宝塚「ポーの一族」のブルーレイとライビュの演技の違いについて追記しました。
原作の「おぼえてるよ 魔法使い」と「だれにものを言ってるんだ え?」の場面の画像も載せました。
ご興味のある方はどうぞ。
(32)宝塚「ポーの一族」ライブビューイングを観てきました~原作ファンの初ライビュ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
宝塚「ポーの一族」のブルーレイとライビュの演技の違いについて追記しました。
原作の「おぼえてるよ 魔法使い」と「だれにものを言ってるんだ え?」の場面の画像も載せました。
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(32)宝塚「ポーの一族」ライブビューイングを観てきました~原作ファンの初ライビュ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
★今回も思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになった後で、ぜひまたいらしてくださいね ♪
「ユニコーン Vol. 4」、今号は私にとって「やっぱりそうか!」と「こう来たか!」の回でした。
まずはいつものように扉絵からどうぞ!
(小学館『flowers』2019年6月号より)
なっ 何でしょうかっ このシュールな絵は!?
でも、どこかで見た覚えが…
と思ったら、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」だとわかりました。
「快楽の園」は3枚のパネルからなる祭壇画です。
中央のパネルに「快楽の園」が、左に「エデンの園」が、そして右に「地獄」が描かれていて、この扉絵は「地獄」の一部がアレンジされています。
前の記事で私は「天国」と「地獄」が新しいキーワードになるかもしれないと書きましたが、さっそく出ましたね。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
さて、Vol. 2 では1958年にベニス(ベネチア)のコンサートでバリー=ダイモンと出会ったアラン。
Vol. 3 では1975年のロンドンで再会。
そしてこのVol. 4 の舞台は1963年のロンドン郊外。
ここでまたバリー=ダイモンと再会…と言うより時系列でいくとベニス以来、初めての再会です。
やっぱりそうでしたか!
実は後付けみたいになってしまうんですが、75年の2人のやり取りが58年のベニス以来にしては不自然な感じがしていまして。
そうしたら友人が、75年にアランがバリー=ダイモンを1度「バリー」と呼んでいることを指摘してくれて、58年の時点では「バリー」という名前を知らなかったはずなので間に1回は会っていたんじゃないかなと思っていたんです。
それにしても今回のバリー=ダイモンの登場の仕方、怖くないですか?
池のボートでうたた寝しているアランをいきなり覗き込むなんて。
しかもアランがベニスで付けていたネコの仮面を付けて!
これって、その仮面を5年間大切に持っていたということですよね。
まるっきりストーカーじゃないですか。
そんなバリー=ダイモンに対して警戒しながらも話し相手になるアラン、素直ですね。
でも、その素直さが裏目に出たようです。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
バリー=ダイモンに手を取られてアランが「移動」した先はローマのカタコンベ(地下墓地)。
そこはバリー=ダイモンが誰にも見せたことのない秘密の場所。
何百年もかけて1人で塔を造り続けている。
人骨と石を石膏で固め、蛍光塗料を加えた白いペンキを塗った塔を――。
やっぱり!
前号のモノクロ予告の人骨から何となく雰囲気は予想していたんです。
でも、こんな塔を造っているとは想像していませんでした。
こう来たか!
骨を美しいと言うバリー=ダイモン。
人間のように裏切らず、文句を言わず、嘘もつかないと。
人間? そう言えばファルカがバリー=ダイモンは「バチカンからも人間からも仲間からも嫌われてる」と言っていましたが、誰のことでしょう?
その相手に余程苦い思いを味わわされたのでしょうか。
バリー=ダイモンにとって骨でできた美しい塔のあるカタコンベは、やすらげる「天国」。
でもアランにしてみれば「地獄」ですよね。
扉絵は、バリー=ダイモンの「天国」がアランの目にはああいうシュールな「地獄」に映るというイメージなのでしょうか。
75年に会った時にバリー=ダイモンが「オレはただ…あの…地下を見せようと…きみが面白がるだろうって思ったんだ オレの作った天国を」と言い、アランが「天国? 地獄だろっ」と言っていますが、これは行ったことがあるから出た言葉なんですね。
でもアランが嫌がることを知っているのに「きみが面白がるだろうって思ったんだ」って、ちょっと変?
それにアランは「エドガーに知らない人からモノをもらっちゃいけないって言われてるんだ」とも言っているし、もしかしたら2人は63年から75年の間にも会っていたのかな?
