亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(105)「青のパンドラ Vol. 8 フォンティーンは歌うⅡ」

激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪

 

こんにちは。
『flowers』11月号に「青のパンドラ」Vol. 8 が掲載されましたね。


はじめ見た時に「あれ、扉絵がない?」
唐突に始まった感じで不思議に思いましたが、最後まで読んで分かりました。


どうやら11月号は、本来なら9月号で描き切る予定だったのが、こぼれた分のようですね。
9月号20ページ、11月号13ページ、合計33ページで大体1回の分量ですし、タイトルも今回は「Ⅱ」が付いているし。
前回の終わり方が何だか不自然だなあと思っていたのですが、途中だったとしたら納得です。


でも、もしそうなら途中になってしまったのは萩尾先生の体調不良のためでしょうか。
先生、どうぞお身体をお大事に、ご無理なさいませんように!


◆◆◆◆◆◆


さて今号は、アランがテーブルに飛び乗ろうとして見事に落ちた続きからでした。
それというのも137年ぶり(!)に人間に戻ったら急に体が重くなり、その変化に付いていけないため。


前から思ってたんですけど、バンパネラって何も身に着けていなければ体重ゼロなんですよね?
昔はそれでもあまり困らなかったかもしれないけど、今は日常生活に支障が出ますよね。
自動ドアが開かないし、椅子の上げ下げもできないし。


で、息をするふり脈のあるふりをするように、意識して体を重くしてるんですかね?
しかも最近は一歩外に出れば至る所にカメラがあるし、生体認証が必要だったりするしで、一瞬たりとも気を抜けない。


いやあ、「お疲れさまです」とバラの紅茶を淹れてあげたくなります。
家にいながらネットで色々できる世の中になって良かったですねー。


はい、横道にそれました。すみません。


人間なんてイヤだ!と再び一族に加わりたがるアラン。
なぜか賛同しないエドガー。


それが喧嘩に発展していくわけですが、私はエドガーの気持ちを今ひとつ掴めずにいるんですよ。
ちょっとエドガーのセリフだけを抜き出してみますね。


「昨日食べたトースト 美味しかったかい?
人間になったから食べ物にちゃんと味を感じられるだろう
パンもタマゴもチーズも味わえる」


「レストランで食事したら美味しいだろう
アーサーが言っていたエディスのレストランでパスタとか」


「きみは毎日食事しなきゃいけないよ 人間だから
エディスのレストランには ぼくも行ってみたい」


「もしかしたら 
おばあさんになったエディスと会えるかもしれないね?
その娘や孫たちって どんなだろうね?
きみは――
レストランで女の子と知りあって――
恋するかもしれない
その子と結婚するかもしれない――
きみは……そういう未来を考えることができる…」


「アラン…こんな…
こんな2度とないチャンスを……
放り出す気か…!?」


「年を取る……すばらしい…」


「きみは本物の人生を生きられるんだ」


「違う!
ぼくらは影なんだ 幻なんだ
人間であれば本物の……」


「きみこそ なんでわからない
きみは人間だ 一緒にはいられない!」


さて、エドガーの心は?
表情から察するに、私はこれらの言葉はアランを諦めさせるための詭弁ではない気がしています。


だって彼はずっと人間に戻りたかったのですから。
もし叶うなら今でも戻りたい。
リーベルも人間でいた方が幸せだったに違いないと思っている。
だから、せっかく人間に戻れたアランには豊かな人生を全うしてほしい。


そう思うから、アランの未来を想像するコマだけ少し笑っているんじゃないかと思うんです。

 

小学館『flowers』2023年11月号より。下も同)


でもアランはそもそも人間に戻りたいという願望がないので、気持ちが伝わらない。
それでエドガーは「こんな2度とないチャンスを……放り出す気か…!?」と言う時に、怒ったような困惑したような顔をしているのかな、と。
自分なら絶対に人間の方がいいのに。

 

 

とまあ、ここまではいいとしても(間違っているかもしれませんが)、どうして始めから人間のアランとは一緒にいられないと決めつけるのかが、よく分からないんですよね。


Vol. 8 の感想にも書きましたが、エドガーはアランが人間でも本当は一緒に暮らしたいんじゃないかと思うんですよ。
だってアランが炭状態の間、あんなにも切実に求めていたじゃないですか。
エドガーならリデルを慈しんで育てたように、食料ではなく大切な友人として仲良く暮らせると思うんですが…無理なのかな?


ただ、エドガーは大丈夫だとしても他の一族にとっては食料なので、誰かに喰われてしまう危険はあるわけで。
だから一緒にはいられないのか?


それか人間と一緒にいると自分が苦しくなるから?


アランは自分を置いてどんどん大人になっていく。
それを傍で見ているのは辛い。
人間だからこそ味わう悲しみや苦しみさえ羨ましい。
アランの方から離れていくかもしれないし、いつかは老いて土に帰る。
そうなれば自分はまた永遠の孤独をかみしめることになる。


でもそれなら再び仲間にできるよう手を尽くしてもよさそうなのに、現時点でその考えはないように見えます。
皆がアランの処遇について勝手なことを言っていた時も自分の希望は何も言わなかったし。


それはやはり人間のままでいてほしいから?
または中に血の神がいるからとか、他の理由があるのでしょうか。
エドガーの気持ちを知りたいです。


◆◆◆◆◆◆


そうこうしているうちに、フォンティーンが目覚めてポーの村が危機に陥っていると分かり、慌しく村に向かおうとするマリアとアイザック


アランはオリオンに一族にしてくれるよう頼みますが、アイザックに「勝手なまねをするな」と言われます。


で、思ったんですけど、おそらくアランはオリオンもポーの一族だと思ってますよね?
目覚めてから初めて会って、名前しか聞いてないんですから。


だいたいアランはルチオ一族のことを、どの程度知っているのかな。
エドガーやブランカから話を聞いているかもしれないけど、ベルナドットに会ったことはないし、サルバトーレやダンとも直接話したことはないのでは?


ルチオは一族の歴史もまだ語られていないくて、謎が多いですよね。


話を戻して、命令口調のアイザックに食ってかかるアランを押しとどめるエドガー。
下手にアイザックを怒らせたら記憶を消されちゃいますもんね。こわ…。


けど、エドガーとアランは完全に喧嘩別れ。
あ、いや、一方的にアランが。
アラン、ヤケクソになってバリーやフォンティーンに利用されないといいけどな…。


◆◆◆◆◆◆


一方、バリーは用意していた住みかにフォンティーンを案内。
てっきりローマのカタコンベかと思ったらヨークシャーの灯台でした。
ヨークシャーということはポーの村からそれほど遠くないのかな。


灯台には音楽の好きなフォンティーンのために馬頭琴リュートが。
リュートを奏で、母が歌っていた子守唄を歌うフォンティーン。
ここでようやくタイトルと扉絵に繋がるわけですね!

 

(同9月号より)


不敵に微笑み、フォンティーンは言います。


「……ゆっくり考えよう
…バリー
世界への復讐を……」


大老ポーへの復讐ではなくて世界への復讐…。


世界とは一族のこと?
もっと広くヴァンピール界全体のこと?
もっともっと広い世界?


クロエが言ってましたよね、世界の終わりが来ると。
一体何がどうなるのか!?


壮大なドラマが待っていそうで続きがとても楽しみですが、次回は11月末発売の1月号とのこと。
今後は基本的に隔月掲載になっていくのでしょうか。
それはそれで楽しみが長く続くというものですね。
先生、ゆっくりお待ちしております。


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