亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(90)「青のパンドラ Vol. 1 冷蔵庫で眠る」

激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪

 

さあ、『flowers』7月号で「ポーの一族」の新章「青のパンドラ」がスタートしましたね。
えっ何ですか、この表紙!?

 

小学館『flowers』2022年7月号より。以下、記載のないものは同)


バラはお互いへのプレゼントなんですよね?
「For You」「With Love」って何?
40年見ない間に、きみ達こうなってたのか。


あ、ちなみに先月号に載っていたモノクロ予告のエドガーも同じ格好してました ↓

 

(『flowers』2022年6月号より)


恋人同士みたいな彼らに若干アテられながら表紙をめくると、2人が1コマずつ交互に描かれたカラーページ。
目覚めたばかりで夢うつつのアランを新たな旅にいざなおうとするようなエドガーに、何となく「ペニー・レイン」を思い出したり。


2人の会話が扉絵に繋がるので書き出してみます。
青い文字がエドガー、緑の文字がアランです。


「…あれ? エドガー?」

「ああ 目が覚めた? アラン」

「え…なんか揺れてる?」

「うん 波は穏やかだけど少し風があるから」

「ここ舟の上? 舟を漕いでるの?」

「月を漕いでるんだよ」


月を漕いでる?
不思議に思いながら扉絵を開いてみると

 

 

本当だ。月を漕いでる。
幻想的で素敵です。
この絵には何か意味があるのかなと思っていたら、先の方を読んでちょっと思うところがあったので後で書きます。


さてさて、今回の物語は「ユニコーン Vol. 1 わたしに触れるな」の続きです。


2016年、長い間消息を絶っていたエドガーがミュンヘンのマリエン広場でファルカ、シルバーと再会。
手にしたアタッシェケースの中には小さな塊になってしまったアランが入っていて、元に戻したいと強く言う。
そこへ仲間から忌み嫌われているバリーが現れ、アランを再生させる方法を知っていると告げる。
ファルカ達の制止を振り切ってバリーに付いて行くエドガー。
さあどうなる!?というところから。


それではストーリーに沿って感想を書いていきたいと思います。


*おことわり*
バリーにはダイモンなどいくつか名前があるのでこのブログではこれまでバリー=ダイモンと表記してきましたが、ほとんどの登場人物がバリーと呼んでいるため今後はバリーという表記に改めます。


◆◆◆◆◆◆


エドガーとバリーを乗せたタクシーが着いた先はアーサーのクエントン館。
よ、よかった~!
カタコンベ(地下墓地)に連れて行かれるんじゃないかと心配してました。


疲れて休むために服を脱いだエドガーの上半身は骨と皮。
これだけでも軽くショックでしたが、萩尾先生は館に辿り着いた時の姿も描いてくださいました。


その時のエドガーの状態が「グール」なんですよね?
今回のバリーのセリフにもあるように、吸血鬼は弱ると干からびて小さくなって消えてゆく。


私は「グール」とは全く別の姿をした怪物なのかと想像していたのですが、そうではなくて干からびた状態が「グール」という認識で良いのでしょうか。
もしそうなら今のアランは、これ以上ないほど干からびて小さな塊になった「グール」ということになるのかな。


あと、些細なことですが、エドガーは「目」を使って館まで来たんですよね?
あれで列車に乗って来たとは思えませんから~。


それと犬!
早速出てきましたね。
シーザーは「わたしに触れるな」にも1カット登場していました。
今後どんな役割を果たしてくれるのか楽しみです。


さて、エドガーが眠る場所は棺…じゃなくて冷蔵庫または保冷庫の中。
香りが漏れないようにするためなら必ずしも冷蔵庫でなくてもいいような気がするんですけど、吸血鬼は気温が低い所の方が良いのだろうか。


眠る前、アーサーはエドガーの体にたっぷりのバラ油をかけてやります。
こうすると体力を回復できるみたい。
この方法でグールから元の姿に戻ってきたのでしょうか。


バラ油の他にバラ水もあって、そっちは普通に飲むのかな。
化粧水みたいに、それもお肌につけてたりして。


バラ油もバラ水も旧シリーズにはなかったので面白いなと思いました。
1950年頃まではアーサー自身が館で作っていたそうなのでエドガー達も手伝っていたのかも。
そういえば「小鳥の巣」では紅茶にバラのエッセンスを入れていたけど、あれも館で作ったのかな。


最近は外注しているそうで、どこに発注しているのか気になります。
もしかしてアーサー、それで商売してる?