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
バリー=ダイモンは大老ポーを「敵」と呼んで、兄を助けるために自分は戦い続けるのだと語ります。
戦っては負け、干からびてカタコンベに放り込まれるが、100年ほどで回復し、また戦いを挑む。
それでも兄を助けるには敵を滅ぼすしかないし、絶対に平伏しないと。
けれどアランに不毛な戦いだと図星をさされると、姿を消してしまう。
ベニスでブランカに「泣けないって かわいそうだわ」と言われた時もそうでしたけど、言い返せないと逃げる人なんですね。
不気味なカタコンベに置き去りにされてアランは叫びます。
「ユニコ―――ン!!」
ついに出ました!
作品タイトルにしてバリー=ダイモンの本名が!
似合わないからまさかと思っていたけれど、やっぱりそうか!
異母兄フォンティーンが名付けた、フォンティーンだけが知る名前。
んー? そうすると一緒に暮らしていたローマ人の継母と異母姉妹(?)は「ユニコーン」という名を知らなかったんですよね?
なのに「本名」でいいのかな。
ま、何か事情があるのかもしれないので、それはひとまず置いといて。
ベニスでバリー=ダイモンは、やはり言葉にして名前を教えていたんですね。
で、すぐに忘れる暗示をかけていたのにアランは思い出した、と。
それはなぜ?
しかもバリー=ダイモンはその名で呼ばれると逆らえない。
それもなぜ?
もしかするとフォンティーンが、「ユニコーン」と呼ぶ相手に逆らえないように暗示をかけていたのか?
でもバリー=ダイモンはフォンティーンの行き過ぎた行動を止めようとしていたというから、違うかな。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
とりあえずアランが無事に戻ってこられて、よかったよかった。
けどバリー=ダイモンのアランに対する執着は気になりますね。
「友達になりたい」と再三言っていますが、単にアランを気に入ったから本気で友達になりたいのか、兄を助けるためにアラン(またはエドガー)を利用しようとして近づいているのか、よくわからないところがあります。
ベニスで名前を教えたのは、歌を褒められて嬉しかったのと気に入ったからのような気がするし。
ネコの仮面をずっと持っていたのも、純粋に会いたかったからのように思えるし。
でもやっぱり、すべて下心あってのことかもしれない。
前の記事で私は気に入った理由を「兄と同じ金髪の、ピュアでイノセントな同族だから?」と適当に書きましたが、「子どもだから」っていうのもありますよね、きっと。
兄を助けるには「子どものポー」が必要なんでしょうか。
そしてバリー=ダイモンは塔を造って何をしようとしているのか。
何かの儀式?
予想通り「目」を使って移動できるとわかりましたが、アランやエドガーの行動をどうやって把握するのか。
他にどんな能力があって、皆が彼を恐れるのか。
カフェの時計を進ませたのは時間を支配できるということなのか。
カラカラに干からびた状態から、どのようにして回復するのか――それがアラン再生に繋がるはず。
まだまだ謎だらけですね。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
今号は最後にやっとエドガー登場。
2人が修道院に住んでいるというのは初めてですね。
神父も同族?
ルチオに滞在先をお世話してもらったのでしょうか。
エドガーの秘密主義は前からわかっていましたけど、アランもエドガーに言わないことが結構あるんですね。
じゃあベニスでの一件も詳しく話していないのかもしれません。
2人のこの距離感、いいな。
「タマに ひとりでいるのは楽だ」で「一週間」を思い出しました。
今回はアランの出番が多くて絵もきれいで嬉しい私です。
個人的に一番嬉しかったのが、特に何ということのないこちらのコマ。
「エディス」の頃の顔に似てるなあと思うんですよ。
旧作と似ている絵を見つけると喜んじゃうって、オールドファンの、さがですかね。
今月も予告がカラー・モノクロ共に描き下ろしで、それもとても嬉しいです!
「運命の相手を求める、人ならざる者たちの想いは――」
「永遠を生きるゆえに、切実なエドガーの想いは――!?」
「ユニコーン」、まだまだ先は読めません。
次号も本当に楽しみです!
