも代え難いほど大切で必要な存在だということはわかっていましたが、アランを守るために自然と慎重になれるから傍にいてほしいという側面もあったんですね。


それで今更ながら気づいたのですが、旧シリーズのエドガーは男爵達と一緒にいた間はずっと「人間に戻りたい」と願い続け運命を呪って孤独だったけれど、アランと2人になってからは違うんですよね。
いつもメリーベルのことを考えていても、自分の運命を呪っている感じはあまりしない。


それは「人間に戻りたい」と思わなくなった訳ではなく、男爵夫妻が自分とメリーベルを守ってくれたようにこれからは自分がアランを守らなくてはという使命感の方が強くて、バンパネラとして生きざるを得なくなったからではないでしょうか。


アランを仲間にした時点で無意識にでも運命を受け入れていたのかもしれません。
だからこそアランには自分にない人間らしさを求めるのかも。


それからこれはエドガー自身のことではないのですが、今月号には「(アランが)目覚めた時は飢えているだろう 食事を用意しておかないといけない…」というモノローグもありました。


前から思っていたんですが、長い眠りから覚める時ってどんな状態なんでしょうね?
変化した直後は本能的に血を求めて人間を襲ったりしますけど、あんな感じになるのかな。


・* 2 エドガーとブラザー・ガブリエル *・


アランが眠っている小屋に入ろうとしたためにエドガーの餌食になってしまったブラザー・ガブリエル。
やっぱりポーではなくて人間だったみたいですね。


この展開にもびっくりでしたが、もっと衝撃だったのはブラザーのエナジーを奪うと同時に、ブラザーのメリッサとの記憶がエドガーの中に入ってきたこと。
こんなことがあるんだ~!


エドガーは「……こんなに生々しく… 記憶が入りこんで来たのは はじめてだ」と焦っていて、記憶が入り込むこと自体が初めてなのか、入り込むことはあったけどここまで生々しいのが初めてなのか、はっきりわからないのですが。


どちらにしても、なぜ今回に限って?
ブラザーのメリッサへの想いがあまりにも強かったから?
それとも、もしやブラザーが普通の人間ではなかったから?


ブラザーの記憶はメリッサが亡くなる前日から発見されるまで。
メリッサは同じ服を着ているので、ブラザーとの会話からあまり時間を置かずに亡くなったようですね。
この断片的な記憶の合間に何があったのか、とても気になるところです。


更にブラザーのエナジーと共に「夢」まで吸い込んでしまったらしいエドガーの枕元に現れた、メリッサの霊。
「ひとつだけ お願い」とは一体何なのか?
気になりますね~。


ところで先ほどブラザーがポーではなくて人間だったようだと書きましたが、まだ 100% そうとは言い切れない気がします。
だって謎が多いから。
どうしてエドガーの中に記憶が入り込んだのかということ以外にも、


なぜフィレンツェで死んだと思われていたのか。
なぜ15年ぶりに館を訪れたのか。
メリッサの話をしている時に言い淀んだことは何だったのか。
それはメリッサの死と関係があるのか。


これらの謎が先々どんなピースとなって物語に嵌め込まれることになるのか楽しみです。


今回、画商のホルバインも「ブラザーがフィレンツェで亡くなったとグロリアに聞いた」と証言したわけですが、グロリアがなぜそう言ったのか、エドガーの容赦ない一言が面白かったですね。
で、ブラザーがお香でお清めをしながら「少年のそういう無邪気さこそ邪悪なものだ」と仕返しみたいに言うのが可笑しい。


この時ブラザーが清めていたのは幽霊の魂ですよね?
それがメリッサの霊だとブラザーは知っていたのかな。


・* 3 エドガーとアーサー *・


今号でエドガーとアーサーの心の距離は、ぐっと近づいたような気がします。


アーサーの体調が悪い時やブラザーを偲んでいる時にエドガーが寄り添い、アーサーは幼少期の思い出を語ったりエドガーの言葉に慰められたりする。
心が落ち着いていく。


ブラザーの遺品の『カンタベリー物語』を前にエドガーがアーサーを支えている場面は、2人の心が通じ合っていて胸に沁みてきます。


エドガーも危険だということを忘れて人間の心を取り戻したよう。
アランに「やっぱり人間のところに長くいるのはよくない…どんどん人間に……ひかれてしまう…」と語りかける姿が少し切ないです。


エドガーがアーサーに「迷惑ならアランをつれて出ていきます」と言ったのは、これ以上アーサーに惹かれるのが怖かったからでしょうか。
でもアーサーの方もエドガーに惹かれていて、まだ手放したくない。


いずれアーサーは自らの意志で一族に加わることになるのかな、という気がします。


・*・・*・


その他にはブラザーが探していた「天国の庭」。
エドガーはアーサーに、それはメリッサのいた中庭だったのだろうと言いました。
ブラザーは最期に帰って来られたのだから可哀想ではないのだと。


秘密の花園」というタイトルには、アランが秘かに眠る花園、アーサーとドミニクが幼い頃に遊んだ思い出の庭という意味があるのかなと思っていたのですが、ブラザーの秘めた想いという意味も込められているのかもしれません。


最後に、今号で私が一番好きだった絵はこちらの小さなコマ ↓
何だかすごく「『ポーの一族』を読んでるぞ」っていう気がするんですよ。
わかって頂けます?

