★激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪
こんにちは。
今月はすっかり遅くなって今頃「青のパンドラ」Vol. 3 の感想です。
もし待っていてくださった方がおられましたら(いないと思うけど)ごめんなさい。
まずは恒例の扉絵からどうぞ。
(小学館『flowers』2022年10月号より)
Vol. 3 の舞台はタイトル通り「ベニスのベラの家」。
なので扉絵もベニスの象徴である有翼の獅子の円柱なんでしょうね。
ベラとはシスターベルナドットのこと。
私はVol. 2 の感想で、その家が多分リド島にあるのだろうと書いたのですが、見事外れました。
どうもすみません。
どこか分かりませんが、ワインを造っている島にある隠れ家でした。
一応調べてみたらマッツォルボ島とサンテラズモ島にワイナリーがあるようですが、観光客が来て隠れ家向きではないので別の島なんじゃないでしょうか。
さて、Vol. 3 は今まで以上に情報量が多くて追い付くのが大変!
ていうか、新事実と謎が多過ぎて自分が追い付けているのかどうかも分かりません。
頭を整理するために今回は大きく5つに分けて感想を書いていきたいと思います。
1 大老ポー
2 ポーとルチオの歴史
3 壺=パンドラ=血の神
4 人物について
5 そして次回は
それでは参ります!
◆◆・*1 大老ポー*・◆◆
今号では大老の過去や心情が断片的に語られました。
旧シリーズの大老は唯一登場したのが「メリーベルと銀のばら」で、そこでは神格化された存在のように見えましたが、この「青のパンドラ」では普通の感情をもった人物として描かれているのが面白いです。
今回まず驚いたのは、大老が4000年を超えて存在しているという事実!
いや、ギリシア神話と関係あるのかなと考えた時点で想像できたはずなんですけど、断言されると改めて驚きました。
そして老ハンナも遅くともトロイ戦争(前1200頃)の時までには一族に加わっていて、どうやらギリシア人のようです。
ハンナ自身がクロエ達に「8世紀頃仲間になったブリトン人」と言っていたのは、やっぱり嘘なんですね。
もう1つ衝撃だったのが、大老がフォンティーンの母であるアドリアに恋していたこと!
もし自分が人間の若い男なら、この美しい女性と結婚したかった。
こんな美しい息子がほしかった。
バリーも含めて、こういう家族に囲まれたかった。
そんな思いで「恋心を隠し 良き隣人を演じ」ていたのかな。
アドリア母子は夢を見せてくれる理想の家族だったんでしょうか。
となると気になるのは、大老とハンナはどういう関係だったのか?
「メリーベルと銀のばら」で2人は互いを「つれ」と言っています。
「つれ」って単なる道連れとか同行者?
それとも連れ合いとか配偶者の意味?
大老はハンナを愛して、永遠に共に生きていくことを望んで仲間にしたんじゃないのかなあ。
男爵とシーラみたいに。
でも1000年もたてば、そりゃお互い気持ちも変わるってもんでしょう。
大老がアドリア達とトリッポの城で暮らしていた間、ポーの村のハンナは、愛人の元に行ったきり帰って来ない夫を待つ正妻みたいな気分だったんですかね。
いや、そもそも2人はそういう間柄じゃなかったのかもしれないし、何か他の事情があって別行動をとったのかもしれないけど。
あ、話がそれますが、大老のこの話を読んで私はアーサーと隣家のマーガレット夫人を思い出しました。
アーサーも密かに彼女に恋していたのかな。
話を戻して。
ここへ来て大老は心境に大きな変化があったようですね。
自分のやり方も、自分が作った掟も、もう役に立たないのかもしれない。
クロエを許す。
炎の剣をバリーにやってもいい。
フォンティーンを解放して話し合わねば。
なぜこう考えるに至ったのかは、まだよく分かりません。
フォンティーンとバリーを消さず、それ以上に愛していたはずのアドリアだけを消した理由も(不可抗力?)。
更にはアランを再生させてやろうとする理由も。
これらは、おいおい明らかになっていくんでしょうか。
そして大老の科学技術に対する言葉、特に「(人間たちは)キカイと科学の力で なんでもできると思いこんだのだ 神のようになんでもできると」「万能感を得て神をキカイの向こう側へ追いやってしまったのだ」というセリフは、萩尾先生から現代社会への警告と受け止めました。
◆◆・*2 ポーとルチオの歴史*・◆◆
大老の過去を知ることが一族の歴史を紐解くことに直結するのも面白いですね。
今号は今まで明らかになっていた事実が更に補足されて一本筋が通ったような気がします。
●はるか昔、大老やベルナドットはギリシアの小さな島に住んでいた。
その名も「ポーの島」!←大事なことなので赤文字にしました
●土地の者は神として壺を祀っていた。
大老は助祭、ベルナドットは巫女、そして祭司はアルゴスという男。
●しかし地震と海底火山の噴火によってポーの島は海中に消え、大老、ハンナ、ベルナドット、オリオンの4人は壺を持って移動。
トロイア、ペルガモンを経てイタリアへ。
●ローマ近くの森や村に住む。
サビーナの村でアドリア、フォンティーン、バリーを仲間に加える。
●ローマは392年にキリスト教が国教となり、5世紀の初めに蛮族に略奪されたため、静かな土地を求めて北へ移動する。
●7人はラヴェンナで二手に分かれる。
大老、ハンナ、アドリア、フォンティーン、バリーはアルプスを越えて北へ。
ベルナドットとオリオンはイタリアに留まりベニスへ。
壺はベルナドットが預かった。
ラヴェンナで別れた時期は不明ですが、5世紀頃でしょうか。
もっと分からないのは、ポーの一族とルチオ一族の関係なんですよね。
大老を始祖とする「ポーの一族」の名は「ポーの島」に由来すると思われるんですが、じゃあベルナドットを始祖とする「ルチオ一族」も元々は「ポーの一族」だったのか?
