ポーシリーズには年代が特定されていない作品があります。
発表順に「すきとおった銀の髪」「ピカデリー7時」「はるかな国の花や小鳥」「一週間」の4つです。
これらが大体いつ頃の話なのかわかれば、時間軸が定まってポーの世界を更に楽しめるのではないかなあ…
そう思っていると『flowers』2017年3月号に「ポーの一族ヒストリー」として年表が掲載されました。
嬉しいことに、そこには「すきとおった銀の髪」の年代も載っていました。
「18世紀後半~19世紀前半 チャールズ少年、メリーベルと出会う」
「すきとおった銀の髪」は14歳のチャールズがメリーベルに出会って恋をし、30年後に再会する物語ですから、2人が初めて会うのが18世紀後半、再会するのが30年後の19世紀前半ということです。
編集部の「『すきとおった銀の髪』はこの特集に当たり、著者に確認」という注も付いているので、これで確定でしょう。
実は「すきとおった銀の髪」の年代を記したものは、『flowers』の前にも2つありました。
1つは『別冊少女コミック』1973年3月号。
これは「メリーベルと銀のばら」第3話(最終話)掲載号で、作品の欄外に萩尾先生手書きの「小鳥の巣」までの年表が載っています。
先生はこう書かれていました。
「すきとおった銀の髪――1820~1850」
『flowers』の年表より20年以上遅いですね。
もう1つは1978年に徳間書店から出版された『テレビランド増刊イラストアルバム⑥萩尾望都の世界』で、「ポーの一族 年表」にこうあります。
「1815 チャールズ、メリーベルと会う」
「1845 年老いたチャールズ、変わらぬメリーベルと会う」
こちらは『別冊少女コミック』より5年ずつ早くなっています。
『別冊少女コミック』の年表が書かれたのが第1シリーズ連載中なのに対して、『テレビランド増刊』の年表は第2シリーズ終了後。
第2シリーズの「エヴァンズの遺書」が1820年の話ですから、それとの整合性を取るために早められたのかもしれません。
『flowers』は萩尾先生に確認した最新の年表ですので、異論を差しはさむ余地はありません。
ただ、チャールズやメリーベルのファッションに注目すると『テレビランド増刊』の年代が絵に一番近いように感じられて、個人的にはちょっと意外な気がしています。
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残念ながら『flowers』の年表でも「ピカデリー7時」「はるかな国の花や小鳥」「一週間」については「時代不詳」とされています。
そこで次のページからは、これら3作品がいつ頃の話なのかを、ざっくりとですが考えてみたいと思います。
(初投稿日:2017. 4. 4)
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2018. 3. 2 追記
「(30)『ポーの一族』イラスト集~予告・表紙・合同扉絵④」に『別冊少女コミック』1973年3月号の年表の画像を載せました。
「小鳥の巣」第1話の予告カットに含まれています。
(30)「ポーの一族」イラスト集~予告・表紙・合同扉絵④ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
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2018. 7. 21 追記
2004年4月にNHK BSで放映された「BSこだわり館 THE少女マンガ!~作者が語る名作の秘密『ポーの一族』」が、先日LaLa TVで再放送されたので視聴しました。
番組では萩尾先生ご自身が「ポーの一族」の創作秘話を語ってくださいました。
先生のご出演場面とは別に年表が挿入されて、そこにはこう書かれていました。
「1815 すきとおった銀の髪」
チャールズとメリーベルが初めて会ったのが1815年という意味だと思いますので『テレビランド増刊』と同じです。
年表の作成に当たって先生に確認を取っているでしょうから、2004年の時点では「1815~1845」だったということですね。
それがなぜ『flowers』の年表で「18世紀後半~19世紀前半」に早められたのでしょう?
ひょっとして、これからそのあたりの年代の新作が描かれる構想があって、その兼ね合いで、という可能性も考えられますが…。
もし、そこまで遡る作品を読めたら楽しいですね。
ところで「BSこだわり館 THE少女マンガ!」は「ポーの一族」ファンにとても興味深い番組でした。
新作に合わせて再放送してくれたLaLa TVに感謝です!
見逃した方のために、また放映されるといいですね。なるべく全国で見られる局で。
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2019. 3. 3 追記
このたび小学館より刊行された『ポーの一族 プレミアムエディション』の巻末には、『flowers』2017年3月号の「ポーの一族ヒストリー」を加筆修正した「ポーの一族History」が付いています。
その中で「すきとおった銀の髪」の年代が再び変更されました。
「1815ごろ チャールズ少年、メリーベルと出会う」
『テレビランド増刊』と同じに戻されたのかなと思いましたが、「ごろ」が付いているところが違いますね。
つまり、
「すきとおった銀の髪」=1815年頃~1845年頃
再度変更された理由はわかりませんが、これで確定かなと思います。
上の追記の中で、『flowers』の年表で早められたのはこのあたりの年代を舞台にした新作の構想があるからかもしれないと書きましたが、そうではなかったようです。
ちょっと残念?