 

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・*・・*・


4枚目のランプトンの絵の制作が始まろうとするところで連載は休止。
続きは来年の春だそうです。
また待ち遠しい日々が始まりますね。


でも11月10日頃に Vol. 5 までを収めたフラワーコミックススペシャルが発売!
これにはショート番外編も収録されるんでしょうね。
今思えばショート番外編は、「秘密の花園」でアランがほとんど眠っているのでアランファンに向けたサービスだったのかも。
先生、お心遣いありがとうございます。


それに先立って10月28日頃に発売される『flowers』12月号には、コミックスに掛け替えられるカバーと栞が綴じ込み付録で付いてくるそうですよ ♪

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(69)「秘密の花園 Vol. 4」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


秘密の花園 Vol. 4」、いやぁ今回も面白かったですね~ ♪
予告通りの新展開!


今回の話はアーサーが3枚目のランプトンの絵を制作中なので1888年10月15日から11月5日までの間の出来事になると思います。
始めにいつものように扉絵からどうぞ。

 

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小学館『flowers』2020年10月号より。下も同)


わ ♪ 何だか「小鳥の巣」みたい~!って思わず興奮したのは私だけ?
2人の少年らしいしなやかな肢体、制服を思わせるリボンタイ付きの黒い服、アランのサラサラの髪。
しかも天使までいる!
エンジェールカミング アイムヒア!


…はい、わかってます。
この絵はブラザー・ガブリエルが探している「天国の庭」ですね。


では、この人の話から参りましょう。


・*・・*・


新キャラのブラザー・ガブリエルは、アーサーが13歳で寄宿学校に入るまでラテン語やフェンシングを教えていた修道士。
その後も館に引き留められてアーサーの祖母グロリアや母メリッサの相談相手になり、アーサーが18歳で大学に行く年にフィレンツェに帰った。
同行して1年間フィレンツェを旅行したグロリアの話では、そこで亡くなり立派な葬式が営まれたという。


そんな人が実は生きていて15年ぶりに館に現れた!
これまで世界を旅していたと言いますが…


この人いったい何者なんですかね!?
人間?
それとも予告にあったポーの村からの使者?


死んだと思われていたのに生きていたとか、地上の「天国の庭」を探して旅しているとか、「ポーなんじゃないの?」と思わせるフシが多いですよね。
それに人間なら、なぜ15年ぶりに突然帰って来たのかわからない。
旅のついでに寄ったのかもしれないけど何の説明もないし。


でも、もしポーの村からの使者だとしたら、エドガーを見てあんな驚き方をするかな?というところが引っかかります。
エドガーを投げ飛ばした時の反応も人間っぽい。
一方で、フィレンツェ出身の修道士ということでルチオか?とも思えたり。


まあ、その正体はいずれわかるでしょうが、ともかく面白いキャラですよね。
修道士だけど即物的で、マルコと張り合うのが可笑しいし、エドガーを「少年」と呼び続けるのも面白い。
もしポーなら今までいなかったタイプです。


そしてブラザーはメリッサに思いを寄せていたんですね。
「優しい方」と崇拝して。


メリッサのことをエドガーと話していた時、「私も…あの方に強く生きてほしかったんだ だから…」と言った後で話をごまかし、エドガーが「なんだか はぐらかされたような…」と怪訝な顔をしていますが、本当は何を言おうとしたんでしょうか。


これは完全な私の妄想なので本気にしないで読み流して頂きたいのですが…。


もしやブラザーはポーの一族で、メリッサを仲間にして一緒に旅をしたかったのでは?
苦しみから解き放してあげたい気持ちもあっただろうし。
でもメリッサが拒否したので、正体を知られた以上は生かしておけず自殺に見せかけて殺したとか。


うーん、違うだろうな…。


ところでブラザーの「地上の天国の庭」で思い出したのは、バリー=ダイモンの「地下の天国」。
それぞれに大切な場所ですが実に真逆ですね。


・*・・*・


メリッサは Vol. 3 ではかなり厳しい人、キツイ人という印象でしたが、ずいぶんイメージが変わりましたね。


息子のアーサーが5歳の時にロンドンで馬車の事故に遭い半死半生の状態になってから一緒にレスターに移り、ロンドンとレスターを行き来する生活。
ロンドンでは準男爵の妻として頑張っていたのに、夫の口から別家庭の存在を告げられ離婚を切り出されるとは。


きっと元々はブラザーの言うように優しく献身的な女性なんでしょうけど、息子まで誰かに取られると思えば、そりゃヒステリックにもなろうというものです。


夫のグローブ氏は今号で初登場。


結婚直後から浮気していたというのは当時の貴族としてありそうだとしても、息子が事故で「いずれ死ぬ」と宣告されたらあっさり諦め、レスターに移った後は一度も会わないなんて冷たすぎませんか?


