亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(48)『ポーの一族 プレミアムエディション』

このたび萩尾先生のデビュー50周年を記念して小学館より『ポーの一族 プレミアムエディション 上下巻』が刊行されました。
刊行が発表された時から宣伝文句がすごかった。


「すべての原稿を再スキャンし最新技術で印刷」
「繊細な原画の描線までクリアに再現!」
「カラー原稿はそのままカラーで印刷!」
「著者により今回のために修正されたページを含む」
「B5判のワイドサイズ」


もう、いやが上にも期待が高まるというものです。
早々に honto に予約していたら発売日より2日も早く届きました!
雑誌と同じサイズなので、ずっしりと重量感。
ウキウキしながら箱を開けると、銀箔をあしらった美しいカバーの本が現れました。

 

上巻カバー

『ポーの一族 プレミアムエディション』 (上巻) (コミックス単行本)

  下巻カバー

『ポーの一族 プレミアムエディション』 (下巻) (コミックス単行本)

 

ファンにはおなじみの1枚絵を2つに分けたものですね。
横に並べると一続きの絵になります。
カバーを外すと、表紙がまた嬉しいんですよ。
表も裏も本編内の素敵な1枚絵なんです。
実に心憎い!


中の印刷も謳い文句通りの美しさ!
特にカラーは『パーフェクトセレクション』と比べても鮮やかです。
例えばこちらは「はるかな国の花や小鳥」の扉絵。


萩尾望都パーフェクトセレクション7』

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『プレミアムエディション上巻』

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微妙な差ですが『プレミアムエディション』の方が陰影に富んでいるのがおわかり頂けるでしょうか。
2色刷りはもっと差が大きいです。
上の扉絵の裏面に当たるページがこちら。


萩尾望都パーフェクトセレクション7』

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『プレミアムエディション上巻』

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わが家のスキャナに問題があるようで『パーフェクトセレクション』の方は本の通りの色が出ていなくて申し訳ないのですが、印象がかなり違いますよね。
モノクロも点描などは比べやすいかなと思います。
画像を載せたかったのですが、はっきりわかるほどには違いが出なかったのでごめんなさい。


本のサイズが雑誌と同じというのも魅力です。
何と言っても細部までしっかり見える。
線がクリアで迫力があり、絵がこちらに迫ってくるように感じられるし、先生のペンタッチの変化が見られて興味深いです。


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『プレミアムエディション』で更に嬉しいのは、上下巻とも巻末に予告カットを中心としたイラストギャラリーが付いていること!
私は以前『flowers』編集部に「予告カットを含む『ポーの一族』の画集を出してください」という要望書を出したことがあって、まさに待望の!イラストギャラリーです。

 

点数は決して多いとは言えませんが、予告カットは行方不明になってしまった原稿もあるそうなので、先生の手元に残っているものを集めて掲載してくださったのかなと思います。
萩尾先生、小学館様、どうもありがとうございました!
初めて見るカットもあるし、掲載誌ではトリミングされた部分まで見られるのでとても嬉しいです。


そして巻末には年表「ポーの一族History」も付いています。
これは『flowers』2017年3月号(「春の夢」Vol. 2掲載号)に載っていた「ポーの一族ヒストリー」をベースに、その後発表された「春の夢」Vol. 3~6、「ユニコーン」Vol. 1~3の内容を新たに盛り込んだものです。
『プレミアムエディション』の作品は年代順ではないので、ポーを初めて読む方はこの年表を見ながら読むといいのではないでしょうか(個人的には『パーフェクトセレクション』の発表順に読むのがお勧めですが)。


『flowers』版は老ハンナの消えた年と大老のルビが間違っていたのですが、今回しっかりと修正されていました。
でもなぜか修正して逆に間違いになってしまったところも。
オービンさんの会合に参加したのはロジャーとシャーロッテだけなのに、ヘンリーも入っています。
下にヘンリーの絵があるので、うっかり入れてしまったのかもしれないですね。


それよりも私にとって事件だったのは、「すきとおった銀の髪」の「チャールズ少年、メリーベルと出会う」の年代が再び変わっていたことでした。
従来はチャールズがメリーベルに出会ったのは1815年、再会したのは1845年とされていましたが、『flowers』版では「18世紀後半~19世紀前半」と早まり、「著者に確認」という注まで付いていました。
それが『プレミアムエディション』では出会ったのが「1815ごろ」となっています。
元に戻ったのかなと思いましたが「ごろ」が付いているので全く同じではないのですね。
変更の理由はわかりませんが、この年代で落ち着くのではないかと思います。


(「すきとおった銀の髪」の年代にご興味のある方は、よろしければこちらの過去記事もどうぞ。)

(11)この作品は、いつ頃のお話?~①「すきとおった銀の髪」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記


『プレミアムエディション』は先生の修正が加えられるというのも話題でした。
どこが修正されたんだろうと思っていたら、1つ見つけました。
「ランプトンは語る」の最後から2ページ目の最後のコマです。


萩尾望都パーフェクトセレクション7』

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『プレミアムエディション下巻』

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『パーフェクトセレクション』ではネクタイの下半分がペン入れされていなかったのですが、ちゃんとペン入れされました。
このコマはアランの表情が切なくて好きなだけに、未完成なのが前から気になっていたので嬉しいです。
他はどこが修正されているのでしょうね?
1ページずつ見比べればわかるかもしれませんが、そんな労力は私にはとてもとても…。
見つけられた方は教えて頂けると嬉しいです。

 
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今回、本の帯と挟み込まれていたチラシにデビュー50周年記念「ポーの一族展」のお知らせが出ています。
今更気づいたのですが惹句が「『ポーの一族』を中心に、貴重な原画で創作の軌跡をたどる」なんですね。
「『ポーの一族を中心に」!
タイトルが「ポーの一族展」なのでポーの原画だけだと思っていましたが、他の作品の原画も展示されると考えていいんですよね?
これはますます楽しみです!
今のところ7月25日(木)~8月6日(火)東京・松屋銀座、12月4日(水)~16日(月)大阪・阪急うめだ本店のみですが、他の会場にも巡回されるといいですね。


今月末には「11人いる!」ムック本の復刻版も刊行予定。
トーマの心臓」の扉絵探しも進行中だし、50周年記念企画は他にも予定されているようです。
小学館様、どんどん盛り上げてください。
期待しています!