「ポーの一族」イラスト集に画像を追加しました。どうぞご覧くださいませ ♪
(24)綴じ込み付録①
★メリーベルの暑中見舞
★クリスマスカード
(24)「ポーの一族」イラスト集~綴じ込み付録① - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(30)予告・表紙・合同扉絵④
★「小鳥の巣」第3話予告カット
★「小鳥の巣」第4話予告カット(萩尾先生のメッセージ付)
(30)「ポーの一族」イラスト集~予告・表紙・合同扉絵④ - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(43)その他
★まんが家コーナーのイラスト
(43)「ポーの一族」イラスト集~その他 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
★思い切りネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになった後で、ぜひまたいらしてくださいね ♪
8か月ぶりに連載が再開された「ポーの一族 ユニコーン」、皆様もう読まれましたでしょうか。
私、いつも以上に興奮してしまいましたよ。
だって、あの「エディス」が再現されている!
ポーの歴史も語られている!
これがこうで、あれがああで、実はそうだったのか!
その上、新たな謎も次々に。
今回も長い感想になってしまいますが、その前に表紙&扉絵を。
(小学館『flowers』2019年5月号より)
なんて美しいんでしょうか。
特に扉の一面のバラ!
2人の服がオシャレというか大胆。
今回初めて表紙と扉で同じ服、しかも本編も同じスタイルです。
エドガーのポーズ、特に手のあたりが、どちらも宝塚っぽいなあと思うんですが…
このままカンカン帽を持って踊り出しそう。
ディズニーの「メリー・ポピンズ」という声もあったりして…どうもすみません。
この2人の絵は次号のカラー予告まで続いています。
画像が粗かったら申し訳ありません。
ポップで可愛いですねえ!
ポーでこういう感じの絵は初めて。
足元が文字で半分隠れていますが、よく見るとスニーカーなんですよね。
本編では革靴なんですけど、これも可愛い。
夏の「ポーの一族展」でこの絵のグッズがあったら思わず買ってしまうかも ♪
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
絵の話だけで長くなってしまいました。
そろそろ本題に入らなくては。
今回は全体をざっくり3つに分けてみました。
◆ 1 1975年のエドガーとクロエの話
◆ 2 1975年のアランとバリー=ダイモンの話
◆ 3 1976年の話
バリーにはいくつもの名前がありVol. 2 ではダイモンと呼ばれていましたが、このVol. 3 ではポーからバリーと呼ばれています。
感想の中で呼び名をコロコロ変えるのもいかがなものかと思うので、当面はバリー=ダイモンでいきたいと思います。
では3つの話を順番に。
◆◆・* 1 1975年のエドガーとクロエの話 *・◆◆
1975年6月、つまり「エディス」のちょうど1年前のロンドン。
エドガーがシスターの格好をしたクロエを偶然見かけて後をつけると、クロエは病院で老衰患者からエナジーを頂こうとしているところ。
Vol. 2 でブランカも「老人のいる病院に行ってみて……でも できなくて…!」と言っていましたが、現代のヴァンピールにとっては病院がメインの狩り場なんですかね。
私はクロエがエドガーに再会したらもっと修羅場になるかと想像していたのですが、それほどでもありませんでしたね。
クロエがポーの村の秘密を話してくれたおかげで一族の歴史がまた少し明らかになりました。
●クロエは1000年以上前(830年頃)にヨークシャーに住んでいたブリトン人で、老ハンナによって一族に加えられた。
●一族は大老ポーと老ハンナの他に、大老とともにローマから旅してきた8人のローマ人などがいた。
●老ハンナはブリトン人の仲間を少しずつ増やし、ポーの村をつくり始めた。
●一方、大老と8人のローマ人はトリッポの城に住み始めた。
●ローマ人の中心はフォンティーン。金色の髪、金茶色の瞳、魔をも魅了する天使のような美しさをもつ男。異母弟のバリー=ダイモンを可愛がっている。
●フォンティーンは城主の亡き後、自分が城主となり、いつも若い娘に囲まれていた。城は悪魔の城と呼ばれた。
●城に教会から征伐隊が来た。大老は征伐隊を助け、フォンティーンを棺に入れてポーの村に運んだ。バリー=ダイモンだけが逃げ、他のポーは全員死んだ。
●フォンティーンの体は密かに村のバラの地下深くに置かれていた。死んではいない。バラの根が絡みつき、大輪の花を咲かせ続けた。
●バリー=ダイモンが村に帰ってきた。兄の分も償うと言っていたが、ある日、村中のバラを枯らして逃げた。大老は村に結界を張って彼を締め出した。
●100年後、バラが再生すると大老と老ハンナはポーの村を出てスコッティの村に移った。
もう驚きですよね。
何よりもバリー=ダイモンの兄がついに登場です。
私は記事(39)で兄の正体について推測を書きましたが、やっぱり見事に外れました。あはは。
読んで何となく萩尾先生の「月蝕」と「温室」を思い出しました。
「月蝕」は若い城主を城の地下室で殺してなり代わり、美しい乙女と結婚した金毛の狼の話。
「温室」は原作付きですが、美しい少年が温室の精霊に魅入られて姿を消し、後に真っ赤なバラが狂ったように咲く話です。
フォンティーンは死んではいないけれどバラに自分のエナジーを与え続けているのですよね?