はじめから情が薄かったのかなと思います。
アーサーが父を殺して自分も死のうと考えたのも、わかる気がしますね。


今回アーサーが顔に傷を負った理由が明らかになりましたが、想像以上にひどい状態だったようで驚きました。
おまけに父親に見捨てられるし、小さい頃は弱くて泣き虫だったのもわかります。
ブラザーに鍛えられて回復できて本当によかった。


・*・・*・


さてさて、エドガーの話もしないと!


3枚目のランプトンの絵で読んでいた本は『カンタベリー物語』だったんですね。


面白かったのはブラザーにいきなり投げられて身軽に着地するところ。
私はこのエドガー ↓ が可愛くて好きです。

 

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でもそれよりも大事件が!
アーサーの神経の薬としてマルコが作ったカウスリップのワインを飲んで、まさかの中毒症状に!


個人差があるのかもしれませんがバンパネラの体質に合わない飲食物があること自体驚きでしたし、エナジーが減って命に関わるなんて本当にびっくりでした。


私は最初、誰かがグラスに何か入れたのかなと思ったのですが、エドガーが何に弱いか人間が知るはずはないし第一動機がないし、ブラザーがエドガーを殺す目的で来たとは思えないし、偶発事故なんですよね?
想定外にパトリシアの祖母を殺す結果になりましたが、このことが何か問題を引き起こすのでしょうか。


ちなみにカウスリップは薬用にも食用にも使われるハーブで、花から作ったシロップを発酵させてワインにするそうです。


・*・・*・


そのほか次号以降に関係しそうなことのメモ。


切り裂きジャック


1888年8月末から11月にかけてロンドンで発生した娼婦ばかりを狙った連続猟奇殺人事件。
この「秘密の花園」が1888年9月から89年春頃までの話になると思われるので、時期的にドンピシャです。
現在も未解決なのでパトリシアの夫が関わっていることはないでしょうが、面白い一致ですよね。


でもパトリシアの夫の顔の引っかき傷はどうしたんだろう?
女性かネコにやられたのかな。


クエントン館の幽霊


メリッサの死後に館に出るようになったという幽霊。
絵ではメリッサのような女性の姿をしています。
マルコ以外の使用人が館に住まなくなった理由がわかって、なるほどでした。


画商のホルベイン氏からの手紙


毎年この時季に届くらしい手紙。
どのように物語と関わってくるのでしょうか。


・*・・*・


秘密の花園」も次回で Vol. 5。
「春の夢」が連載6回、「ユニコーン」が5回だったことを考えると、そろそろ終盤に差しかかってくるのでしょうか。
でも、まだまだ読んでいたい~!
萩尾先生、一気にまとめなくて結構ですので1回でも長く続けて頂きたいです!


なんて思っていたら、小学館のサイトにフラワーコミックス『秘密の花園 1』が11月10日発売という告知が出ました。
これって Vol. 5 か 6 までを第1巻として、続きの第2巻も出るということですよね?
わ~、長編になるのかな ♪


言い換えれば Vol. 5 か 6 で一旦休止になるのかもしれませんが…。
とにかく次回も楽しみです!

 

 

(68)「秘密の花園 Vol. 3」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


前回アーサーの協力のもと、眠り続けるアランを無事に秘密の小部屋に寝かせたエドガー。
翌日、パトリシアが兄と一緒にアーサーを訪ねて来て…というところからの「秘密の花園 Vol. 3」です。


扉絵はこちら!

 

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小学館『flowers』2020年9月号より。下も同)


妖しい夜の森をさまようエドガーとアラン。
実は私、幼少期から蛾が苦手でして、背景は極力見ないようにしています(笑)
エドガーの服は前号から引き続き今号でも着ているアーサーが子どもの頃の服ですね。
アランもジャケットがお揃い。
半分眠りながら手を引かれていますが、扉絵だけでも目が開いててよかった。


Vol. 3では主にアーサーとパトリシア、アーサーとドミニクの関係が語られました。
そこで始めにこの2つを簡単にまとめたいと思います。


・* アーサーとパトリシア *・


アーサーとパトリシアは同い年のまたいとこで、祖母同士が姉妹であるとわかりました。
親族の名前が多くて混乱してきたので、ちょっと整理してみます。


【アーサーのクエントン家(準男爵家)】


グレース(曾祖母)

チャールズという息子を1831年コレラで亡くす

1850年頃、チャールズの顔に似せてランプトンの模写を描かせる


グロリア(祖母/Vol. 1 ではグローリア)

チャールズの妹。アリスと姉妹

庭のバラ園に手を入れた人


メリッサ(母)

グロリアと共にバラ園に丹精を込める

夫のグローブ氏に愛人がいることが発覚して離婚。1年後に自殺

グローブ氏は離婚後ロンドンに住む


アーサー

13歳からロンドンの寄宿学校に入る

パトリシアが16歳で結婚するまで帰省の折に会う。将来はプロポーズしようと思っていた

在学中に両親が離婚

1年後に母が自殺。当時17歳(Vol. 1 では18歳)

1879年ケンブリッジ大学を卒業後ロンドンで偶然パトリシアに会い、小犬のダ・カーポとフォルテを引き取る

1888年9月、館を訪ねて来たパトリシアと9年ぶりに再会


【パトリシアのバンクス家(メリッサから「農民」と言われる家)】


アリス(祖母)

