亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

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(55)松屋銀座「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」に行ってきました

今年は萩尾先生のデビュー50周年。
大規模な原画展を開いてほしいなあと願っていたところ、嬉しいことに実現しました。
「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」。
タイトルを見るとポーだけかなと思いますが、「トーマの心臓」をはじめとする他の作品の原画も出展とのこと。
その第1弾が7月25日(木)から8月6日(火)まで松屋銀座にて開催されました。

 

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チラシ表裏


私は7月29日(月)の昼と30日(火)の夜に行ってきました。
両日ともかなり混んでいて人の流れが途切れることがありません。
男性も女性もオールドファンから若い方まで年齢層が幅広くて、特に30日は平日の夕方以降だったので勤め帰りと思われる方の姿が目立ちました。


29日に撮影した会場入口の写真です。
お花が正面に置ききれなくて横の方までずっと続いていました。

 

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会場に入ると右側の壁に「ポーの一族によせて」と題された萩尾先生のメッセージが掛けられていました。
ポーシリーズを再開しての先生のコメントはすでに色々なところで読んでいましたが、このメッセージには改めてジーンとしてしまいました。
後半をメモしてきたのでご紹介します(図録には載っていません)。


「あるときふと、物語の扉を開けたら、エドガーとアランが『ああ、やっと来たね?』と振り向いてくれました。
驚きました。
ずっと待っていてくれたのです。
(中略)
彼らには話したいことがたくさんあるらしく、おしゃべりが止みません。
彼らが待っていた時間を埋めるべく、今後もエドガーとアランの物語を描いていこうと思います。
彼らの内緒話や夢の告白に、耳を傾けながら。」


先生、彼らだけでなくファンはみんな待っていましたよ。


メッセージの左、つまり入口の正面には白いカーテンが掛かっています。
このカーテンが「ポーの一族」の世界への素敵な導入になっていました。


カーテンの中央にフランス窓のシルエットが浮かんでいて、床にその影が伸びています。
観音開きの窓は片方が少し開いています。
突然、風の音。
木の葉(花びら?)が舞うシルエット。
揺れるカーテン。
窓が開く音。
床に伸びた窓の影に人影が重なって、カーテンにこの絵 ↓ が映し出されます。

 

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(『萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』2007年 小学館より。以下同)


これに続く絵が1コマずつ映され「きみもおいでよ」のあたりで床の人影が消える。
そして、この絵 ↓ を最後に

 

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風の線と舞う木の葉が映されて消えるのです。


「これから『ポーの一族』の世界に入りますよ」という気分が高まったところでカーテン前を左へ進むと、いよいよ展示会場です。


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 Ⅰ 『ポーの一族』の世界
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ここは旧作のゾーンで新作は別のゾーンになります。
チラシにポーだけで200点以上と書かれていましたが、本当にすごい数の原画で圧倒されるほどでした。
印象的な絵はほとんどあったのではないでしょうか。


原画は作品の発表順、ページ順に並んでいて、各作品のはじめに解説のプレートがあります。
また、原画は黒いパネルの上に展示されていたのですが、ところどころ黒パネルに白抜きでポーの絵が描かれていて、とても効果的でした。


混んでいても少し待っていれば空いた時に絵の真ん前に立って鑑賞できたので、「あの絵を見られなかった~」という残念なことはありませんでした。
むしろ「まだ先があるから、あまりゆっくりしてはいられない」という気持ち。
とにかく1972年の「1ページ劇場」から始まって「エディス」まで原画を間近で沢山見られて感動でした。


特に注目したのが「メリーベルと銀のばら」。
この作品は第1話の扉に全4話と書かれているのに、発表されたのはなぜか3話でした。
そして単行本にする時に原稿を切り貼りして大幅に加筆されたのです。
例えば、こちらの絵は

 

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単行本では1ページ全体の大きな絵ですが、掲載誌ではこの部分だけでした。

 