それなのにずっと美しいまま変わらないのは、なぜなのでしょうか。
バリー=ダイモンはフォンティーンと一緒に埋めてもらいたがるほど兄を慕っていた。
最初は兄の分まで償うと言っていたのにバラを枯らして逃げたのは、大老ポーに復讐を誓ったからでしょうか。
Vol. 1 でポーの村を追放されたという話でしたが、こういうことだったんですね。
でもシルバーは久しぶりに会ったバリー=ダイモンをひどく恐れていたので、まだ描かれていないことがあるのかもしれません。
シルバーと言えば1000年も前から生きていた古株だったとは、ちょっと驚きでした。
見かけによらず要領のいいヤツなのかも。
クロエはフォンティーンに恋する乙女ですね。
あれほど若返りたがっていたのは、フォンティーンに釣り合うように若く美しくなりたかったのかな。
クロエに皮肉交じりにポーの村の話をするエドガー、好きです。
サラッと「ウェールズのスコッティの村」と言っちゃってますけど、スコッティの村がウェールズにあるって前に出てきましたっけ?
これも新事実ですよね?
少し引っかかっているのは、エドガーは老ハンナをギリシャからローマ、イギリスへと来た人だと思っていたけれど、老ハンナ自身はクロエに元々イギリスに住んでいたブリトン人だと言っていたこと。
ギリシャまで遡るかどうかはわかりませんが、「メリーベルと銀のばら」で大老ポーが「わたしたちはローマの灯を見 フィレンツェの水を渡り ともに咲けるばらを追った」と言っているので、少なくともローマでは大老と一緒だったと思うのですが?
そしてエドガーがバリー=ダイモンの苗字「ツイスト」を気にしていたことも。
これは何か意味があるのか、それとも忘れていいようなことなのか、よくわかりません。
◆◆・* 2 1975年のアランとバリー=ダイモンの話 *・◆◆
ロンドンの公園で偶然出会ったアランとバリー=ダイモン。
アランは面と向かって「あんたは信用できない!」と言ったりして、かなり冷淡ですね。
まあベネチアのコンサートでは、ジュリエッタに賛辞を贈ったら隣にいたバリー=ダイモンにいきなりエナジーを送り込まれて災難でしたもんね。
「エドガーに知らない人からモノをもらっちゃいけないって言われてるんだ」って、あの後エドガーからきつく言われたのかなと思うと笑えます。
でも公園でバリー=ダイモンに会ってから急にふらついたり彼の歌を聞きながら眠ってしまったりしたのは、何かの力のせいなのでしょうか。
バリー=ダイモンの方はアランをずいぶん気に入っている様子。
とても会いたかったようだし、自分の作った地下の天国を見せたがったり遊びに行こうと熱心に誘ったり。
なぜこれほどまでに好意をもっているのでしょうか?
コンサートの時は歌が兄に届いたと言ってもらえたようで単純に嬉しかったのだろうと思いましたが、どうもそれだけではないような気がします。
アランが兄と同じ金髪の、ピュアでイノセントな同族だから?
意外とファルカを仲間にしたのも金髪が理由の1つだったりして。
金髪と言えば、Vol. 2 にはなかったアランの金髪線が今回はちゃんと入っていてとても嬉しいです。
金髪線がないとどうも寂しくて、先生はお忙しくて時間が足りなかったのかなと残念に思っていました。
突然復活したのは時間に余裕があったか、ファンからの強い要望に応えてくださったのだろうと思うのですが、もしやフォンティーンの登場と何か関係あるのでしょうか。
いや、ないだろうな…。
ちなみにファルカはVol. 1 で髪を染めていて今回も金髪線なしでした。
もう1つ気になったのはアランが吠える犬にビクついていること。
犬が怖いの?