アーサーの祖母の姉妹

孫のパトリシアが16歳の時、夫のバンクス氏と共にクエントン家にアーサーとパトリシアの縁談を持って行くがメリッサに拒絶される。このことはアーサーもパトリシアも知らなかった


パメラ(母)


パトリシア

アーサーと同い年

パトリックという兄がいる

アーサーが好きだったが16歳で結婚しロンドンに住む

1879年にロンドンでアーサーに再会した時、子どもが2人いた


パトリシアは外見が華やかで美しいだけでなく、ドミニクの詩を笑って傷つけたことを後悔したり、小犬の貰い手を探して奔走したりと優しい人ですね。


・* アーサーとドミニク *・


ドミニクはクエントン家の庭師夫婦の息子でした。
年齢ははっきりわかりませんがアーサーと同じか少し下のように見えます。
吃音があり、読み書きが好きな優しい子。


アーサーは小さい頃、毎日のように庭でドミニクと遊んでいました。
一度ランプトンの絵を見せるために居間に連れて行き、母に説教されます。


ドミニクもまたパトリシアに恋していました。
アーサーが14歳の頃、ドミニクがパトリシアに捧げる詩を作ります。
それが気に入らないアーサーはパトリシアの前で読むようにけしかけ、結果的にドミニクをひどく傷つけてしまいます。


その後ドミニクは14歳で病気で亡くなり、アーサーはドミニクの母から形見のノートを譲り受けました。


・*・・*・


パトリシアとドミニクを通してアーサーの人物像も、より鮮明になってきました。


ドミニクと遊んでいた幼少期は弱くて泣き虫。
ビクトリア時代の話だし、お母さん厳しそうですもんね。
でも、それだけが理由じゃないような気もする。
顔に大けがを負った事故のことはまだ語られていませんが何があったのでしょうか。


13歳で寄宿学校に入ってからアーサーは変わっていきます。


「ぼくは弱く小さかった
子供時代を卒業するんだ」

「強い男になって
いずれパトリシアにプロポーズするんだ」

「ぼくは いずれ準男爵(バロネット)だ
…左耳はないけど…
館も土地もある!」


もうアーサーにとってドミニクは友達ではなく使用人の息子。
だからドミニクがパトリシアに恋すること自体が許せないし、ドミニクが泣いてもみっともないと思うだけ。
階級社会とはいえ、仲良しで親切にしてもらっていたのに。


パトリシアに対しては早いうちに「好き」と伝えておけば良かったのにな、と思いますが。
顔の傷がコンプレックスで言えなかったのでしょうか。


その後、父の愛人問題、両親の離婚、母の自殺。
大学時代は狂暴かつ非情で「鬼のアーサー」と呼ばれていたといいますが、容貌を恐れられたことに加えて好きだった女性の結婚や家族のゴタゴタで自暴自棄になっていたのかなと思います。
世の中に見捨てられたという気持ち?


卒業後、行き詰まって父を殺して自分も死のうとロンドンへ行き、パトリシアと偶然再会。
引き取った犬と暮らすうちに死ぬことを考えなくなった。


そして現在に至るようですが、まだ語られていないことが色々ありそうです。
事故のこともあるし、Vol. 1 でパトリシアがランプトンの絵を「思い出の絵」と言っていたのも気になります。


エドガーが絵のモデルを務めながらカウンセラーのように言葉を投げかけ、アーサーは自分の子ども時代と向き合っていきました。


ランプトンの絵は1枚ごとに少しずつ室内から外へ移動していき、10枚目は春の庭なんですよね。
アーサーがドミニクと遊んだ思い出の庭。
この絵を描き上げた時、アーサーは心に区切りをつけることが出来たのでしょうか。


そして11枚目の「ランプトンのいない部屋」。
この最後の絵はどのような状況で描かれたのでしょうか。


・*・・*・


さて、今回はアーサーの話だけで終わるのかと思われましたが、そうはいきませんでしたね。
最後にドーンと来ましたよ。


狩りをするエドガーを久しぶりに見た気がします。
あのマフラー、きっと自分で隠したんでしょうね。


それでふと疑問が湧いたのですが。
前の記事に「眠りの時季で眠っている間の意識はどうなっているのか」と書きましたが、眠っている間のエナジーはどうなのでしょうか。


エドガーは眠っているアランにせっせとバラを運んでいますし、狩りもアランのためですよね。
アランは“気”のヒフが薄いためにエナジーが漏れて眠ってしまうらしいので、放っておくとだんだん弱っていく。
だからエナジーを送り込まなければいけないし、エナジーが新鮮なほど早く回復する、と考えていいのかな。


もっとも「アランの“気”のヒフが薄い」というのは後にファルカが言ったことなので、この時のエドガーは知らないのですが。
それにポーの村で眠っている人々はアランとは少し事情が違うような気がするんですが、どうなんでしょう。


そして最後のコマでエドガーがアランに「少しずつ獲物がやってくるよ」と語りかける「獲物」とは誰のこと?
アーサーの親族?