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ですので原画をよく見ると、シーラと男爵の顔の周囲だけ貼り付けられているのがわかります。
「メリーベルと銀のばら」はこのような切り貼りが多いので、今後別の会場に行かれる方はそこに注目して見ると興味深いのではないでしょうか。
なお、他の作品にも切り貼りはありました。


今回の原画展には予告カットも出品されていて、とても嬉しかったです。
『プレミアムエディション』に掲載された絵はすべて出ていたようです。
予告カットはパネルではなくガラスケースに陳列されていました。
思わず食い入るように見てしまいましたが、余白に先生の手書きで編集さんに向けて作品のあらすじやアオリが書かれていたのが面白かったです。
中には「等寸大でお願いします」というのもありました。
「縮小しないでください」という意味なのでしょう。


ポーの一族」の予告カットのメモでは、アランの名前が「アラン・トワイニング(本編ではトワイライト)」になっていました。
「グレンスミスの日記」の予告は掲載誌で「グレン・スミス」になっていたので誤植かなと勝手に思っていたのですが、先生のメモも「グレン・スミスの日記」「グレン・スミス・ロングバート」であることを発見!
濡れ衣でした。どうもすみません。


ポーのゾーンには庄司みづほさんという方が制作された大きな人物相関図もありました。
旧作の登場人物の名前と特徴が書かれ、それぞれの関係性が示されています。
更に作品中の印象的な言葉や、1974年の「1ページ劇場」の文言、「クック・ロビン」「Aはアップル・パイ」の原詩まで!
大変な労作ですが、残念ながら図録には載っていません。
これから行かれる方は会場でしっかりご覧くださいね。


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 Ⅱ 宝塚歌劇の世界
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宝塚で上演された「ポーの一族」を紹介するゾーンです。
衣装のみ撮影可だったので写真を撮ってきました。
このゾーンについては次の記事でレポートしたいと思います。


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 Ⅲ 『トーマの心臓』の世界
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トーマの心臓」のみならず、関連する「11月のギムナジウム」「湖畔にて」「訪問者」「残酷な神が支配する」をまとめたゾーンです。


トーマの心臓」だけでも枚数が多くて感激でした。
個人的に好きな絵はいくらでもあるのですが、「それぞれの思いは胸の奥に秘められる――」というオスカーのモノローグのページと、ユーリの「神さま 神さま 御手はあまりに遠い」「いつも いつも 生徒たちの背にぼくは 虹色に淡い天使の羽を見ていた」のページの原画を見られたのが特に嬉しかったです。


プレゼントで読者の手に渡っていた8枚の扉絵も拝めました。
退色したものもありましたが、持ち主の方々が半世紀近く大切に保管されていたことがよくわかりました。


他にも一部にペン入れされた習作や、オスカーの未発表イラストなどが興味深かったです。
「11月のギムナジウム」から「残酷な神が支配する」まで連続して見られて、これらすべてが繋がって1つの世界なのだと感じることができました。


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 Ⅳ 萩尾望都の世界――50年の軌跡をたどる――
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50年間の主要作品が並ぶゾーンです。
最初がデビュー前の高校生に時に描かれた「闇の中」なのが、すごい!
展示されていた作品は次のとおりです。


「闇の中」
「ルルとミミ」
「ケーキケーキケーキ」
「精霊狩り」
「週刊少女コミック広告」
「キャベツ畑の遺産相続人」
「とってもしあわせモトちゃん ジョニーウォーカーくんのバラのものがたり」
「この娘うります!」
「11人いる!」
「ゴールデンライラック
スター・レッド
「メッシュ」
銀の三角
「A-A′」
「4/4カトルカース」
「X+Y」
「半神」
「マージナル」
イグアナの娘
バルバラ異界
スフィンクス
「なのはな」
王妃マルゴ
ポーの一族 新シリーズ」
「バラのロンド」(描き下ろし「ポーの一族」イラスト)


