亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

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(67)「秘密の花園 Vol. 2」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


待ちに待った「秘密の花園」の連載が再開されましたね!
Vol. 1 から1年ちょっと。嬉しいですね~ ♪


では早速、恒例の『flowers』表紙と作品の扉絵からどうぞ。

 

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小学館『flowers』2020年8月号より。下も同)


表紙は棘もいとわずバラをかき抱くエドガー。
麗しい。そしてウエストが細い!
この華奢な腰と眉の形は、もう「ペニー・レイン」扉絵風の衣装を着た明日海さん…って、毎度どうもすみません。


扉絵はとてもインパクトがありますね。
赤いバラが表紙から続いています。
中世風のコスチュームで、まるで物語の一場面のよう。
紋章のようなものは何でしょうか。
この扉絵については他にも気になることがあるので後でまた書きます。


・*・・*・


それでは物語の感想を。


1ページ目はカラーで、眠るアランと、それを見守るエドガー。
アランの寝顔が幻想的な色合いで美しく、そこにエドガーの「夢を見てるの?」というセリフが被さって、私は何となく「バルバラ異界」を思い出してしまいました。
もっとも私は「バルバラ異界」をずいぶん前に1度読んだきりなので的外れだったら申し訳ないですが。


クエントン館に、エドガーからの手紙を受け取った後見人の弁護士・ウインクル氏が到着。
…と思いきや、現れたのはシルバーでした。


シルバー、活躍しますね~!
「春の夢」「ユニコーン」より顔がふっくらして若く見えるのは、エナジーを補給したばかりだったから?
それとも、もっと古い時代の話だからでしょうか。
この「バンパネラの見た目年齢問題」、私にはいまだに謎なんですよね。


今号ではシルバーの名字も判明しました。
シルバー・ピーターバラ


で、今度は「バンパネラの名前問題」なんですが、私は前に「一族の名前には『ポ』が付くんだよ」と教えてもらったんです。
ポーツネル、ポリスター、ポラスト。確かに。


でも儀式をしていない人はトワイライト、クエントンと「ポ」が付かないので、儀式の時に改名するのだろうか?なんて勝手に想像していたのですが。
ピーターバラも「ポ」が付かない。
じゃあイニシャルが「P」ならいいのかというと、おそらく一族と思われるウインクルは「P」すら付かない(ものすごくどうでもいいことですが、Vol. 1 ではウィンクルでした)。


そこで現時点での結論は


「一族の名前に特に決まりはない」


ということでいかがでしょうか。
これでもしウインクル氏のファーストネームがポールとかだったり実は人間だったりしたら、また頭を抱えそうですが…。


・*・・*・


さて、シルバーは族長のクロエからエドガーを説得してポーの村に連れて帰るよう言いつかって来たのでした。
エドガーは後見人がポーの村と通じていたことに大きなショックを受けます。
更に一族についてまだまだ知らないことや、自分の力だけではどうにもならないこともあると思い知らされます。


私が今号で一番印象に残ったのは、男爵夫妻とメリーベルを失った時の話を蒸し返されたエドガーが「ぼくの前で二度とその話をするな 妹の名を出すな!」と叫ぶ場面で、この頃はエドガーの心の傷はまだ生々しかったのだなと思いました。
シルバーと話しながらカーテンにくるまり、最後はカーテンを閉めて足を投げ出して座っている姿は、どうしていいかわからない小さな子どものように見えました。


でも考えてみれば男爵夫妻とメリーベルが突然消えてしまってからまだ9年しかたっていないのですよね。
120年以上も一緒に暮らしてきたのに。
エドガーにとって3人を失うことは天涯孤独の身になるということで、特にメリーベルの喪失は生きる意味をなくすことでもありました。


「ペニー・レイン」でアランの目覚めを今か今かと待っているエドガーは、そんな不安やさびしさ、心細さでいっぱいでしたし、幼いリデルを殺さなかったのもメリーベルを重ねたからかなと思います。


そしてアラン、リデルと共に旅を始めてからは子どもだけで生きる難しさに直面したことでしょう。
いくら世慣れているとはいえ、それまでの人生は男爵夫妻の庇護のもとにありました。
ずっと男爵に反発してきたけれど実際には守られていたこと、子どもでは不自由が多いことを痛感したのではないでしょうか。


ウインクル氏との関係はまだよくわかりませんが、エドガーにとって唯一信頼できる大人だったのではないかと思います。
その相手に裏切られて自分の甘さ、未熟さに気づき、シルバーの言葉が余計にこたえたのかもしれません。


でも、ここから先はいつもの冷静なエドガー。
やむをえずアーサーの助けを借りようと決めますが、慎重に事を進めます。


一方のアーサーも、エドガーの一族が普通の人間と比べて実に変わっていると聞いてエルフ一族を思い浮かべるところは、さすがイギリス人。
いや、こういう発想をすること自体が変わり者の証拠かもしれませんが。
これからアーサーがどのように一族の真実を知っていくのか、なぜ仲間に加わるのか、明かされるのが楽しみです。


・*・・*・


個人的に今号で一番興味深かったのは、新シリーズで新たにわかった一族の「眠り病」でした。
シルバーの話によれば「眠りの時季」は不意にやってきて長く続く。
だから安全に眠れる村が必要――。


この「眠り病」の正体はまだ謎ですが、単に眠くなるというだけではないですよね?
「春の夢」でアランが「眠りの時季」に入っている時、ファルカが言っていました。


「あんたは “気” のヒフが薄いんだよ
すぐシューシュー漏れちまう
また治してやるよ 安心しな」


そして1週間ほどかけて少しずつ “気” のヒフを塞いでくれたおかげでアランは元気になりました。
つまり “気” のヒフが薄いからエナジーが漏れて眠くなる、ということのようですね。
リーベルも半年、1年と眠ることがあったそうですが、きっとアランと同じ症状なのだろうと思います。
2人は体質的に似ていますし。