切り裂きジャック」の話まで出てきて何だか血なまぐさくなってきたなあと思ったら、予告のアオリはこうでした(絵は8月号の表紙と同じです)。

 

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「眠り続けるアラン。
そして訪れる村からの使者。
エドガーの周囲で運命が回り続ける――!!
必見 新展開!!」


おおっ これは必見ですね!
皆様、猛暑やコロナなどで大変ですが続きを楽しみに元気に過ごしましょう~。

 

 

記事(21)に追記しました

ヨハンナスピリッツについてドイツ在住の方からコメントを頂きましたので追記しました。
結論は間違いではなかったようです。

(21)ヨハンナスピリッツのパイの謎
https://mimosaflower.hateblo.jp/entry/2017/11/03/135231

(67)「秘密の花園 Vol. 2」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


待ちに待った「秘密の花園」の連載が再開されましたね!
Vol. 1 から1年ちょっと。嬉しいですね~ ♪


では早速、恒例の『flowers』表紙と作品の扉絵からどうぞ。

 

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小学館『flowers』2020年8月号より。下も同)


表紙は棘もいとわずバラをかき抱くエドガー。
麗しい。そしてウエストが細い!
この華奢な腰と眉の形は、もう「ペニー・レイン」扉絵風の衣装を着た明日海さん…って、毎度どうもすみません。


扉絵はとてもインパクトがありますね。
赤いバラが表紙から続いています。
中世風のコスチュームで、まるで物語の一場面のよう。
紋章のようなものは何でしょうか。
この扉絵については他にも気になることがあるので後でまた書きます。


・*・・*・


それでは物語の感想を。


1ページ目はカラーで、眠るアランと、それを見守るエドガー。
アランの寝顔が幻想的な色合いで美しく、そこにエドガーの「夢を見てるの?」というセリフが被さって、私は何となく「バルバラ異界」を思い出してしまいました。
もっとも私は「バルバラ異界」をずいぶん前に1度読んだきりなので的外れだったら申し訳ないですが。


クエントン館に、エドガーからの手紙を受け取った後見人の弁護士・ウインクル氏が到着。
…と思いきや、現れたのはシルバーでした。


シルバー、活躍しますね~!
「春の夢」「ユニコーン」より顔がふっくらして若く見えるのは、エナジーを補給したばかりだったから?
それとも、もっと古い時代の話だからでしょうか。
この「バンパネラの見た目年齢問題」、私にはいまだに謎なんですよね。


今号ではシルバーの名字も判明しました。
シルバー・ピーターバラ


で、今度は「バンパネラの名前問題」なんですが、私は前に「一族の名前には『ポ』が付くんだよ」と教えてもらったんです。
ポーツネル、ポリスター、ポラスト。確かに。


でも儀式をしていない人はトワイライト、クエントンと「ポ」が付かないので、儀式の時に改名するのだろうか?なんて勝手に想像していたのですが。
ピーターバラも「ポ」が付かない。
じゃあイニシャルが「P」ならいいのかというと、おそらく一族と思われるウインクルは「P」すら付かない(ものすごくどうでもいいことですが、Vol. 1 ではウィンクルでした)。


そこで現時点での結論は


「一族の名前に特に決まりはない」


ということでいかがでしょうか。
これでもしウインクル氏のファーストネームがポールとかだったり実は人間だったりしたら、また頭を抱えそうですが…。


・*・・*・


さて、シルバーは族長のクロエからエドガーを説得してポーの村に連れて帰るよう言いつかって来たのでした。
エドガーは後見人がポーの村と通じていたことに大きなショックを受けます。
更に一族についてまだまだ知らないことや、自分の力だけではどうにもならないこともあると思い知らされます。


私が今号で一番印象に残ったのは、男爵夫妻とメリーベルを失った時の話を蒸し返されたエドガーが「ぼくの前で二度とその話をするな 妹の名を出すな!」と叫ぶ場面で、この頃はエドガーの心の傷はまだ生々しかったのだなと思いました。
シルバーと話しながらカーテンにくるまり、最後はカーテンを閉めて足を投げ出して座っている姿は、どうしていいかわからない小さな子どものように見えました。


でも考えてみれば男爵夫妻とメリーベルが突然消えてしまってからまだ9年しかたっていないのですよね。
120年以上も一緒に暮らしてきたのに。
エドガーにとって3人を失うことは天涯孤独の身になるということで、特にメリーベルの喪失は生きる意味をなくすことでもありました。


「ペニー・レイン」でアランの目覚めを今か今かと待っているエドガーは、そんな不安やさびしさ、心細さでいっぱいでしたし、幼いリデルを殺さなかったのもメリーベルを重ねたからかなと思います。


そしてアラン、リデルと共に旅を始めてからは子どもだけで生きる難しさに直面したことでしょう。
いくら世慣れているとはいえ、それまでの人生は男爵夫妻の庇護のもとにありました。
ずっと男爵に反発してきたけれど実際には守られていたこと、子どもでは不自由が多いことを痛感したのではないでしょうか。


