★今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪
今月は遅くなってしまいましたが、皆様もうとっくに読まれましたよね?
「秘密の花園 Vol. 7」。
ラストシーン、私は本当にドキッとしました!
気を落ち着けて、まずは扉絵から。
(小学館『flowers』2021年7月号より)
エドガーはランプトンの服を着ています。
アランが目覚めた~!
と思ったら、物語の中でもそろそろ目覚めるようですね。
それでは今回は人物ごとに5つに分けて感想を書いてみます。
◆ 1 ダニー
◆ 2 エドガーとアーサー
◆ 3 パトリシア
◆ 4 新キャラ
◆ 5 アラン
◆◆・* 1 ダニー *・◆◆
前号でメリッサの霊に遭遇して2階の窓から転落したダニー。
てっきり死んでしまったのかと思ったのですが早合点でした。
どうもすみません。
病室にいる医師はVol. 1 に登場したドクター・ベイリーと、Vol. 6 に登場したアーサーの主治医と思われるドクター・ローソンですね。
急を聞いてダニーの妻のディジーと息子のディックが駆けつけました。
ディジーって健気な奥さんだなあと思います。
はじめはダニーが誰かに突き落とされたのかとアーサーの好意(と言うか罪滅ぼし)を無下にしますが、夫が回復して事情を知ると礼に訪れ、アーサーのために毎日祈るとまで言って。
貧しくてもプライドがあり純真で。
ディジーは多分、夫がアーサーをゆすろうとしていたことを知らないんでしょうね。
もし知ったら叱りつけそう。
妻としてのふるまいがパトリシアと対照的で、これは階級の違いなのかなと面白く読みました。
ダニーはロンドンの病院に転院することになりましたが、また登場するのでしょうか。
そもそも10年前にダニーの姉のダイアナがアーサーの子を身ごもったのは、姉が準男爵の息子にピアノを教えていると知ったダニーが、うまいこと玉の輿に乗せて恩恵にあずかろうとダイアナをそそのかしたんじゃないか…。
そんな気がしてるんですけど、さすがに考え過ぎですかね。
それにダイアナの死の真相について何か知っているのかも気になるところです。
◆◆・* 2 エドガーとアーサー *・◆◆
前回の記事で私は「アーサーがダイアナを直接手にかけたとは思わない」と書きましたが、どうやら間違っていたようです。
アーサーの衝撃の告白。
「水仙…イチイ…
スズラン…ベニテングダケ……
ブラザーから教わった
毒のある植物やキノコのこと
笑いダケなんかすごいぞ!
笑いが止まらなくなる
笑って笑って死んじまうんだ!」
「子供なんか ほしくなかった
結婚なんか したくなかった
……ダイアナのアパートで お茶を入れた」
「…ただ赤ン坊だけが流れるはずだった
彼女まで…彼女まで……
それは………」
えーと、エドガーの言葉も合わせて素直に読むと、アーサーはワライダケを食べてダイアナの家に行き、お茶に毒を入れて飲ませたということですか?
その毒とはワライダケの粉末?
気になったので調べてみると、ワライダケ中毒の症状は主に幻覚作用で、他にしびれや嘔気などがあるものの死ぬことはないらしいです。
で、可能性としては
①妊娠していたので重症化して死に至った(実際にそういう例があるかどうかは置いといて)
②幻覚による事故死
③ワライダケではなくベニテングダケなどのもっと強い毒を使った
この中のどれかということでしょうか。
死因はお茶じゃなかった説も一応考えてみたのですが、傍目には流産で亡くなったように見える状況だったなら、やっぱりお茶の毒が原因のように思えます。
つまり、アーサーが殺したことに間違いない。
前号を読んだ時、私はダイアナの一件はアーサーにとって大した出来事ではなかったのではないかと思いました。
でも今は、アーサーはダイアナとの過去を決して忘れることはできなかっただろうと思います。
忘れようと努めて生きてきたかもしれませんが。
自分を「鬼」と言う所以は、ここにあるのかも。
ダイアナはパトリシアのような「心に住む」存在からは遠かったけれど、愛情が全くなかったとも言えず、だからこそ罪滅ぼしにディジーに経済的援助を申し出たのでしょう。
でもディジーはダイアナを愛していたから援助してくれると信じているので、アーサーはいたたまれない気持ちなんでしょうね。
そしてそんなアーサーが嫌がると分かっていて「毒キノコ」としつこく言うエドガー、大好きです(笑)。
エドガーがアーサーの告白に対して言った言葉が私にはとても印象的でした。
「エルフだって人を殺すことがあるんですよ…
ぼくには めずらしくも恐ろしくもありません
でもね…
エルフは殺しても後悔しません
人間と…違ってね」
そう、バンパネラにとって人間は生命の糧、麦と同じですから。
これを聞いてアーサーは眠っているアランが死体ではないかと疑い、2人で様子を見に行きます。
と、一瞬ぱちっと目を開け、また眠るアラン。
彼らは本当にエルフかもしれないと思い始めるアーサー。
「きみは見た目よりは長く生きてるのだろうね」
「きみはナマイキな少年でもあるだろうが
なまじな大人より
…長い経験を重ねている…
そんなふうに思えるよ…」
春の花が咲き始めた庭を歩きながらアーサーは言いました。
「次のランプトンは
花に埋もれてるのを描こう…
春の庭だ…」
いよいよエドガーが最後にモデルを務めた10枚目のランプトンですね!