でも「春の夢」でエドガーは「…ポーの村にいる一族は…そのほとんどは…バラの世話をするほかは眠り続けているんだ…」と言っていました。
皆が皆、“気” のヒフが薄いのでしょうか?
そうでないならエナジーを無駄に消耗しないように本能的に眠くなるとか、別の原因があるのかも。


それと、眠っている間の意識はどうなっているのでしょうか。
今号の1ページ目のアランを見ていると、夢の中でどこかと交信しているのではないかとも思えるのですが…。


ポーの一族の「眠り病」がルチオ一族の「眠れない病」と対になっているのも面白いところ。
この2つには何か関連がありそうですよね。
どちらも新シリーズの鍵の1つだと思うので、これからも注目していきたいです。


ところで、突然ですがここで冒頭に載せた扉絵の話に戻りたいと思います。
実は私の妹が、この絵をグリムの「いばら姫」みたいだと申しまして。


「いばら姫」が「?」の方も、ペローの「眠れる森の美女」と言えばおわかりになるのではないでしょうか。
こちらを原作にしたディズニー映画もありますし。
ちょっと調べてみましたら、「いばら姫」も「眠れる森の美女」も出典は同じ昔話ですが細部に違いがあるそうです。


例えばペローとディズニーの「眠れる森の美女」では王子が必死にイバラを切り開いて(ディズニーでは竜とも戦う)城に入りますが、グリムの「いばら姫」では王子が来た時にちょうど100年の呪いが解けてイバラがひとりでに道を空けます。


また、グリム版とディズニー版では王女は王子のキスで目を覚ましてハッピーエンド。
これに対してペロー版では、ちょうど100年の時が過ぎたため王女は自分で目覚めます。
そして王子と結婚しますが、その後に怖~い続きが…。


どうしてこんな話を長々とするのかというと、「いばら姫」でも「眠れる森の美女」でもいいのですが、「王子がイバラを切り開き(障壁を乗り越え)、眠り続ける王女を目覚めさせる」という図式が、このポーの新シリーズに通じる気がするからなのです。


「眠りの時季」に入ったアランを守ろうと戦うエドガー。
1976年以来、炭のような状態で眠り続けているアランを何とか復活させようと必死なエドガー。


そう考えると今号の扉絵が新シリーズ全体を象徴しているように見えてきます。
襲いかかる赤いバラが、ポーの村でフォンティーンに絡みついているバラの根や咲き狂う花を思い起こさせますし、エドガーを連れ戻そうとするクロエの姿とも受け取れます。
もちろんこれは私の勝手な妄想で、萩尾先生はそんな意図で描かれたわけではないでしょう。
でも色々と想像するのは楽しいですね。


・*・・*・


そのほか気になったこと。


沢山ありますが、何と言っても驚いたのはこれ。


エドガーは軽い催眠術を使える!!


いやー、びっくりしましたね。
ポーの誰もが催眠術を使えるわけではないと思うのですが、大老の直系ゆえ?
1944年の時点で「目を使う=テレポートする」という大技も身につけているし、他にも隠された能力があるのかも。


私は最終的に大老エドガー vs. フォンティーン&バリー=ダイモンという大老とその直系同士によるバトルが繰り広げられるのではないかと思っているのですが、フォンティーンもバリー=ダイモンも不思議な(不気味な?)力を持っていそうなので、もし本当にバトルになったらすごいでしょうね。


次に気になるのは、犬のフォルテがアランが眠っている小部屋までついて来たこと。
あれほどマルコに外に出すなと言われていたのに。
これって何かの伏線ですかね?


フォルテは9年前にパトリシアがアーサーにあげた犬なんですよね。
9年前と言えばエドガーがアランを仲間にした年。
これは単なる偶然か?
更に犬と言えば、私は「ユニコーンVol. 3」でアランが犬に怯えていたのが今も引っかかっているんですよ。


まあ、ここまで来るとさすがに考えすぎかもしれませんが…。
ポーを読んでいると何でも伏線かと思えてしまって困ったものです。
でも先ほども書きましたが、こうやってあれこれ考えるのが楽しいんですけどね ♪


あっ、今回はエディスとロビン・カーに続いてリデルがチラッと出ましたね!
新シリーズに本人達が登場することはなさそうですが、こうして回想シーンで語られるだけでも嬉しいです(もし登場したらもっと嬉しいけど)。
他のキャラクターも出てくれるといいなあ。


絵の面では黒と白のコントラストが印象的なコマが多くて旧シリーズを思い出しました。
エドガーとシルバー、エドガーとアーサー、2人だけで話す場面が何ページも続きましたが、カーテンの花柄や庭のバラ、木立など背景に変化があって飽きさせないのがすごいなと思いました(偉そうですみません)。


そして私が独断で選んだ今月のエドガーのベストショットはこちら!

 

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夜の闇の中、ランプの灯りに照らし出された妖しく美しい顔。
セリフがまたエドガーらしくていいですよね。


さてさて、次回はドミニクという少年の話が語られるのでしょうか。
この子は庭師の息子なのかな。全然違う?
パトリシアとアーサーの関係も気になりますね。
ウインクル氏は登場するのか。
エドガーはアーサーに更なる秘密を告げるのか。
アランは?
シルバーは?


うーん、目が離せません!


・*・・*・


Vol. 1 の感想です。よろしければどうぞ。
(52)「秘密の花園 Vol. 1」
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