今までこんな描写はなかったのに、急にどうしたんだろう。
アランとの別れ際にバリー=ダイモンはエドガーの姿を見ます。
多分この時に初めてエドガーを認識したんですね。
コンサートの時、エドガーはオオカミの仮面をつけていて、バリー=ダイモンが歌い始める前に席を立っていますから。
エドガーにとっては2016年にカフェで会ったのが、ほぼ初対面。
そしてアランはまだ一度もクロエを見たことがないですね。
◆◆・* 3 1976年の話 *・◆◆
1976年6月。「エディス」のラストのあの日!
旧作では特に6月とは書かれていなかったので、これも新事実(って言うほどでもないか)。
とにかくあの日が今ここに再現されている!
もう本当に感動です。
あの時と同じエドガー、アラン、エディス。
ヘンリーも服が全く同じ。
違うのはバリー=ダイモンがすぐ近くにいたこと。
アランが落ちてすぐにダイブするエドガー。
ちょうどブランカが塔から落ちた時のように。
そうだよね!
エドガー、やっぱりそうするよね!
エディスをバスルームに運んだのはバリー=ダイモンでした。
これまではエドガーだと思われていたので、よく理性を失わなかったなあという感じでしたが、これで納得です。
じゃあエドガーはアランを救い上げて、そのまま「目」を使ってグールの丘に移動したのですね。
あの「もう明日へは行かない…」というモノローグは地下の洞窟でアランを抱きしめながら想っていたのでしょう。
焼け跡に佇むアーサー、ファルカ、ブランカ。
旧作と新作がきれいに繋がったなあと感じます。
そして虚ろなバリー=ダイモンの姿からは、これから物語がどう展開していくのだろうと期待と不安が広がります。
◆◆・* 特に気になること *・◆◆
ここまで書いてきたこと以外に私が特に気になっていることは2つあります。
1つは「天国」と「地獄」、もう1つは「オルフェオとエウリディーチェ」です。
①「天国」と「地獄」
クロエはポーの村は永遠の楽園で、その楽園のために永遠の地獄があると言いました。
バリー=ダイモンも、地獄が地上に永遠の王国を作っている、と。
「地獄」とは地下で永遠にバラを咲かせ続けるフォンティーンのことですよね。
バリー=ダイモンはアランに自分が地下に作った「天国」を見せたがっていました。
「きみが面白がるだろうって思ったんだ」と言って。
地下の天国って一体どんな所なんでしょうか?
地下にバラの花畑を作っている?
それなら本当にパラダイスですが、あまりそんな気はしないんですよね。
で、ここから妄想なんですが、もしかしてバラの花畑の下に秘密基地を作っているとか。
そこはフォンティーンがいる地下のような場所で、そこにアランを連れて行って…
なんて考えると、どんどん怖い方向に行ってしまうんですよ。
2016年にカフェを出た後、エドガーをそこに連れて行くんじゃないか、とか。
バリー=ダイモンは兄を取り戻して再生させたいのでしょうか。
エドガーがアランを再生させたがっているように。
そのためにエドガーとアランが必要なのでしょうか。
「天国」と「地獄」も新しいキーワードになるのかもしれません。
バリー=ダイモンが口ずさんだ「オルフェウス」の歌はオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」の中の曲です。
Vol. 2 でバルカロールが物語に関わっていたので、この曲もちょっと調べてみました。
そうしたら気になる言葉が色々出てきてしまったんですよ。
まずオペラの基になっているのはギリシャ神話のオルフェウスの物語。
神話なので諸説あるのですが、オルフェウスは伝説的な詩人であり音楽家。
アポロン神の子という説もあるそうです。
竪琴の名手で、これを奏でながら美しい声で歌うと野獣や山川草木まで魅了したとか。
大老ポーは元々ギリシャの神官ですよね。
そして大老に血を授けられたフォンティーンは魔をも魅了するほど美しい男。
竪琴を持つ姿が多く描かれていて、地下でも胸に抱いているので名手なのだろうと思います。
オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は、すごく簡単に書いてしまうと次のようなストーリーです。
「オルフェオは妻エウリディーチェを亡くして悲嘆に暮れる。
絶望のあまり連れ戻しに冥界に下ると神々に言い、何があっても決してエウリディーチェを振り返って見ないことを条件に許される。
冥界の洞窟の入口には復讐の女神や死霊達がいたが、オルフェオが竪琴を奏でて歌うと消えていく。
オルフェオはエリゼの園でエウリディーチェを見つけ、手を引いて地上に向かう。
エウリディーチェは夫が自分の方を見ようとせず、その理由も言わないことを次第に怪しみ、ついて行こうとしない。
オルフェオが耐え切れず振り向くと妻は息絶える。
オルフェオは自分も死のうとするが、愛の神が現れてエウリディーチェを生き返らせる。
2人は喜んで抱き合う」
これを更に乱暴にまとめると、
「最愛の者を失う→絶望→冥界に連れ戻しに行く→失敗→神の力で最愛の者が蘇る」
何だかね、シチュエーションが似ているし、冥界=地獄だし、地下の洞窟はフォンティーンのいる場所のようでもあり、エドガーがいたグールの丘のようでもあり…。
ちなみに神話をパロディ化したオペレッタもあって、原題は「地獄のオルフェ」ですが日本では「天国と地獄」として定着しています。
ほら、やっぱり「天国」と「地獄」なんですよ。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
他にはクロエとバリー=ダイモンの関係も気になります。
いつも行動を共にしているのかどうかはわかりませんが、単に昔からの仲間だから一緒にいるのでしょうか。
クロエはなぜエドガーにバリー=ダイモンの行方を知らないふりをするのでしょうか。
そして次号のモノクロ予告も気になりますね。
人骨と人体解剖書ですよ!