ということは、この時すでに9枚目に取りかかっているんですね。
「ランプトンは語る」の中で4枚目から10枚目までの日付は言われていないのですが、オービンの「およそ20日に1枚の速いペースで描かれた」という言葉から20日ずつ数えてみると、9枚目は3月5日頃、10枚目は3月25日頃になります。
でも20日以上かかった時もあるだろうし、11枚目の「ランプトンのいない部屋」は5月20日で間が空き過ぎてしまうので、実際はもっと後なのだろうと思います。
エドガーが人間でないと分かっても受け入れるアーサー。
最後のランプトンの絵。
エドガーとアランがクエントン館を去る日、そしてアーサーが一族に加わる日が近づいているのを感じます。
◆◆・* 3 パトリシア *・◆◆
今回はパトリシアの家庭の様子が描かれました。
夫オリバー、12歳になったばかりの息子ポール、もうすぐ10歳になる娘ポーラ。
使用人も数人いる裕福な家です。
前号でパトリシアはオリバーの浮気が原因で家出していましたが、今号で母に連れられて家に戻りました。
でも夫に対しては常に敬語で無表情。
オリバーは小犬の一件からして相当な頑固者かと思っていたのですが、意外にも家庭を大事にしようと努力し始めています。
きっとパトリシアのお母さんが娘の代わりにお詫びして、うまく取りなしたんじゃないでしょうかね?
オリバーも妻に出て行かれてかなり焦ったと思うし。
アーサーにだまされたと嘆いていたパトリシアですが、偶然クラウディア先生に会って心がほどけていきます。
クラウディア先生、アーサーの祖母・グロリア夫人の絵の先生、名前だけは何度も出てきたけれど、やっと登場!
私は「月曜日はキライ」のマダムを思い出しました。
クラウディア先生がアーサーの話を始めた時、パトリシアは名前を聞くだけでも辛いのに傷口に塩を塗られたようで涙がこぼれます。
でもアーサーが母親に愛された思い出のない孤独な人だと分かり、自分をだましたひどい人という気持ちが薄れていく。
追ってきた彼を振り払ったことを申し訳なく思う。
この時、辛い涙は苦く温かい涙に変わったのではないでしょうか。
その夜は一家でポールの誕生祝い。
慣れない家族サービスに努めるオリバーが、ぎこちなくて何だか可愛い。
その後、アーサーが描いたレスターの絵を居間に飾るパトリシア。
オリバーが田舎くさいと言うのでしまっていたけれど、自分の好きな故郷の絵だからと。
この行動はアーサーに対する心の変化と、オリバーに対する自己主張を表しているのかな。
ところでVol. 6 の感想の中で、メリッサの霊の場面には必ず光のようなスクリーントーンが貼られていると書いたのですが、誕生祝いと居間の場面にも同じものが使われています。
でもこれはメリッサとは関係なさそうですね。
話を戻して、久しぶりに同じ部屋で休む夫婦。
1ページちょっとのパトリシアのモノローグが揺れる心を伝えています。
が、私は読解力不足で特に前半をちゃんと理解できているのか自信がないんですよ。
とりあえず、こんな風に解釈しましたというのを書いてみます。
「オリバーは変わると言った
私も……変わるのだろう
まだ夫に心も肌も許せないけれど
私も…夢の中に逃げてしまってたんだわ
初恋の少年がそのまま大人になるはずはないわ……
女もいれば生まれなかった子供もいる」
↓
「オリバーは変わると言ったし実際に努力している
そんな夫を自分もだんだん受け入れていくだろう
これまで夫婦の間に愛はなく、夫は逃げて愛人をつくった
自分もまた逃げていたのだ
初恋の少年がそのまま大人になっているという夢の中に
でもそんなはずはない
彼は私が知らない現実を生きてきた」
「かわいそうなアーサー
私の出した手紙を
あの時アーサーが読んでいたら
アーサーが読んでいたら……
あの時……
あの時に…
もう遅い
あの時は…
…過ぎてしまった…」
↓
「ずっと孤独で可哀想なアーサー
もし『あなたを愛している 結婚したい』という私の手紙を
あの時に読んでくれていたら
私達は結ばれたかもしれないのに
今もやっぱりあなたが好きだけれど時は戻らない」
こういう気持ちかな~と思うのですが果たして合っているのでしょうか。
さて、オリバーの努力は本気だったようで、神経痛を押してパトリシアの実家に一家で里帰り。
パトリシアはアーサーと顔を合わせることになるのか。
また一波乱あるのか。
私はこのまま夫のそばにいる気がするのですが、アーサーが一族に加わろうと決意するにはパトリシアとの関係も影響していくんじゃないでしょうか。
◆◆・* 4 新キャラ *・◆◆
上に書いた人々の他にも新キャラが登場しましたね。
私が気になるのは、何と言っても看護助手のケイトリン!