ウインクル氏との関係はまだよくわかりませんが、エドガーにとって唯一信頼できる大人だったのではないかと思います。
その相手に裏切られて自分の甘さ、未熟さに気づき、シルバーの言葉が余計にこたえたのかもしれません。


でも、ここから先はいつもの冷静なエドガー。
やむをえずアーサーの助けを借りようと決めますが、慎重に事を進めます。


一方のアーサーも、エドガーの一族が普通の人間と比べて実に変わっていると聞いてエルフ一族を思い浮かべるところは、さすがイギリス人。
いや、こういう発想をすること自体が変わり者の証拠かもしれませんが。
これからアーサーがどのように一族の真実を知っていくのか、なぜ仲間に加わるのか、明かされるのが楽しみです。


・*・・*・


個人的に今号で一番興味深かったのは、新シリーズで新たにわかった一族の「眠り病」でした。
シルバーの話によれば「眠りの時季」は不意にやってきて長く続く。
だから安全に眠れる村が必要――。


この「眠り病」の正体はまだ謎ですが、単に眠くなるというだけではないですよね?
「春の夢」でアランが「眠りの時季」に入っている時、ファルカが言っていました。


「あんたは “気” のヒフが薄いんだよ
すぐシューシュー漏れちまう
また治してやるよ 安心しな」


そして1週間ほどかけて少しずつ “気” のヒフを塞いでくれたおかげでアランは元気になりました。
つまり “気” のヒフが薄いからエナジーが漏れて眠くなる、ということのようですね。
リーベルも半年、1年と眠ることがあったそうですが、きっとアランと同じ症状なのだろうと思います。
2人は体質的に似ていますし。


でも「春の夢」でエドガーは「…ポーの村にいる一族は…そのほとんどは…バラの世話をするほかは眠り続けているんだ…」と言っていました。
皆が皆、“気” のヒフが薄いのでしょうか?
そうでないならエナジーを無駄に消耗しないように本能的に眠くなるとか、別の原因があるのかも。


それと、眠っている間の意識はどうなっているのでしょうか。
今号の1ページ目のアランを見ていると、夢の中でどこかと交信しているのではないかとも思えるのですが…。


ポーの一族の「眠り病」がルチオ一族の「眠れない病」と対になっているのも面白いところ。
この2つには何か関連がありそうですよね。
どちらも新シリーズの鍵の1つだと思うので、これからも注目していきたいです。


ところで、突然ですがここで冒頭に載せた扉絵の話に戻りたいと思います。
実は私の妹が、この絵をグリムの「いばら姫」みたいだと申しまして。


「いばら姫」が「?」の方も、ペローの「眠れる森の美女」と言えばおわかりになるのではないでしょうか。
こちらを原作にしたディズニー映画もありますし。
ちょっと調べてみましたら、「いばら姫」も「眠れる森の美女」も出典は同じ昔話ですが細部に違いがあるそうです。


例えばペローとディズニーの「眠れる森の美女」では王子が必死にイバラを切り開いて(ディズニーでは竜とも戦う)城に入りますが、グリムの「いばら姫」では王子が来た時にちょうど100年の呪いが解けてイバラがひとりでに道を空けます。


また、グリム版とディズニー版では王女は王子のキスで目を覚ましてハッピーエンド。
これに対してペロー版では、ちょうど100年の時が過ぎたため王女は自分で目覚めます。
そして王子と結婚しますが、その後に怖~い続きが…。


どうしてこんな話を長々とするのかというと、「いばら姫」でも「眠れる森の美女」でもいいのですが、「王子がイバラを切り開き(障壁を乗り越え)、眠り続ける王女を目覚めさせる」という図式が、このポーの新シリーズに通じる気がするからなのです。


「眠りの時季」に入ったアランを守ろうと戦うエドガー。
1976年以来、炭のような状態で眠り続けているアランを何とか復活させようと必死なエドガー。


そう考えると今号の扉絵が新シリーズ全体を象徴しているように見えてきます。
襲いかかる赤いバラが、ポーの村でフォンティーンに絡みついているバラの根や咲き狂う花を思い起こさせますし、エドガーを連れ戻そうとするクロエの姿とも受け取れます。
もちろんこれは私の勝手な妄想で、萩尾先生はそんな意図で描かれたわけではないでしょう。
でも色々と想像するのは楽しいですね。


・*・・*・


そのほか気になったこと。


沢山ありますが、何と言っても驚いたのはこれ。


エドガーは軽い催眠術を使える!!


いやー、びっくりしましたね。
ポーの誰もが催眠術を使えるわけではないと思うのですが、大老の直系ゆえ?
1944年の時点で「目を使う=テレポートする」という大技も身につけているし、他にも隠された能力があるのかも。


私は最終的に大老エドガー vs. フォンティーン&バリー=ダイモンという大老とその直系同士によるバトルが繰り広げられるのではないかと思っているのですが、フォンティーンもバリー=ダイモンも不思議な(不気味な?)力を持っていそうなので、もし本当にバトルになったらすごいでしょうね。


次に気になるのは、犬のフォルテがアランが眠っている小部屋までついて来たこと。
あれほどマルコに外に出すなと言われていたのに。
これって何かの伏線ですかね?


