亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(69)「秘密の花園 Vol. 4」

思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪


秘密の花園 Vol. 4」、いやぁ今回も面白かったですね~ ♪
予告通りの新展開!


今回の話はアーサーが3枚目のランプトンの絵を制作中なので1888年10月15日から11月5日までの間の出来事になると思います。
始めにいつものように扉絵からどうぞ。

 

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小学館『flowers』2020年10月号より。下も同)


わ ♪ 何だか「小鳥の巣」みたい~!って思わず興奮したのは私だけ?
2人の少年らしいしなやかな肢体、制服を思わせるリボンタイ付きの黒い服、アランのサラサラの髪。
しかも天使までいる!
エンジェールカミング アイムヒア!


…はい、わかってます。
この絵はブラザー・ガブリエルが探している「天国の庭」ですね。


では、この人の話から参りましょう。


・*・・*・


新キャラのブラザー・ガブリエルは、アーサーが13歳で寄宿学校に入るまでラテン語やフェンシングを教えていた修道士。
その後も館に引き留められてアーサーの祖母グロリアや母メリッサの相談相手になり、アーサーが18歳で大学に行く年にフィレンツェに帰った。
同行して1年間フィレンツェを旅行したグロリアの話では、そこで亡くなり立派な葬式が営まれたという。


そんな人が実は生きていて15年ぶりに館に現れた!
これまで世界を旅していたと言いますが…


この人いったい何者なんですかね!?
人間?
それとも予告にあったポーの村からの使者?


死んだと思われていたのに生きていたとか、地上の「天国の庭」を探して旅しているとか、「ポーなんじゃないの?」と思わせるフシが多いですよね。
それに人間なら、なぜ15年ぶりに突然帰って来たのかわからない。
旅のついでに寄ったのかもしれないけど何の説明もないし。


でも、もしポーの村からの使者だとしたら、エドガーを見てあんな驚き方をするかな?というところが引っかかります。
エドガーを投げ飛ばした時の反応も人間っぽい。
一方で、フィレンツェ出身の修道士ということでルチオか?とも思えたり。


まあ、その正体はいずれわかるでしょうが、ともかく面白いキャラですよね。
修道士だけど即物的で、マルコと張り合うのが可笑しいし、エドガーを「少年」と呼び続けるのも面白い。
もしポーなら今までいなかったタイプです。


そしてブラザーはメリッサに思いを寄せていたんですね。
「優しい方」と崇拝して。


メリッサのことをエドガーと話していた時、「私も…あの方に強く生きてほしかったんだ だから…」と言った後で話をごまかし、エドガーが「なんだか はぐらかされたような…」と怪訝な顔をしていますが、本当は何を言おうとしたんでしょうか。


これは完全な私の妄想なので本気にしないで読み流して頂きたいのですが…。


もしやブラザーはポーの一族で、メリッサを仲間にして一緒に旅をしたかったのでは?
苦しみから解き放してあげたい気持ちもあっただろうし。
でもメリッサが拒否したので、正体を知られた以上は生かしておけず自殺に見せかけて殺したとか。


うーん、違うだろうな…。


ところでブラザーの「地上の天国の庭」で思い出したのは、バリー=ダイモンの「地下の天国」。
それぞれに大切な場所ですが実に真逆ですね。


・*・・*・


メリッサは Vol. 3 ではかなり厳しい人、キツイ人という印象でしたが、ずいぶんイメージが変わりましたね。


息子のアーサーが5歳の時にロンドンで馬車の事故に遭い半死半生の状態になってから一緒にレスターに移り、ロンドンとレスターを行き来する生活。
ロンドンでは準男爵の妻として頑張っていたのに、夫の口から別家庭の存在を告げられ離婚を切り出されるとは。


きっと元々はブラザーの言うように優しく献身的な女性なんでしょうけど、息子まで誰かに取られると思えば、そりゃヒステリックにもなろうというものです。


夫のグローブ氏は今号で初登場。


結婚直後から浮気していたというのは当時の貴族としてありそうだとしても、息子が事故で「いずれ死ぬ」と宣告されたらあっさり諦め、レスターに移った後は一度も会わないなんて冷たすぎませんか?


はじめから情が薄かったのかなと思います。
アーサーが父を殺して自分も死のうと考えたのも、わかる気がしますね。


今回アーサーが顔に傷を負った理由が明らかになりましたが、想像以上にひどい状態だったようで驚きました。
おまけに父親に見捨てられるし、小さい頃は弱くて泣き虫だったのもわかります。
ブラザーに鍛えられて回復できて本当によかった。


・*・・*・


さてさて、エドガーの話もしないと!


3枚目のランプトンの絵で読んでいた本は『カンタベリー物語』だったんですね。


面白かったのはブラザーにいきなり投げられて身軽に着地するところ。
私はこのエドガー ↓ が可愛くて好きです。

 

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でもそれよりも大事件が!
アーサーの神経の薬としてマルコが作ったカウスリップのワインを飲んで、まさかの中毒症状に!


個人差があるのかもしれませんがバンパネラの体質に合わない飲食物があること自体驚きでしたし、エナジーが減って命に関わるなんて本当にびっくりでした。


私は最初、誰かがグラスに何か入れたのかなと思ったのですが、エドガーが何に弱いか人間が知るはずはないし第一動機がないし、ブラザーがエドガーを殺す目的で来たとは思えないし、偶発事故なんですよね?
想定外にパトリシアの祖母を殺す結果になりましたが、このことが何か問題を引き起こすのでしょうか。


ちなみにカウスリップは薬用にも食用にも使われるハーブで、花から作ったシロップを発酵させてワインにするそうです。


・*・・*・


そのほか次号以降に関係しそうなことのメモ。


切り裂きジャック


1888年8月末から11月にかけてロンドンで発生した娼婦ばかりを狙った連続猟奇殺人事件。
この「秘密の花園」が1888年9月から89年春頃までの話になると思われるので、時期的にドンピシャです。
現在も未解決なのでパトリシアの夫が関わっていることはないでしょうが、面白い一致ですよね。


でもパトリシアの夫の顔の引っかき傷はどうしたんだろう?
女性かネコにやられたのかな。


クエントン館の幽霊


メリッサの死後に館に出るようになったという幽霊。
絵ではメリッサのような女性の姿をしています。
マルコ以外の使用人が館に住まなくなった理由がわかって、なるほどでした。


画商のホルベイン氏からの手紙


毎年この時季に届くらしい手紙。
どのように物語と関わってくるのでしょうか。


・*・・*・


秘密の花園」も次回で Vol. 5。
「春の夢」が連載6回、「ユニコーン」が5回だったことを考えると、そろそろ終盤に差しかかってくるのでしょうか。
でも、まだまだ読んでいたい~!
萩尾先生、一気にまとめなくて結構ですので1回でも長く続けて頂きたいです!


なんて思っていたら、小学館のサイトにフラワーコミックス『秘密の花園 1』が11月10日発売という告知が出ました。
これって Vol. 5 か 6 までを第1巻として、続きの第2巻も出るということですよね?
わ~、長編になるのかな ♪


言い換えれば Vol. 5 か 6 で一旦休止になるのかもしれませんが…。
とにかく次回も楽しみです!