作品によって少ないもので1枚、多くて6枚ほどでした。
ずらーっと並んでいる絵を見ていくと絵柄や色彩の変遷が楽しいですし、本当に多彩な作品を生み出してこられたんだなあと思いました。
個人的には、大好きな「この娘うります!」第1話の1ページ目と見開き扉のカラー原画がとても嬉しかったです。


途中のガラスケースの中に波津彬子先生が所蔵されている原画が特別公開されていました。
波津先生と実姉の故・花郁悠紀子先生が萩尾先生より贈呈されたものだそうです(花郁先生は萩尾先生のアシスタントをなさっていました)。
この会場のみの公開だそうですが図録には収載されています。
大変貴重なものを見せて頂きました。


また、仕事場を再現したコーナーには道具や服飾関係の参考書籍などが置かれていて、『芸術新潮』に載っていたランプトンの写真もありました。


出口の近くでは萩尾先生のインタビュー映像が流れていました。
図録にインタビューが掲載されているのですが、そのダイジェスト版です。
やはり文字だけよりは映像の方が先生の雰囲気が伝わってきて、いいですね。


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会場を出ると物販コーナー。
色々なグッズがありました。
私は図録の他にクリアファイルや栞、一筆箋などを買いました。
いつも実用的な文具しか買わない現実派なもので…。
と言っても、もったいなくてすぐには使えないんですけどね。
前にくじで当たったレターセットの便箋なんて、カラーコピーして使っている位ですから。
今回は「小鳥の巣」のクリアファイルが欲しかったのですが、早々に売り切れていたので代わりに同じ絵のポストカードを買ってしまいました。


図録は正式には「公式記念BOOK」で、とても上質なものです。

 

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展示されている原画がすべて掲載されている訳ではないのですが、美しくて凝った作りです。
会場で流れていたインタビューも全文収録。
聞き手は『私の少女マンガ講義』(2018年 新潮社)でも聞き手を務め、構成・執筆をされた矢内裕子さんです。
他に100問100答や作品年表も載っています。


そして図録には嬉しい別冊付録も。
これがまるっと1冊、先生のクロッキー帳なんですよ!

 

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芸術新潮』にクロッキー帳が数ページ載っていて大喜びしましたが、こちらはクロッキー帳そのもので「ポーの一族」13ページ、「トーマの心臓」10ページ、「とってもしあわせモトちゃん」「11月のギムナジウム」「11人いる!」各1ページ、その他4ページもあるんです。
嬉しい~ ♪


この図録は展覧会の公式サイトでも購入できます。
送料がかかってしまいますが、展覧会まで待ちきれない方は一足先に買って楽しまれてはいかがでしょうか。


という訳で、見応えたっぷりの「ポーの一族展」。
私は2日とも物販を含めて3時間もいました。
それでも、もっと観ていたかった!


次の開催は12月4日(水)~16日(月)阪急うめだ本店です。
関西圏の方、お楽しみに!
そして来年の春は川崎市市民ミュージアム
また行きます!
その後もSF原画展のように全国を巡回してほしいですね。


~2019. 9. 14 追記~


大阪の前に名古屋での開催が決定しました ♪
9月30日(月)~10月17日(木)名古屋パルコ南館です。
もうすぐですね。
お近くの方はぜひ!


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「Ⅱ 宝塚歌劇の世界」ゾーンのレポートはこちらです。

(56)「ポーの一族展」の「宝塚歌劇の世界」ゾーン - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

~2019. 12. 25 追記~


来春予定されていた川崎市市民ミュージアムでの展覧会は台風の被害により延期されました。
今のところ開催時期は未定とのことです。
スケジュールをチェックできる「ポーの一族展」公式サイトはこちら。

デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展 公式サイト:朝日新聞デジタル


図録が一般書店でも買えるようになりました。
付録のポストカード(「秘密の花園 Vol. 1」扉絵)は付いていないそうですが、他は会場で販売されているものと同じです。

 

『ポーの一族』と萩尾望都の世界【普及版】 (原画集・イラストブック)

『ポーの一族』と萩尾望都の世界【普及版】 (原画集・イラストブック)