フォルテは9年前にパトリシアがアーサーにあげた犬なんですよね。
9年前と言えばエドガーがアランを仲間にした年。
これは単なる偶然か?
更に犬と言えば、私は「ユニコーンVol. 3」でアランが犬に怯えていたのが今も引っかかっているんですよ。


まあ、ここまで来るとさすがに考えすぎかもしれませんが…。
ポーを読んでいると何でも伏線かと思えてしまって困ったものです。
でも先ほども書きましたが、こうやってあれこれ考えるのが楽しいんですけどね ♪


あっ、今回はエディスとロビン・カーに続いてリデルがチラッと出ましたね!
新シリーズに本人達が登場することはなさそうですが、こうして回想シーンで語られるだけでも嬉しいです(もし登場したらもっと嬉しいけど)。
他のキャラクターも出てくれるといいなあ。


絵の面では黒と白のコントラストが印象的なコマが多くて旧シリーズを思い出しました。
エドガーとシルバー、エドガーとアーサー、2人だけで話す場面が何ページも続きましたが、カーテンの花柄や庭のバラ、木立など背景に変化があって飽きさせないのがすごいなと思いました(偉そうですみません)。


そして私が独断で選んだ今月のエドガーのベストショットはこちら!

 

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夜の闇の中、ランプの灯りに照らし出された妖しく美しい顔。
セリフがまたエドガーらしくていいですよね。


さてさて、次回はドミニクという少年の話が語られるのでしょうか。
この子は庭師の息子なのかな。全然違う?
パトリシアとアーサーの関係も気になりますね。
ウインクル氏は登場するのか。
エドガーはアーサーに更なる秘密を告げるのか。
アランは?
シルバーは?


うーん、目が離せません!


・*・・*・


Vol. 1 の感想です。よろしければどうぞ。
(52)「秘密の花園 Vol. 1」
https://mimosaflower.hateblo.jp/entry/2019/06/09/160524

 

 

記事(30)(33)(35)に画像を追加しました

ポーの一族」イラスト集に画像の追加と追記をしました。
どうぞご覧くださいませ。


(30)予告・表紙・合同扉絵④
「小鳥の巣」第2話予告カット+完全バージョン(テオ)https://mimosaflower.hateblo.jp/entry/2018/03/02/153107


(33)予告・表紙・合同扉絵⑤
エヴァンズの遺書 前編」目次カット+完全バージョン(アーネスト)
https://mimosaflower.hateblo.jp/entry/2018/05/01/072723


(35)予告・表紙・合同扉絵⑦
「一週間」予告カット完全バージョン
「エディス 中編」予告カット完全バージョン
ブログに載せていないカットについての追記
https://mimosaflower.hateblo.jp/entry/2018/05/01/075718

(66)「ポーの一族 番外編 月曜日はキライ」

先日発売された『flowers』7月号に「ポーの一族」の4ページの番外編「月曜日はキライ」が掲載されました。
番外編とはいえ「秘密の花園 Vol. 1」から1年ぶり。
それにポーシリーズの番外編は初めてで(「はるかな国の花や小鳥」は番外編ではないと思うので)、もう「待ってました!」という感じです。


このブログではポー新シリーズの感想は特にネタバレ満載なのでショート番外編くらいはネタバレせずに書きたいと思ったのですが、やっぱり無理でした。
そんな訳で未読の方はご注意くださいね。


前の記事(65)にも載せましたが予告カットはこちらでした。

 

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小学館『flowers』2020年6月号より)


予告が「ポーの一族 秘密の花園 番外編」なのでてっきり1888~89年のクエントン館が舞台かと思ったのですが、全然関係なかったですね。
今月号の表紙にも「秘密の花園」と書かれているものの、作品ページは「ポーの一族 番外編」となっていて、もっと後の時代のお話でした。
いつ頃かはっきりとはわかりませんが1960年代か70年代でしょうか。


そして私は予告カットと『芸術新潮』のインタビューからエドガーが料理したりするコメディータッチの内容を想像していたのですが、またまた良い意味で裏切られました。
まさかアランがメインの話とは!


アランファンとしては、それだけで嬉しい。
それに、きれいな絵が多くて嬉しい × 2。
特に髪がいい感じで、こういう横分けで外にハネていなくて流れるようなスタイルが個人的には一番しっくりくるんですよね。
更に「アランってやっぱり、いい子」と思えて、嬉しい × 3でございます。


さ、前置きはこれくらいにして本題に参りましょう。


・・・・・・・・・・・・


見知らぬマダムから宝石のついた指輪をもらったアラン。
「ぼく誰かに売っちゃいますよ」と言うと、マダムは言います。


「いいえ 声でわかるわ
育ちのいい わがままな男の子ね
家に帰って そこらの引き出しにしまって忘れちゃうのよ
でも10年後に引き出しのスミに転がってるのを見つけて
あれ なんだっけ これ?と考えるんだわ
ね? そういうのステキじゃない?」


マダムは当然アランを普通の少年だと思っているので10年後の姿をイメージしています。
その絵を見ると、あ、24歳のアランてこんな感じかも、と思います。
もしかしたらアランも一瞬だけ24歳の自分を想像したかもしれません。


