「トーマの心臓」のオスカーと言えば、ハンサムでカッコよくて頭もよくて機転がきいて統率力があって、しかも優しくて頼りになって…(以下エンドレス)
とにかく魅力的なお方ですね。
(『萩尾望都パーフェクトセレクション2 トーマの心臓Ⅱ』2007年 小学館より)
「トーマの心臓」にオスカー・ライザーとして登場するまでに色々な作品に出演していたことは皆様よくご存じの通り。
そこで今回は「トーマの心臓」に至るまでの系譜を辿ってみたいと思います。
その前に、まずは「オスカーにモデルはいるのか?」という話から。
「萩尾望都作品目録」様の2015年4月17日付のニュースに萩尾先生の言葉がありますので引用させて頂きます。
スタジオライフ創立30周年記念DVDに収められているメモリアルトークの中で、「オスカー・ライザーのモデルになった人はいらっしゃるんでしょうか」という問いに、こう答えられています。
「顔はですね、若い頃のポール・マッカートニーが好きだったんですよ。
眉のつり上がり具合がすごく良くて、ポール・マッカートニー。
それから顔を半分隠すあたりは、サイボーグ009から来てるんじゃないかと。
ちょっと拗ねてるところは、ジェームス・ディーンとかのアメリカ映画の青春群像の中から来ているんじゃないかと。」
(引用元はこちらです。他にもユーリのモデルやタイトルの意味などをお話しされていますので「トーマの心臓」ファンの方はぜひどうぞ ↓)
スタジオライフ「トーマの心臓」DVDに収録された対談に萩尾先生が出演されています。 - ニュース:萩尾望都作品目録
ああ~、ポール・マッカートニーに009にジェームス・ディーンですか!
なるほど納得です。
では、そういう感じのキャラクターを古い作品から順に探していきましょう。
『萩尾望都作品集』(1995年 小学館)の各作品の最後に書かれている年月を基にします。
画像も『萩尾望都作品集』から使わせて頂いています。
①「ケーキ ケーキ ケーキ」(1970年5月)
クレマン
異論のある方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこのクレマンがオスカーの原型じゃないかと思うんですよ。
ヒロインの邪魔をする憎まれ役ではありますが、自信家のところが「11月のギムナジウム」のオスカーっぽい。
何よりも髪と、つり上がった眉がオスカーでしょ?
オスカーの癖である髪をかき上げる仕草も、ちゃんとしてるんですよ。ほらね。
②「雪の子」(1971年1月)
エミールの親族の少年
一番右の少年です。
名前はないのですが顔が完全にオスカーですよね。
この4人はエミールの遊び相手として集められた親族で、全員エミールを嫌っているという役どころ。
1人ひとりの個性までは描かれていません。
③「ジェニファの恋のお相手は」
(1971年1月)
ロンリー
ヒロインの相手役。
ロンリーはプレイボーイですが、魂がアリスおばあちゃんと入れ替わったジェニファを本気で好きになります。
女の子と遊んでいても本物のジェニファと数学の1席を争うほどの頭のよさや、モテるところ、優しいところがオスカーらしい感じです。
④「花嫁をひろった男」(1971年3月)
オスカー
ついにオスカーという名前になりました!
しかも主役!
花嫁姿のキャンディをハイウェイで拾って連れて帰り、事件に巻き込まれます。
コメディータッチの作品なのでコミカルな面もあり、お人好しですが、頼れる男でカッコいいです。
⑤「11月のギムナジウム」(1971年9月)
オスカー
言わずと知れた「トーマの心臓」の姉妹編。
なので顔は同じですが性格はもっと不良っぽい感じです。
トーマと同じクラスにいたいために1年落第したという噂あり。
同級生より1つ年上で大人っぽいところは「トーマの心臓」のオスカーと共通しています。
⑥「3月ウサギが集団で」(1972年1月)
一垣一丸
(2コマ目は理科の高尾先生です)
これも異論があるかもしれませんが…。
なんせ日本人だし。
でも顔がオスカーっぽいでしょ?