アオリは
「炎の中に失われたアランの復活を求めるエドガーの旅は――!?」
本当に怖い方向に行ったらどうしよう。
ドキドキしますけど次回も絶対に面白いのは間違いないですよね。
ところでVol. 1 の予告に「連作形式」と書かれていたのを私は「ユニコーン」の後に別のエピソードが連なると解釈していたのですが、そうではなくて「ユニコーン」自体が連作形式という意味だったようです。
前の記事でわかったようなことを書いていまして、申し訳ありません。
さて、次回はいつの話なのでしょうか。
とても楽しみです!
昨年の『flowers』9月号以来、長らくお休み中だった「ポーの一族 ユニコーン」が今月末発売の5月号からついに再開されます。
現在発売中の4月号に予告が載っています。
そのイラストがとっても素敵!
ユニコーンのメリーゴーランドに乗るエドガーとアラン。
何だかね、私などは見ているだけで幸せな気持ちになってきますよ。
優しい色合いからも幸福感が溢れているようで。
モノクロも素敵です。
思い起こせば40年ぶりのポーシリーズ復活となった「春の夢」では特にエドガーの体格がよくて少し年上に見えたのですが(個人の感想です)、だんだん旧作の絵に近づいてきているようで嬉しいです。
アランの靴は、もう定番になりましたね。
アランはカラーもモノクロも天使のような笑顔。
でもモノクロのエドガーはバラの蔓を掻き分けて何かを探しているみたい。
エドガーが炭化したアランを40年間抱きしめ続けていたグールの丘は、古い木や蔓バラが茂っている場所だったとか。
それを思うと私にはエドガーが、丘の館の地下で自分を呼ぶ「無垢(イノセント)な」アランを求めて、蔓バラの茂みの奥深くに分け入って行くように見えてきます。
カラーのエドガーも遠い眼差しをしていて、まるで前に乗っているアランは幻で、どこかにいるはずの本物のアランに想いを馳せているような…。
先生のメッセージが込められているのかなと思ったりするのですが、もちろん私の勝手な想像なので特に意味などないのかもしれません。
アオリにも注目しましょう。
微妙に違うのですがモノクロは、
「1976年のロンドン、
バラを探しに出かけた
エドガーとアランは
怪しい人物に出会い…!?」
1976年のロンドン!?
まさか、ここへ帰ってくるとは!
1976年といえば、言わずと知れた「エディス」の年ですよね。
じゃあ次は2人がロンドンでエディスに出会う直前の話ということでしょうか。
しかも怪しい人物!
また新キャラ?
もしや新しい一族?