それから数か月後にアランが再会した時、幸せそうな有閑マダムに見えた人は、実は少し違っていたのだとわかります。


マダムはもう自分のことを忘れている。
勧めたローズヒップティーを気に入ってくれたけれど、彼女の中に10年後の自分はもういない。


家に帰ってアランはエドガーに言います。


「…もう月曜はキライだ…」


その後、アランは指輪をどうしたのでしょうか。
月曜日にはマダムを思い出したりしたのでしょうか。


こんな風に彼らは時々ゆきずりの人から言葉や気持ちや物を受け取ったり、あるいは与えたりしながら変わらぬ日々を生きているのだろうと思いました。


「彼らのはたを時はゆく
彼らにとって時はそのまま止まっている
かわってゆくのは周囲であり
わたしたちのほうなのだ」
(「ランプトンは語る」より ジョン・オービン)


・・・・・・・・・・・・


今回エドガーは出番が少ないですが、相変わらずのエドガーです。
少ないセリフの中で私のベストは


「ふん きみは自分が
かわいいって自信があるから
世の中に甘えているんだ」


これねー!
萩尾先生はエドガーとアランのおしゃべりを聞きながら作品を描くとおっしゃっていますが、先生の妄想の中でエドガーはこれを何度もブツブツ言ってるんじゃないかという気がします。


アランは本当に可愛い。
ただ、旧シリーズでも確かに「小鳥の巣」で小悪魔的だったけれど直接「可愛い」と形容されたことはなくて、新シリーズになってから急に強く前面に出てきた気がするんですよね。


宝塚版でエドガーがアランを選んだ理由に「生意気だが純粋で汚れていない」というセリフがあり、先生はこのセリフに感激して作品に使っていらっしゃるそうです。
(情報源は「萩尾望都作品目録」様の2020年2月9日付ニュース。「『ポーの一族』と萩尾望都の世界」と題された講演の詳細なレポートです ↓ )
https://www.hagiomoto.net/news/2020/02/post-338.html


ユニコーン」でエドガーはアランを「ピュア」「無垢(イノセント)」と言っていますよね。
それとセットで「可愛い」も新シリーズの既定路線になり、同時にストーリー上のポイントにもなっているのかなと思います。


「可愛いって自信があるから世の中に甘えてる」。
まさにその通り!
本人は無自覚みたいですけどね。


・・・・・・・・・・・・


他に気になること。


まず、この作品の舞台はどこ?
下のコマの背景がヒントだと思うのですが…

 

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(同7月号より。以下同)


もし実際にあるとしたら、旅行好きの方ならパッと見てわかるような有名な場所でしょうか?
おわかりになる方がいらっしゃいましたら、ご教示頂けると嬉しいです。


それからエドガーの机にある、この置物なんですが…

 

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右のブタは何か意味がある物なのでしょうか。
左の方は何なのでしょう?


そして服。
アランはずっとシンプルなシャツと大きく開いたVネックの無地のセーターを着ていますね。
「春の夢」と「ユニコーン」でも着ていたので、これが新シリーズの定番なのかな。
…と思ったら、今回エドガーも着てる。
え? ペアルック?
スーツと制服以外でペアって初めてじゃないですか?


しかも最後のコマではアランがさりげなくエドガーの膝枕。
これが日常なら、2人は空白の40年間に前より仲良くなってたってことですかね。


・・・・・・・・・・・・


私はこの作品を読み終わった時、8ページ位あったような気がしたのですが、実際にはたった4ページしかなくて驚いてしまいました。
ディテールで楽しませつつ、アランの心情、マダムの人生、エドガーとアランの日常など多くを想像させてくれた素敵な番外編でした。


さて、来月号はいよいよ「秘密の花園」連載再開!
予告はこちら。

 

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「アランの復活を願うエドガー。
その運命の旅の行く先は――!?」


う、美しい!
青いセーラー服姿のエドガーは「春の夢」の表紙にも描かれましたけど、また感じが違いますね。

 

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「アランを求めるエドガーの彷徨。
秘められた物語がふたたび語られる――!!」


エドガーの手の光はエナジーでしょうか。


1年ぶりにどんな話が展開するのかとても楽しみですね!
あ、Vol. 1 を復習しておかなくちゃ。


それで思い出したのですが、この記事のはじめに載せた番外編のモノクロ予告、アランが釣り上げられてますけどVol. 1 で川に落ちてエドガーに救助されたのと関係あるんでしょうかね?


最後に一言。
先生、来月号の予告の絵が明日海さんと柚香さんに見え過ぎるんですが。
ありがとうございます ♪


~2020. 6. 11 追記~

 

作品の舞台についてsatokoさんからご教示を頂きました。
アランの背景に見えるのはロンドンのケンジントン・ガーデンズにあるアルバート・メモリアル(アルバート公記念碑)とのこと!


検索してみましたら、とても大きくて立派な記念碑なんですね。
ヴィクトリア女王の夫、アルバート公の功績を称えるモニュメントなのだそうです。
satokoさん、どうもありがとうございました!!
アランとマダムが出会ったカフェのあるホテルは、その近くかもしれないですね。