亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(111)「ポーの一族」これからどうなる!? アンケート結果③

こんにちは。春ですね。
先日、当ブログの「『ポーの一族』これからどうなる!? アンケート」に新たなご回答を頂きました!
どうもありがとうございます!!


早速ご紹介させて頂きますね。
とても読み応えがありますよ。


「私にとってポーの一族は旧シリーズで完結していたのですが、やはり気になってこちらのブログのネタバレをこっそり読ませて頂いておりました。


今回「小鳥の巣」のラストページが載っているのを見て、私はキリアンのその後が気になっていて彼の物語を知りたかったのだ、と思い出した次第です。


エドガーはかつて「まえにきた時は東西に分かれてなかったのにな これからどうかわるかも 神のみぞ知る」と言っていました。
ベルリンの壁が落ちたとき、キリアンは44歳、結婚して子どももいたかもしれません。
あの歴史的な出来事を、彼はどこにいてどう見たのでしょう。


新シリーズでもエドガーはドイツへ行っていますが、エドガーとアランはどこかで成長したキリアンを見かけるか、或いは“深く沈んだ因子”を持ったその子孫と関わることがあるのか、子孫の誰かの中で因子が顕在化したとしたらどのような現れ方をするのか...
小鳥の巣のラストに「それはもっと後の話となる」と書かれている、その“後の話”を知りたいと思います。

 

ところで彼らは人間の何倍もの時を生き、時代の大きな変化を超えて経験を積んだはず。
それでもアランは子どもっぽいままで、エドガーも円熟味というよりは、その利発さも尖って青い少年のもののように見えます。


秋の成熟を促す力が彼らの上には働かず、春から夏の旺盛な成長の力も素通りし、早春の中に閉じ込められているような。
昔から人間は不老不死に憧れてきましたが、皆が厭う老いと死の力は、人間を成熟させ完成させるために必要なプロセスではないかと思うのです。


彼らとひととき遭遇したり、ポーの村の話を語り伝えられた人々にとって、そこは美しいバラの咲く永遠の村。
けれど村人の側の実態は、怠惰で寝てばかりいるらしい。
なぜ新シリーズではこれほど、ある意味幻滅させるようなバンパネラたちの裏事情が明らかにされるのか...


「不老不死はいったい幸せなのか」と、TVの特集の中だったか萩尾先生が(それとも他の人だったかも)語っていたように思います。


ほんの短いあいだしか関わることができないのに、エドガーは時に関わった人間たちに入れ込みすぎるほどに見えました。
エルゼリの昔の恋人に会いに行ったり、リデルを育てたり、難民だったキリアンの心中を思ったり。


エドガーとアランは人間側から見ると、バラの咲く村を探して旅する少年たちという、見果てぬ美しい夢の姿。
逆に彼ら(特にエドガー)の側から見ると、限りある時間を生きる人間のダイナミックな生こそが見果てぬ夢なのでしょう。


近年の萩尾作品は、福島のことなど外的にも内的にも現実を生きていく人間の深みを描かれたものが多くなり、私は夢見るような終わり方をした前シリーズに対し、今回は“人間がこの世界で生きるということ”が鍵になるような気がしています。


でも人間に戻ったアランが人生を全うするのを見届けるというのは、エドガーにとっては酷かもしれません。


それならばエドガーも人間に戻って、大人になり結婚もして、かつてのエドガーとメリーベルそっくりな子どもたちが生まれ、その日々の成長を見ながら、本来ならこうだったはずの自分たちの姿を重ね合わせる。


アランはエディスの子孫と結婚し、娘にシャーロッテと名づける。
これでエドガーとは文字通り親族となる。


ポーの村伝説を知るルイスの子孫がどこかでエドガーとメリーベルJr.に出会い驚くが、兄妹が成長していくのを見て「まさかね...」と思う。


生老病死、苦難をも包括してなお輝く人間の生を引き受ける、これがエドガーがずっと望んでやまなかった幸せの姿ではなかったか...
バンパネラとして数百年を生きた彼にとってはあまりに短い数十年の一瞬一瞬こそが真の永遠だったと思い、満ち足りた喜びの中でこの世の生を終える....

 

読者としては永遠の少年のイメージはとても捨てがたいのですが、エドガー自身が最も望んでいた幸せが何だったかを考えると、こんな話になりました。


そして、もう人生の残り時間のほうが少なくなっているであろう、旧シリーズをリアルタイムで読んでいたかつての少女たちにとっても、苦をも含む人生はバラ色の夢以上の何かだと思えるなら、それは幸せなことだと思うのです。


すっかり長くなってしまいました。
このような場を提供してくださってありがとうございました。」


読ませて頂いて、私などにはとても及ばない深い想いに感動してしまいました。
最後に「ありがとうございました」と書いてくださいましたが、こちらこそありがたいです。


回答者さんは、まずキリアンの「その後」の話を知りたいとのこと。
分かります!!
これ、旧シリーズの読者は皆さん知りたいですよね?


