亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(98)フラワーコミックススペシャル『ポーの一族 青のパンドラ 1』

こんにちは。
先月、『トーマの心臓』プレミアムエディションと同時にフラワーコミックススペシャル『ポーの一族 青のパンドラ』第1巻も発売されました。


皆様、きっともう読まれたことでしょうね。
遅ればせながら私もやっと読みました。

 

ポーの一族 青のパンドラ (1) (フラワーコミックススペシャル)

 

カバーの表は月の舟のエドガーとアラン。
この絵が好きなので使われて嬉しいです。


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単行本でまず気になるのは掲載誌との違い。


今回は主に背景に手が加えられている箇所が沢山ありました。
何もなかったところに絵が描かれたり、スクリーントーンが貼られたり。
背景以外でベタが塗られたり、逆に消されたところも。
とても小さい絵ですが、エドガーの顔が描き直されたコマもありました。


他には吹出しの形やモノローグの位置の変更、セリフ(意味は同じ)や表記の変更など。
新たにVol. 3 にストラヴィンスキーの注釈も入りました。


萩尾先生のこだわりが感じられ、こうして完成形に近づいていくんだなあと思いました。


実は変更されるかどうか注目していたセリフがあったのですが、そこは変わりませんでした。
それがこちら。

 

(p. 34より)


1958年のミュンヘン、マリエン広場。
からくり時計を見上げながら語りあう2人。
とても素敵な回想場面です。


ここのアランのセリフ


「こないだベニスで聞いた
バリーの歌った『舟歌(バルカロール)』
よかったな」


これは「ユニコーンVol. 2 ホフマンの舟歌(バルカロール)」での話ですよね。


1958年2月、アランはエドガーと一緒にベニスで開かれたコンサートに行き、バリーが「ミューズ」としてバルカロールを歌うのを聴きます。
その時ファルカがバリーを「ダイモン」と呼ぶのを聞き、コンサートの後で本人から「ユニコーン」という「本名」を教えられました(本当の意味での本名は「バルトロメオ」)。


その後、同じ年にエドガーとマリエン広場に行くわけですが、その間バリーには会っていません。
アランが次にバリーに会うのは5年後の「ユニコーンVol. 4 カタコンベ」で、この時初めて「バリー」という名前を知ります。


つまりマリエン広場の時点ではアランは「バリー」という名を知らないはずなんですけど、何か理由があって変更されなかったのでしょうか。
ちなみにエドガーがバリーに初めて会うのは、ずっと後の2016年です。


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ではVol. 1~5 を通して読んで改めて思ったことを。


やっぱり一番気になるのはアランと血の神の関係ですよね。
どれくらい元のアランで、どれくらい血の神なのか?


もしかしたらそれを測るバロメーターになるかもしれないと思うのが、なにげに何度も出てくるアランの愛読書『ハックルベリー・フィンの冒険』です。


はじめは単にアランの隠れた一面を表すエピソードなのかなと思っていたのですが、それにしては出過ぎる気がするんですよね。
で、本に興味を示せばアラン度(と言っていいのか?)が高いことになるのかなあ、なんて。
うーん、ちょっと苦しいかな。


それよりはもう少し有力なバロメーターになりそうと思えるのがエディスの存在です。


先日、「アランはエディスを仲間に入れようとしていたのだから、エディスの安否を聞いてほしい。エディスに会いたいと思ってほしい」というコメントを頂きました(みかんさん、ありがとうございます!)。


私も全く同感です。
アラン自身に40年間眠っていた自覚があるのかも謎ですが、もし元のままの記憶と感情があるなら絶対にエディスが助かったかどうか心配するはずですよね。
それを口にするか否かでアランの状態が分かる気がするんですが、どうですかね。


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そして血の神とは何者か?という謎も大きい。
そもそも太古の昔にどこから来たのか。
…もしや地球外生命体か?


なんて考えると、がぜんクロエの予言めいたセリフが気になりまして。
Vol. 4 でクロエはシルバーから「バリーにもポーの村の封印を解く」と聞いて、言うんですよね。


「村はまた大混乱になるわよ!
バリーはまたバラを枯らして逃げ出す!
そうね!
大老は村を壊滅させるつもりね!
そうよ 世界の終わりが来るのよ!」


ここでまた『ハックルベリー・フィンの冒険』に戻ると、アランはこの物語が好きだっただけでなく著者のマーク・トウェインと誕生日が一緒だと喜んでいました。
マーク・トウェインの生まれた年にハレー彗星が現れ、本人が予言した通り彗星が再来した年に亡くなったと嬉しそうに話しています。


地球外生命体。
世界の終わり。
彗星の出現。


…え、なんか繋がってしまう?
まさか本格SFドラマが展開しようとしているのか。
いやいや、これは「ポーの一族」なんだから、さすがにそこまでは…
と思いつつ、ありえなくもないような。


あっ、お断りしておきますがこれはあくまで妄想ですから、くれぐれも本気になさいませんように。


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最後に、連載再開に向けて他に気になることを箇条書きに。


バリーがフォンティーンを解放するとどうなるか

語られるかもしれないルチオの歴史

アルゴスとカミラ

ファルカとブランカの消えてしまう子ども達

消えかけている(?)ファルカ

アーサーの亡き隣人と犬のシーザー

ライナーの病弱な娘


予告では再開は春とのこと。
今年は暖かくて桜も早く咲いて関東住みの私としては体感的にもう春なのですが、間もなくでしょうか。
とても楽しみです!


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この本には楽しいショート番外編「火曜日はダイエット」も収録されています ♪
この「〇曜日」シリーズの新作も読みたいな。
萩尾先生、ぜひよろしくお願いいたします!(←ここで言っても)


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「火曜日はダイエット」の感想です。もしご興味があればどうぞ。

(73)「ポーの一族 番外編 火曜日はダイエット」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記