◆◆◆◆◆◆


ところ変わってパリのモンマルトル。
ファルカとブランカはここに住んでいます。
ファルカは辻音楽をやるためにわざわざパリからミュンヘンまで飛んで行ってるのか~。


2人はローラという女の子とロイという男の子を育てていました。
だからブランカミュンヘンに来なかったんですね。


子ども達に「ファルカ」「ファルカ」と呼んでもらってファルカは嬉しそう。
この子達、もうヴァンピールになっているのだろうか。
まだ人間?
無事に生き延びられるといいですね。


◆◆◆◆◆◆


再びクエントン館。
キョーレツな新キャラが登場しましたよ。
一族のマリアとアイザック
マリアの髪は欄外の「花だより」の萩尾先生の自画像と同じなんですけど、ここ笑っていいところですか?


マリアとアイザックは7、8世紀頃から生きているというので、かなりの古参ですね。
老ハンナが大老ポーによって一族に加わったのが8世紀頃なので、だいたい同じ頃。
じゃあハンナと一緒にポーの村の創成に携わったのかな。


2人とバリーの言い合いから、当時ローマから来たバリー達とブリトン人が対立していたことが分かりました。
ハンナはローマから来たはずなので反感を買わないためにブリトン人と名乗ったのかも。
それとも本当にブリトン人だったのか?
このあたり、時系列で考えてもちょっと謎です。


マリアとアイザックはバリーを激しくののしりながらも彼の力を恐れています。
なぜこれほど恐れるのか、バリーのまだ明かされていない能力や村を追放された時の事情を知りたいです。


新事実は、大老がトリッポの城の仲間を殺したのが1066年と分かったこと。
それからアーサーは何十年と館に住んでいるけれど、怪しまれないように時々マリアと交代していたのだとか。
なるほど、その手があったか!


◆◆◆◆◆◆


アーサーの元には1958年にエドガーが送ったマリエン広場の絵葉書がありました。


マリエン広場といえば、つい先日エドガーがファルカやシルバーと再会した場所。
そうか、アランが好きだったマリエン広場でファルカが辻音楽をやっていると聞いたから、エドガーは自分から出向いて行ったんだ。
靴もアランが好きなデザインを選んでいるし、泣かせます。


1958年は2月にアランとベニスのコンサートに行って、その後一緒にマリエン広場に行ったわけですね。


2人が広場のからくり時計を眺めている場面から4ページに渡る回想シーンには胸が熱くなりました。
かなり長くなってしまうのですが、その部分の言葉を書き出してみます。


「(時計が)何百年も大切にされているんだ…
今でも動いてる…いいな」

「そうだね ぼくも時計は好きだよ」

エドガーが好きなのは壊れた時計だろ」

「壊れたのも好きだけど動くのも好きだ
秒針や針が動くのが」

「針はただ動くだけじゃん」

「針が動くと時間が動く
時間は目には見えないのに…
見えないのに…
時は刻まれてゆく」

時は流れゆく 
とどまることなく……

「「ホフマンの舟歌(バルカロール)」好きだな
こないだベニスで聞いた
バリーの歌った「バルカロール」よかったな
またベニスに行きたい」

「うん いいね
これからも いろいろなところに旅をしよう
ずうっと」

「うんエドガー」

「ずうっといっしょにねアラン」


エドガーが壊れた時計を好きだという話は「春の夢」に出てきてアランはこう言っていました。


「きみは壊れた時計が好きなんだ
だからちょっと壊れた人間のそばにいたがるんだ」


今回のエドガーの言葉


「針が動くと時間が動く
時間は目には見えないのに…
見えないのに…
時は刻まれてゆく」


異端の者であるバンパネラは、この世に存在してはいけないもので人間からは見えないも同然なのに、生きて時を重ねている。
時計を見ていると自分達のように感じられる。
そんな想いでしょうか。
それなら壊れた時計は例えばメリーベル