ご回答の中にある「小鳥の巣」のラストページ、作品を未読の方もいらっしゃると思うので今回も掲載させて頂きます。

 

(『萩尾望都パーフェクトセレクション6 ポーの一族Ⅰ』2007年 小学館より)


「小鳥の巣」は1959年の西ドイツが舞台でした。
キリアンは東ドイツから来た少年です。
「ランプトンは語る」のルイスの話では、7年後の1966年の春にルイスがキリアンの家を訪ねた時、彼はもうそこにいませんでした。


その後、ベルリンの壁が崩壊したのは1989年。
回答者さんがおっしゃるようにキリアン44歳の時です。


彼はどんな人生を送ったのでしょうか。
新シリーズの「現在」である2016年には、生きていれば71歳になっているはず。
果してエドガーとアランが、キリアンまたはその子孫と邂逅することはあるのでしょうか。
バンパネラの因子が子孫にどんな影響を及ぼしたのか、とても気になります。


実は私、クロエが殺したレイライン研究者がキリアンの子孫と繋がっていたら面白いなーと思っているんです。
あと、大学教授のライナーが何を専門としているのかまだ明かされていませんが、それがレイラインか血液の研究だったらな、とか。
いや、ないでしょうけども。


◆◆◆**◆◆◆


今回の方が考えてくださったストーリーも、良いなあと思います。


エドガーもアランも人間として限りある生を生ききり、充足感と共にこの世を去る。
2人は親族となり、エディスやルイスの子孫が絡んで、きれいにまとまって。
素晴らしい!


エドガーの結婚相手のことは書かれていなかったので考えてみたのですが、いっそキリアンの子孫というのはどうですか?
もし彼女がバンパネラの因子を受け継いでいたら、新たなストーリーが生まれそう。


それはともかく、私がこの方のご回答に感動したのは、根底に「不老不死は幸せなのか」という問いかけがあるからです。
そしてその問いかけは自分自身にも向けられているように感じました。


「皆が厭う老いと死の力は、人間を成熟させ完成させるために必要なプロセスではないか」というお言葉に頷きましたし、まさしく「もう人生の残り時間のほうが少なくなっている、旧シリーズをリアルタイムで読んでいたかつての少女たち」の1人として、最後の一文はとても心に響きました。
「かつての少年たち」や、残り時間がまだたっぷりある読者の方にとっても、そうならいいなと思います。


また、人生を季節になぞらえてエドガーとアランを「早春の中に閉じ込められているような」とイメージされているのも、分かる気がします。


ポーの一族」から離れてしまいますが、私は「早春」と聞くと「トーマの心臓」のオスカーのモノローグが浮かぶのですよ。


「それぞれの思いは
胸の奥に秘められる

まだ透きとおった
少年の日に

あこがれは
――やさしく
恋は ためらいがちに
おずおずと訪れをつげる

すぎてゆく 早春
つかのまの

忘れがたい日び……」

(『萩尾望都パーフェクトセレクション1 トーマの心臓Ⅰ』2007年 小学館より)


画像は控えますが、このコマは言葉も絵も優しくて大好きなんです。


エドガーもアランも長い時を生きていて、特にエドガーは老成しているように見えるけれど、でもやっぱり彼らも「トーマの心臓」と隣り合わせの世界にすむ14歳の少年なのではないか。
ただ違うのは、彼らの「早春の日々」は永遠に続くということなんだろうなと思います。


それから「ポーの一族」の新シリーズは「“人間がこの世界で生きるということ”が鍵になるような気がする」というご指摘には、なるほど!と唸りました。
秘密の花園」なんて、まさにその通りですよね。


◆◆◆**◆◆◆


さて、これまで3人の方のご回答をご紹介しましたが、皆さん「エドガーとアランにとって何が幸せか」を第一に考えてくださっているところがとても素敵だなと思います。


今回の方は1人目の方とも2人目の方とも少し重なる部分がありながら、ストーリーは三者三様で面白いですね。


他のファンの方々もきっと様々な予想や願望をお持ちだと思いますので、もしよろしければぜひぜひ当ブログにお聞かせくださいませ。


結末やストーリーに限らず「あの人が気になる」とか「あのエピソードはどうなるんだろう?」など、ちょっとしたことでも構いません。
思いのたけを綴って頂いてもいいし、簡潔に数行でも。
回答フォームを用意しておりますが、コメント欄に書いてくださってもOKです。
お待ちしております ♪


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