エドガーも名前を聞いて反応していますけど、ケイトリンて「春の夢」にチラッと出てきた、あのケイトリン!?
ポーの村にエサとして連れて来られ、メリーベルに助けを求めてエドガーに逃がしてもらった、あのケイトリンですか~~!?
えっと、ポーツネル一家はポーの村に20年もいなかった(by クロエ)。
村を出て割とすぐに男爵夫妻とメリーベルが消滅したのが1879年。
そして今は10年後の1889年。
ということは、このケイトリンがあのケイトリンと同一人物だという可能性は大いにあるわけですね!
まさか、こんなところに繋がるとは…。
で、仮に同一人物だとしたらケイトリンはエドガーを見てどう反応するのでしょうか。
バンパネラに再び遭遇した恐怖でエドガーに危機をもたらす?
命を助けてもらった恩返しをする?
見た目も普通の人とちょっと違う感じがするし、とにかく気になります!
もう一組、気になるというより笑っちゃう新キャラはパトリックの4人の子ども達。
見事に3人、パトリックと同じ顔。
祖父母とも同じ顔。
何と強烈な遺伝子だ。
ブルックリンだけ可愛いのはパトリシアに似たんでしょうか。
「妖精のとりかえっ子?」と聞くエドガーも好きです。
◆◆・* 5 アラン *・◆◆
春になり、いよいよアランの目覚めも近いようです。
2月にエドガーとアーサーが見に行った時、一瞬ぱちっと目を開けました。
その時アーサーが「死体ではないのか……やっぱり彼らはエルフなのか」と考えるコマでバックに描かれているアラン、バンパネラっぽくて「わ~素敵!」と思っちゃいました。
バンパネラモードのアランの絵って意外と少ないんですよね。
自分で狩りをしないから。
そしてラストシーン。
犬のフォルテを追いかけて、ポールとポーラがアランの眠る小屋へやって来ます。
戸板をクンクンするフォルテ。
ああ、やっぱりアランをここに寝かせた時にフォルテがついて来たのは、この伏線だったんですね!
戸板をこじ開けるポール。
パッと目を開けるアラン。
こっ 怖っ。
同じバンパネラモードでもこれは怖い!
「春の夢」で棺の中で目を開けてゆら~っと上体を起こし、ノアやアダムを恐怖に陥れたダン・オットマーみたいに怖い。
前にも書いたのですが、アランが眠っている間のエナジーがどうなっているのか私は気になっていまして。
エドガーがせっせとバラを運んでいましたが冬の間はバラもないし、このところ人間も襲っていないようだし。
変化した直後は飢餓状態で本能的に山賊を襲ったアランですが、眠りの時季から覚める時も同じ状態になるのでしょうか。
もしや珍しい狩りの場面が見られるのか?
でも花の中のランプトンの絵はまだ仕上がっていないようなので、エドガーはもうしばらく館に留まるはず。
それならアランはまた眠りにつくのかな。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
ということで、とても内容の濃いVol. 7 でした。
だんだん終わりが近づいてくるのを感じますね。
続きを読みたいけれどまだまだ終わってほしくない複雑な気分ですが、もうあと2週間ほどで次号が発売されます。
一体どうなるのでしょうか~!?
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
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