分かりませんが、「秘密の花園」Vol. 9 冒頭の2人が昼の月を眺めている場面を思い出して、時計に通じるものを感じました。


ここから先は文章だけではうまく伝えられないので後半の2ページを掲載させて頂きます。

 

 

 

彼らの間にこんな幸せな約束が、幸せな思い出があったんだということがとても嬉しいです。
ま、翌年には「小鳥の巣」で再びドイツに行って、アランは「ぼくのことだけ考えてくれなけりゃいやだ!」って叫ぶんですけども。
アラン、2人きりの幸せな時間を過ごした分だけ拗らせたんですかね。


それはさておき、月の舟に乗っているエドガーとアランはコスチュームは違うけど扉絵と同じですね。
下のアップの絵は扉絵の衣を羽織っているのかな。


エドガーの言葉からベニスで聴いた「バルカロール」を思い出すアラン。


時は流れゆく 
とどまることなく……


あれ、そういえばこれに似た歌詞があったような…
と思って単行本を見たら、ありました。

 

(『ポーの一族 ユニコーン』2019年 小学館より)


こちらは掲載誌にはなくて単行本で加筆されたページです。
「バルカロール」にまつわるサルヴァトーレとエステルの恋の思い出。


「時は往き過ぎぬ
もどらぬままに
愛は往き過ぎぬ
もどらぬままに
月の夜 星の夜
恋する夜よ…」


この絵、今回の月の舟の絵と情景が似てませんか?
それでバリーとジュリエッタが「バルカロール」を歌っている場面を見返すと、こんな歌詞でした。


「愛しいあなたを腕に抱きしめて
船出の時は来た
月は昇り
願うものは永遠の愛
麗しき愛 愛の夜よ」


あー、もしかしたら月の舟はこの歌がモチーフなのかなあと思うのですが…
扉絵のコスチュームも「ホフマン物語」の時代と合っているようですし、どうでしょうか?


余談ですが、旧シリーズにはこのようにコマを割らず詩と絵が一体となった美しいページが時々あって、それが魅力の1つでした。
新シリーズでも見ることができて嬉しいです。


アランの思い出話は更に続きました。


ハックルベリー・フィンの冒険』が愛読書だったこと。
トム・ソーヤーよりハックの方が話が合いそうだと言っていたこと(そりゃ、自由気ままな性分だから)。
誕生日が著者のマーク・トウェインと同じ11月30日で喜んでいたこと。


へえ、アランってこんな一面があったんだと知れて単純に嬉しいですが、本を愛しそうに見つめるエドガーの表情が切ないです。


◆◆◆◆◆◆


アランを元に戻す方法を教えてほしい。
エドガーの問いに対するバリーの答えは


自分は出来ないが大老ポーなら出来る。
大老は自分の血脈だけを大切にしているから、自ら血を分け与えたエドガーの頼みを聞き入れてくれるだろう。
青い壺に入った秘薬「パンドラ」を使えばアランはきっと蘇る――


おおー、タイトルの「青のパンドラ」とは秘薬のことでしたか!
大老がフォンティーンとバリーを殺さないのはなんでだろうと思っていたのですが、自ら血を分けた者は殺さないからという理由にも納得です。


バリーはエドガーに大老を呼び出させて倒すチャンスを狙っているんでしょうか。


その大老、最後に登場しましたね。
ファルカに何の用?
って、大老の前提で書いてますけど、もし違う人物だったらどうもすみません。


◆◆◆◆◆◆


ところで『flowers』7月号の発売日の翌日、新聞を広げて「あっ」とびっくり!
なんと1面の書籍広告の欄にこれが。

 

 

「アラン復活…!?」の大きな文字。
わー! こんなの初めて見た気がするんですが。
え、初めてじゃないですか?


感動してたら更に次の日には

 

 

1面ではありませんが横ブチ抜きでドドーン!
いやもう小学館様の本気に恐れ入りました。


という訳で、ますます面白くなりそうな次回がとても楽しみです!


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長過ぎる記事の後ですが、新シリーズの年表と気になることを前の記事にまとめておりますので、ご興味とお時間のある方はどうぞ。

(89)ポー新シリーズ「青のパンドラ」の予告が出ました - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記