「はるかな国の花や小鳥」でエドガーはエルゼリに出逢います。
そして永遠の少女のようなエルゼリにメリーベルの面影を重ねる一方で、思い出の国に生きる姿を自分自身と対比させていました。
エルゼリに会うために毎日出かけて行くエドガーに、とうとうアランは言ってしまいます。
「ぼくのことなんかどうだっていいんだ
どうせメリーベルのかわりだものね!」
間髪入れずにアランを叩くエドガー。
けれどもその直後のコマでは、ハッとした表情をしています。
まるで「とっさに手が出てしまったけれど、なぜ叩いてしまったのだろう?」というような。
そして自問して「ごめん」と静かに謝ります。
(『萩尾望都パーフェクトセレクション7 ポーの一族Ⅱ』2007年 小学館より)
この時エドガーは、アランの言葉が当たっていたことに初めて気づいたのではないでしょうか。
・・・*・・・★・・・*・・・
エルゼリが日々想っていたやさしい人は、彼女を覚えていませんでした。
エドガーはエルゼリに問いかけます。
少し長くなってしまいますが、私の大好きな2人の会話を引用します。
「なぜそう幸せでいられる?」
「なぜ幸せでいられないの?」
「……たとえば…妹がいない
妹がいない
あの子はどこ?
思いおこすだけで幸せにはなれない
どこに行ったんだろう
また生まれてくる?」
「バラをつんだのは妹さんのためだったの?」
「あれは友人に
でも彼は妹じゃない」
「…これが愛でね
手をのばせばとどくの
あなたの愛
あなたの妹の愛
行き場があるのはいいわ
バラをうけとってくれる人がいるのはいいわ」
この会話を通してエドガーはバラを受け取ってくれる人がいる幸せに気づいたのだろうと、私は思うのです。
そして次第にアランをメリーベルの代わりとして見なくなっていったのでは、と。
それは後の話にあたる「小鳥の巣」を読んで感じたことでした――。
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(初投稿日:2016. 12. 14)