また一段と世界が広がりそうな予感がします。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
「ユニコーン Vol. 1」の予告のアオリはこうでした。
「連作形式でつむがれる、新たなる『ポーの一族』の世界。」
連作形式ということは「ユニコーン」の後にも別のエピソードがいくつか描かれる予定なのでしょうね。
私はそれらをすべて含めた新シリーズ全体で、アランの再生に向かうのかなと感じています。
そこに大老ポーとダイモンを軸としたバトルや、ヴァンピール界の中でのあれこれ、更にはヴァンピールと人間との関わりが色々と絡んでくるのかな?と。
人間というのは、例えばエステルとジュリエッタ母娘や、アマティ神父をはじめとするバチカン、マリサとタバサ、クロエが殺したレイラインの研究者、それにロビン・カー、アダム、ノアなどです。
もしこの想像が当たっていれば、かなり壮大な物語になることでしょう(もちろん外れるかもしれませんが)。
でもエドガーにとって一番大切なのはアランを再生させること。
そして私は絶対にアランが元のまま蘇ってくれると信じています。
でないと新シリーズが始まった意味がないですもん(思い込み?)。
この予告が出てから「ユニコーン」を読み返してみたら、Vol. 2 でアランが「魔法は消えても ぼくらは消えないけどね」って言うコマがなぜかピカーッと光って見えたんですよ。
それで「そう、アランは消えないよ! だって先生はエドガーとアランとファンを幸せにするために新作を描いてくださってるんだからねっ」と思いを強くしました。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
今後どういう展開になるか全くわかりませんが、実は Vol. 1の時から私の妹が言っている説があるので、ちょっとご披露(一部脚色)。
あ、真面目に読まなくていいですよ。
ポーの村から姿を消したクロエが一族の前に現れる。
クロエにとってエドガーは可愛さ余って憎さ百倍の相手、しかもエドガーのエナジーが喉から手が出るほど欲しい。
↓
クロエ「エドガー!!」と襲いかかる
↓
シルバー「あっ あっ あっ…(さわっちゃマズイ*汗)」
↓
エドガー、一瞬にしてクロエのエナジーを吸い尽くす
↓
クロエ、シュ―――――ッとしぼむ
↓
大老ポー「あーあ」
↓
エドガー完全復活!
↓
(私の補足)パワーアップしたエドガー、自力でアランを再生させる
どうでしょう、こんなのダメですか?
冗談はさておき、もうあと2週間で彼らに会えますね!
表紙の絵も楽しみです ♪
そうそう、記事(39)で私は1800年前後の話が描かれるかもしれないと書きました。
それは『flowers』の年表で「すきとおった銀の髪」の年代が変更されたことから考えたわけですが、『プレミアムエディション』の年表で再び年代が変更されたので取り消させて頂きます。
メリーベルが生きていた時代のお話も読んでみたい気がしますけど。
◆◆・*・◆◆・*・◆◆
過去に書いた「ユニコーン」の予告、Vol.1、Vol. 2 の感想です。
Vol. 1 とVol. 2 はネタバレしまくっておりますが、よろしければどうぞ。
(36)ユニコーンを待ちながら - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(37)「ユニコーン Vol. 1 わたしに触れるな」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(38)「ユニコーン Vol. 2 ホフマンの舟歌(バルカロール)前編」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
(39)「ユニコーン Vol. 2 ホフマンの舟歌(バルカロール)後編」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
このたび萩尾先生のデビュー50周年を記念して小学館より『ポーの一族 プレミアムエディション 上下巻』が刊行されました。
刊行が発表された時から宣伝文句がすごかった。
「すべての原稿を再スキャンし最新技術で印刷」
「繊細な原画の描線までクリアに再現!」
「カラー原稿はそのままカラーで印刷!」
「著者により今回のために修正されたページを含む」
「B5判のワイドサイズ」
もう、いやが上にも期待が高まるというものです。
早々に honto に予約していたら発売日より2日も早く届きました!
雑誌と同じサイズなので、ずっしりと重量感。
ウキウキしながら箱を開けると、銀箔をあしらった美しいカバーの本が現れました。
●上巻カバー
●下巻カバー
ファンにはおなじみの1枚絵を2つに分けたものですね。
横に並べると一続きの絵になります。
カバーを外すと、表紙がまた嬉しいんですよ。
表も裏も本編内の素敵な1枚絵なんです。
実に心憎い!
中の印刷も謳い文句通りの美しさ!
特にカラーは『パーフェクトセレクション』と比べても鮮やかです。
例えばこちらは「はるかな国の花や小鳥」の扉絵。
●『萩尾望都パーフェクトセレクション7』
●『プレミアムエディション上巻』
微妙な差ですが『プレミアムエディション』の方が陰影に富んでいるのがおわかり頂けるでしょうか。
2色刷りはもっと差が大きいです。
上の扉絵の裏面に当たるページがこちら。
●『萩尾望都パーフェクトセレクション7』
●『プレミアムエディション上巻』
わが家のスキャナに問題があるようで『パーフェクトセレクション』の方は本の通りの色が出ていなくて申し訳ないのですが、印象がかなり違いますよね。
モノクロも点描などは比べやすいかなと思います。
画像を載せたかったのですが、はっきりわかるほどには違いが出なかったのでごめんなさい。
本のサイズが雑誌と同じというのも魅力です。
何と言っても細部までしっかり見える。
線がクリアで迫力があり、絵がこちらに迫ってくるように感じられるし、先生のペンタッチの変化が見られて興味深いです。
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『プレミアムエディション』で更に嬉しいのは、上下巻とも巻末に予告カットを中心としたイラストギャラリーが付いていること!
