④は「小鳥の巣」全4話のイラストです。
*特に記載のない限り出版元は小学館です。
*ほとんどが古い雑誌のコピーの画像ですのでコンディションが良くないものもあります。特にモノクロは不鮮明だったり裏写りしたりしています。また、絵の傾きを補正しきれていません。どうぞご了承ください。
*このイラスト集は旧作のレアなイラストをご紹介してファンの方にポーの世界をより楽しんで頂きたいという思いで作りました。萩尾先生ならびに小学館様より削除のご要請がありました場合は速やかに削除いたします。
●「小鳥の巣」第1話
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年3月号
エドガーの頭のところにある紫の三角(実は矢印の先端。これがない絵をご覧になりたい方は記事(26)の最後をどうぞ)が邪魔ですが、私の大好きな絵です。
背景に書棚があってエドガーが本を手にしているところをみると図書室なのでしょうか。
図書室は「小鳥の巣」で重要な役割を果たす場所です。
張り出し窓から落ちるロビン・カーの影をキリアンが見たのも、アランがキリアン達にペーパーナイフで刺されそうになったのも、そしてエドガーがキリアンからロビンの話を聞いたのも、すべて図書室でした。
その場所が1話の予告に描かれているのは暗示的ですね。
こちらも私の大好きな絵です。
エドガーの肩にアランが手を回していて、その下に窓が描かれているのが、おわかり頂けるでしょうか?
ロビンと思われる人影も見えます。
この予告カットには単独バージョンもあります。
エドガーは余裕を浮かべた横顔が魅力的。
「ポーの一族」第1話の予告(「グレンスミスの日記」から採った絵)と服もポーズも似ているのに顔の感じはかなり違いますね。
アランは一見とても可愛いのに、口元にかすかに小悪魔的な微笑を含んでいてドキッとしてしまいます。
こんな顔で「ばらと ぼくと どっちが好き?」なんて囁かれたらマチアスでなくても好きになっちゃうよ、と思いませんか?
2人の表情といい、窓辺のロビンといい、作品のイメージを象徴するような予告カットです。
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年3月号 「メリーベルと銀のばら」第3話本編内
あの「ハンプティ ダンプティ」のページの左端に挿入された予告です(単行本では右ページですが掲載誌では左ページでした)。
「ポーの一族」のラストのコマと同じポーズで門の向こうに佇むエドガーとアラン。
門のデザインや手前の木まで同じです。
「萩尾先生の怪奇ロマンシリーズ
――4月号予告――
小鳥の巣 第一話
高等中学
先生
生徒たち
転入生
ふたり
それから?」
注目は絵の下に萩尾先生手書きの年表があることです。
「えー ポー・シリーズを年代順にならべますとこうなります。
いつごろの時代でしょという おてまみをいただきましたので
・メリーベルと銀のばら――1740~1757年
・すきとおった銀の髪――1820~1850
・ポーの村――1865
・ポーの一族――1879
・グレン・スミスの日記――1899~1959
・小鳥の巣(これ来月より連載)――1959」
「グレンスミス」がここでも「グレン・スミス」になっています。
また、「すきとおった銀の髪」の年代は『flowers』2017年3月号の年表と違っています。
そのあたりのことは、こちらの過去記事をご覧くださいませ。
(11)この作品は、いつ頃のお話?~①「すきとおった銀の髪」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
●「小鳥の巣」第2話
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年4月号
カラーはファンの多いキリアンです。
モノクロはエドガーとアランの間にある模様が血のようにもバラの花のようにも見えます。
素敵なカットなのに裏写りしているのが残念です。
(2020. 6. 22 追加)
エドガー(?)に首筋を触れられてドッキリのテオです。
◆予告カット
『ポーの一族 プレミアムエディション 下巻』2019年刊(2020. 6. 22 追加)
上のテオのモノクロ予告は絵が見づらいので、こちらもどうぞ。
◆表紙カット
『別冊少女コミック』1973年5月号
頬杖をつくアランと、エドガーのシルエット。
アランは眉も目も唇も赤く彩色されています。