この辺りの説明も待ちたいと思います。
◆◆・*3 壺=パンドラ=血の神*・◆◆
前回私はよく分かっていなかったのですが、「パンドラ」と呼ばれる壺こそが、はるか昔にポーの島に祀られていた「血の神」だったわけですね。
一見何の変哲もない壺だけど、エドガーが触れると温かく柔らかく、水や海や星を思わせる。
何かの息吹を感じる。
エドガーが抱くと月の舟で波に揺られるようで心地いい。
これは母の胎内にいるような感覚?
パンドラ自体が命を育む1つの生命体のようなもの?
一方、ファルカが触れると少しヒヤッとしている。
冒頭の大老の「なんてことだ……彼も…消えかけているのか…?」というモノローグは、多分バリーじゃなくてファルカのことですよね?
それはイヤ!!
でもそうだとしたらファルカが壺に触れて少し冷たく感じるのは、もしかして彼自身の生命力が弱まっているから?
エドガー達が来る前、壺つまり血の神は久しぶりに水を欲していました。
しかも大量に。
ベルナドットが言ったようにそれがアランを復活させるためだとしたら、血の神が水を欲するのは誰かを蘇生させる時、あるいは新たな生命を生み出す時なのか?
そしてエドガーやファルカが壺に触れる時、サルバトーレが異常に怯えていたのは、なぜ?
私が考えたのは
①触れた者の余命を占うことになるから
②触れると恐ろしいほど荒ぶる時があるから
どっちかというと②かなあ。
「オリオンのそばでは割とおとなしい」と言われているし。
まだ色々と謎の多い神様です。
◆◆・*4 人物について*・◆◆
ここまで書いてこなかった人達について気になることなど。
【アルゴス】
またしてもキョーレツな新キャラ、アルゴス登場。
かつてのポーの島の祭司=大老の上司。
この人も一族だそうですが「ポーの一族」ってことでOKですかね?
ギリシア神話のアルゴスは怪力の巨人で、身体中に100の目をもち、その半分が眠っても残りの半分は目覚めていたと言います。
錯乱していて皆から相手にされていない印象ですが、今後もここぞという時に邪魔しに現れそうで何をやらかすのか気になります。
【バリー】
今回、アルゴスの言葉によってバリーの生い立ちが明らかになりました。
本名はバルトロメオ。
ローマ近くのザビーナ村の新貴族の息子。
1歳の時に父が若い女と再婚して捨てられ、父の愛人だったアドリアに引き取られる。
18歳か19歳の頃、父の再婚相手によって毒入りワインで殺される。
結構可哀想な人だったんですね、バリーって。
気になるのは「毒入りワインで殺された」ってところです。
アーサーは命が尽きる直前に一族に加わりましたが、やっぱり死んでしまうと無理なのかな。
それならバリーも完全に息絶える前に仲間に加えられたことになりますね。
アドリアとフォンティーンも同時だったのか?
フォンティーンが目覚めたら、その時の事情も語られる気がします。
あと、バリーの実母の話が全く出なかったんですけど、バリーを産んですぐに亡くなったのかな。
【オリオン】
オリオンはベルナドットの孫だそうですが、これって実の孫ってことでいいんですかね?
じゃあオリオンの親、つまりベルナドットの子どもが今いないのは、既に消えてしまったか、または女でルチオ一族に入れなかったかのどちらかでしょうか。
私、男ばかりのルチオ一族の始祖がなぜ女なのかも、まだ分からずにいます。
オリオンがどうして喋らないのかも気になります。
【シルバー】
シルバー、登場するたびに笑わせてくれて好きですわ。
風車小屋の別宅、いいなあ。
ケイトリンが今も元気そうで嬉しいです。
◆◆・*5 そして次回は*・◆◆
ラスト、「影の道」を走る馬車でヨークにある大老の仕事場へと出発した大老、エドガー、ファルカ、オリオン。
大老も「目」を使って移動するのかと思っていたんですけど、こんな馬車を駆っていたとは驚きでした。
ベルナドットやサルバトーレも驚いているところをみると、初めて見たんでしょうね。
エドガーだけが興味津々な顔をしているのが面白いです。
ヨークといえば、ヨークシャーにはポーの村があるんですよね。
村とは別に大老の仕事場があるわけですね。
そこでアランを蘇らせ、炎の剣を作るのでしょうか。
「青のパンドラ」は話の展開が早くてびっくりですが、次回も怒涛の勢いで進みそうな気がします。
ベルナドットが待っている「あの方」もいずれ出てきそうだし、一体何が起こるのか?
ところで先日終了した「萩尾望都SF原画展」大阪会場のイベントとして、9月18日に萩尾先生と舞台版「ポーの一族」の演出家・小池修一郎さんの対談が行われました。
参加された方のレポートによると、何と萩尾先生が「『青のパンドラ』でアランが復活するまでを描きます」と発言されたとか。
おおお!
先生の口から確約が!!
これはもう期待しかないです。
間もなく発売の次号がますます楽しみですね!!
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
「青のパンドラ」Vol. 1と2の感想はこちら。よろしければどうぞ。
(90)「青のパンドラ Vol. 1 冷蔵庫で眠る」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(91)「青のパンドラ Vol. 2 アランが盗まれる」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
~2022. 9. 28 追記~
今日は『flowers』の発売日でしたが、「青のパンドラ」は2か月お休みでVol. 4 は11月末発売の2023年1月号に掲載されるそうです。
待ち遠しいですね。