私は以前『flowers』編集部に「予告カットを含む『ポーの一族』の画集を出してください」という要望書を出したことがあって、まさに待望の!イラストギャラリーです。
点数は決して多いとは言えませんが、予告カットは行方不明になってしまった原稿もあるそうなので、先生の手元に残っているものを集めて掲載してくださったのかなと思います。
萩尾先生、小学館様、どうもありがとうございました!
初めて見るカットもあるし、掲載誌ではトリミングされた部分まで見られるのでとても嬉しいです。
そして巻末には年表「ポーの一族History」も付いています。
これは『flowers』2017年3月号(「春の夢」Vol. 2掲載号)に載っていた「ポーの一族ヒストリー」をベースに、その後発表された「春の夢」Vol. 3~6、「ユニコーン」Vol. 1~3の内容を新たに盛り込んだものです。
『プレミアムエディション』の作品は年代順ではないので、ポーを初めて読む方はこの年表を見ながら読むといいのではないでしょうか(個人的には『パーフェクトセレクション』の発表順に読むのがお勧めですが)。
『flowers』版は老ハンナの消えた年と大老のルビが間違っていたのですが、今回しっかりと修正されていました。
でもなぜか修正して逆に間違いになってしまったところも。
オービンさんの会合に参加したのはロジャーとシャーロッテだけなのに、ヘンリーも入っています。
下にヘンリーの絵があるので、うっかり入れてしまったのかもしれないですね。
それよりも私にとって事件だったのは、「すきとおった銀の髪」の「チャールズ少年、メリーベルと出会う」の年代が再び変わっていたことでした。
従来はチャールズがメリーベルに出会ったのは1815年、再会したのは1845年とされていましたが、『flowers』版では「18世紀後半~19世紀前半」と早まり、「著者に確認」という注まで付いていました。
それが『プレミアムエディション』では出会ったのが「1815ごろ」となっています。
元に戻ったのかなと思いましたが「ごろ」が付いているので全く同じではないのですね。
変更の理由はわかりませんが、この年代で落ち着くのではないかと思います。
(「すきとおった銀の髪」の年代にご興味のある方は、よろしければこちらの過去記事もどうぞ。)
(11)この作品は、いつ頃のお話?~①「すきとおった銀の髪」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記
『プレミアムエディション』は先生の修正が加えられるというのも話題でした。
どこが修正されたんだろうと思っていたら、1つ見つけました。
「ランプトンは語る」の最後から2ページ目の最後のコマです。
●『萩尾望都パーフェクトセレクション7』
●『プレミアムエディション下巻』
『パーフェクトセレクション』ではネクタイの下半分がペン入れされていなかったのですが、ちゃんとペン入れされました。
このコマはアランの表情が切なくて好きなだけに、未完成なのが前から気になっていたので嬉しいです。
他はどこが修正されているのでしょうね?
1ページずつ見比べればわかるかもしれませんが、そんな労力は私にはとてもとても…。
見つけられた方は教えて頂けると嬉しいです。
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今回、本の帯と挟み込まれていたチラシにデビュー50周年記念「ポーの一族展」のお知らせが出ています。
今更気づいたのですが惹句が「『ポーの一族』を中心に、貴重な原画で創作の軌跡をたどる」なんですね。
「『ポーの一族』を中心に」!
タイトルが「ポーの一族展」なのでポーの原画だけだと思っていましたが、他の作品の原画も展示されると考えていいんですよね?
これはますます楽しみです!
今のところ7月25日(木)~8月6日(火)東京・松屋銀座、12月4日(水)~16日(月)大阪・阪急うめだ本店のみですが、他の会場にも巡回されるといいですね。
今月末には「11人いる!」ムック本の復刻版も刊行予定。
「トーマの心臓」の扉絵探しも進行中だし、50周年記念企画は他にも予定されているようです。
小学館様、どんどん盛り上げてください。
期待しています!
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