IQ160と言われる天才肌で、ちょっとクレイジー。
話を大きく動かす面白い存在です。
⑦ポーシリーズ「メリーベルと銀のばら」
(『別冊少女コミック』1973年1~3月号掲載)
オズワルド・オー・エヴァンズ(2021. 3. 21追加)
(『萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』2007年 小学館より)
先日「メリーベルと銀のばら」を見ていてハッと気づきました。
「オスカーの系譜」にオズワルドを入れてない!!
こんな大事な人を何で入れなかった?とよくよく考えてみると、この記事を書く時に『萩尾望都作品集』を参照したのですが、そのシリーズの『ポーの一族』を持っていないので存在を忘れていたのでした。
大変申し訳ありません。
という訳で遅まきながらオズワルドです。
伯爵の息子で、エドガーとメリーベルの異母兄。
エドガーと同じ青い目をした22歳。
髪型は違いますが顔は完全にオスカーですよね。
ちょっと斜に構えたところや優しいところもオスカーっぽいです。
オズワルドは後に「ランプトンは語る」(『別冊少女コミック』1975年7月号掲載)にも1カット描かれていて、こちらは「トーマの心臓」が終了して間もない頃とあって、もっと似ています。
(『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』2007年 小学館より)
右の美女はオズワルドの妻となったマドンナです。
左に2人から始まるエヴァンズ家の系図が描かれているのですが、一番下にご注目!
なんとエディスのお父さんとおじいさんの名前はオスカーなんですね!
(上の画像で「え!!」と言っているのはエディスの姉のシャーロッテ)
もしかしてオスカーとエディスって遠い親戚だったりするんでしょうか?
⑧精霊狩りシリーズ「みんなでお茶を」
(1974年2月)
助手A
精霊狩りシリーズの3作目。
「トーマの心臓」連載開始の直前だけに、何だかオスカーがバイト出演してるみたいですね。
下から萩尾先生が「メガネかけろオスカー 今回はわき役なんだ カッコつけるな!」と言っています。
この作品では考古学の博士の助手で、知的でクールな印象。
チョイ役の割には出番が多いです。
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さて、この後はいよいよ「トーマの心臓」が始まり、オスカー・ライザーとして登場します。
それまでこんなに沢山の作品に出ているのを見ると先生のオスカー愛がよくわかりますよね。
役柄も性格もさまざまですが共通しているのは、ハンサム、クール、頭が切れるということでしょうか(例外もありますが)。
「トーマの心臓」で魅力が爆発して人気キャラクターの地位を確立したオスカー。
その後登場したのは関連作品だけのようです。
せっかくなので、その姿もご覧ください。
①「湖畔にて~エーリク 十四と半分の年の夏~」
(『ストロベリーフィールズ』1976年 新書館所収)
「トーマの心臓」最終回後の夏休みのエピソード。
少し大人っぽく、たくましくなっています。
②「訪問者」
(『プチフラワー』1980年春の号掲載)
(『萩尾望都パーフェクトセレクション2 トーマの心臓Ⅱ』2007年 小学館より)
シュロッターベッツに転入するまでの物語。
小さいオスカーがひたすら健気です。
なお、漫画ではありませんが、スタジオライフ創立30周年を記念して先生がイラストを描き下ろされ、その一部が上でご紹介したDVDのパッケージに使われているそうです。
引用元の記事内に画像があります(グスタフにもらった、あのマフラーをしています)。
また、先生のお好きなビーズにまつわるコミック・エッセイ集『夢見るビーズ物語』(2009年 ポプラ社)にもイラストがあります。
絵はすっかり変わりましたが、先生にとってオスカーは今でも愛着のあるキャラクターの1人なのでしょうね。
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過去に書いた「訪問者」の感想です。もしご興味がありましたらどうぞ。