●「小鳥の巣」第3話
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年5月号
全体が見える絵もあります。印刷の関係だと思いますが色合いが異なります。
(画像は『別冊少女コミック』1976年8月号「ポーの一族名場面集」より。記事(26)に掲載)
「小鳥の巣」の予告は素敵な絵が多くてうっとりしてしまいますが、こちらもそんな1枚です ♪
3話は次のようにストーリーが進行します(未読の方、すみません)。
・エドガーはグロフ先生に時計を盗んだのは自分だと嘘の告白をする
・マチアスはアランに惹かれていく
・アランがキリアン達にペーパーナイフで刺されそうになったところをエドガーに助けられる
・エドガーは報復にキリアンを襲おうとするが、キリアンとロビンの間にあったいきさつを聞いて心を変える
・マチアスが2人の異質な空気を感じ取り、エドガーはマチアスに襲いかかる
予告はストーリーにマッチした、魔性の笑みを湛えて寄り添う2人。
そして突き立てられたペーパーナイフ、舞う鳥の羽根――。
アランの服が制服のシャツではなくフリルのブラウスで、さらにムードを高めています。
左からキリアン、涙をこぼすロビン、エドガー、そして下の方にエドガーとロビンのシルエット。
物語を感じさせる絵で、当時この予告をご覧になった方は想像をかき立てられたのではないでしょうか(私は間に合いませんでしたが)。
予告としては大きく掲載されたのですが、それでも周囲が切れてしまっているのが惜しまれます。
◆予告カット
『週刊少女コミック』1973年21号 「オーマイ ケセィラ セラ」本編内(2019. 4. 20 追加)
キリアンにペーパーナイフを突き立てられそうになるアラン。
手書きで「別冊少女コミック6月号 予告 小鳥の巣(三話)40ページ」と書かれています。
『週刊少女コミック』(少コミ)に『別冊少女コミック』(別コミ)の広告が載る場合、絵は作品からの流用が多かったのですが、こちらは珍しい描き下ろしで「オーマイ ケセィラ セラ」の本編内に挿入されました。
◆表紙カット
『別冊少女コミック』1973年6月号
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、花の中、マチアスを襲うアランです。
アラン、目が赤くて怖いです。
「ポーの一族」第2話の合同扉絵のアランを襲うエドガーもですが、この頃はバンパネラモードの時は目が赤く描かれることがあったようです。
●「小鳥の巣」第4話
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年6月号
魔性の2人。丁寧に描き込まれた絵なのに、掲載誌ではサイズが小さくて勿体ないなあと思いました。
右は本編の絵と違いますがマチアスだと思います。
『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』の見返しにも似た男の子のスケッチがあるので、当初はこのようなキャラクターデザインが考えられていたのでしょう。
◆予告カット
『別冊少女コミック』1973年6月号 第3話本編内
仮死状態のマチアスを発見したキリアンです。
「――別冊少女コミック7月号――
小鳥の巣〈最終回〉
創立祭のまくが
あいた――だれも
知らない舞台がすすみ
サカナはロビン・カーの血を
さらにとり…
マチアスは
目ざめ…」
◆予告カット
『週刊少女コミック』1973年28号(2019. 4. 20 追加)
『少コミ』に1ページの半分を使って掲載された描き下ろし広告です。
連載終了に当たっての萩尾先生のメッセージが書かれています。
「ついに7月号で、ポー・シリーズは、
おわりです。生まれいでた主人公たちは
その後もかわらず、ひたた、ひたたと、
どこぞやのときのあいだを走っていく
ことでありましょう。
左図は、盲導犬をひいて、あんまにいく
わたしです。目を痛めまして、しばらくは、
世のなかからポーとともに、
遠ざかるつもりであります。」
左下にご自分と犬の小さなカット。
先生、目を痛められたのですね。
『別コミ』1972年7月号から翌年7月号まで怒涛のポーシリーズ連載でしたから、かなり目を酷使されたのではないでしょうか。
このエドガーとアランの絵が私はとても好きです。
「ユニコーン」連載中の今、2人がまた一緒に旅を続けられる日が早く来ますようにと願っています。