亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

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(103)「青のパンドラ Vol. 8 フォンティーンは歌う」

激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪

 

こんにちは。
1か月の休載を挟んで「青のパンドラ」Vol. 8 が『flowers』9月号に掲載されました。
今回は20ページと短めですが、内容は濃かったなあと思います。


では早速、扉絵をどうぞ!

 

小学館『flowers』2023年9月号より。2つ下も同)


優雅に楽器を奏でるフォンティーン。
いつも持っている竪琴とは違いますが、古代の楽器でしょうか(ご存じの方、ご教示くださいませ)。
レースのような波は、血の神の壺が引き上げられた海のイメージ?


◆◆◆◆◆◆


物語は、そのフォンティーンを解放するため、バリーがポーの村に現れた続きから。


大老から与えられた炎の剣を振るい、塔の地下で兄の体を縛りつけていた固いバラの根を焼き切っていくバリー。
燃える地上のバラ。
ついに自由の身になるフォンティーン。


フォンティーンは意識がないのかなと思っていましたが、ちゃんとありました。
1000年の間、バラの根を通して風の声を聞き、季節を知っていたのだとか。
ということは、クロエが自分に恋して時々会いに来たことも知っていたのかな。


アレッポの城が燃え、母アドリアが消えた時の記憶も鮮明でした。
大老が温情から自分を殺さなかったことも。


大老が、愛していたアドリアではなく息子の方を生かしたのは、ちょっと不思議です。
本当は2人とも消すつもりだったけど土壇場で気が変わったのでしょうか。
まあ、だからこそ大老も、いまだに引きずっているのでしょうが。


地上のバラが燃え盛る中、フォンティーンは村人達を前にして言います。


「…私の気を吸って咲き続けたバラを
おまえたちは食って安穏と過ごしてきたわけだな」


1000年間バラにエナジーを吸い取られていたのに、なぜフォンティーンの体が少しも衰えないのか謎ですが、それはとりあえず置いといて。


フォンティーンに駆け寄って言うシルバー。


「あなたが村長(むらおさ)となり
この村を治められるのなら従います!」


さすが一族の古参!
シルバーは老ハンナがポーの村を造った頃からの仲間で、フォンティーンの蛮行をさんざん見てきたし、大老が城を燃やしたいきさつも直に知っているんですよね。
だから村を守るためには従うしかないと判断したんでしょう。
でも大多数の村人はフォンティーンの本当の恐ろしさを知らないから、たてついて消されちゃう。


しかし炎の剣で全てのバラを燃やそうとするフォンティーン。


「おまえたちに これ以上
私のバラを与える気はない!」

「こんな村 チリとなって
みんな消えてしまえ!」


ああ、バリーの封印が解かれると聞いた時のクロエの言葉が思い出されます。


「村はまた大混乱になるわよ!
バリーはまたバラを枯らして逃げ出す!
そうね!
大老は村を壊滅させるつもりね!
そうよ 世界の終わりが来るのよ!」


この言葉が現実になるんでしょうか。
バリーとフォンティーンによって。


そしてフォンティーンは、バリーが用意した住みかへ。
その住みかって、例のローマのカタコンベ(地下墓地)…ですよね?
バリーが何百年もかけて人骨と石で造った塔のあるカタコンベ


あの塔のことは、ずっと気になってたんですよ。
フォンティーンを解放するために必要なのかなと思っていたんですけど、帰って来た時に迎えるためだったのか。
そこを拠点に新たな王国を造るつもりなんでしょうか。


◆◆◆◆◆◆


この場面で気になったことと驚いたこと。


①かつてフォンティーンが大やけどを負って死にかけた時、壺から青い霧が出て全身を覆った


フォンティーンは大老によってポーになったようだけど、血の神に新たな命を吹き込まれたということでしょうか。
バリーは「もしかしたら あの大老と同じぐらい強いかも…!」と言っていますが、どうなのか。


城が燃えた時、フォンティーンは大老の力によって体を動かせなかったのだから、やはり大老の方が強いのだろうと思うんですが。
でももしかしたら血の神に何か特別な力を授かったかもしれないですね。


②ポーの村は議会制だった


なんと、村には評議会があったんですね!
そうか、クロエやシルバーが独断で物事を決めるわけじゃなかったんだ。


じゃあ例えば、「今年はどの人間をエサにしようか」とか、エドガーが村と契約を結んでいた期間は「今年は誰がエナジーをもらいに行くか」とか相談してたんですかね。
それにしても出てくるなり一瞬で消されたジェーンって可哀想すぎる…。


③ゴールドの再登場


今号で何が一番驚いたかというと、これですよ!
いや、前回、村人の中にロリータファッションの若い娘がいるなあとは思っていたんですが。


ゴールド。
「春の夢」でシルバーと一緒にエドガーのエナジーをもらいに来て、2コマ描かれただけでその後全く登場せず、「何のためのキャラだったんだろう?」と思っていたら最後の最後にクロエにエナジーを絞り取られてミイラ化。


「この子の存在理由って干からびることだったのか。なんと不憫な…(涙)」と思い切り同情していたら。
まさかの再登場!
しかも前より可愛くなってる!


こちら初登場時(1944年)↓

 

(フラワーコミックススペシャル『ポーの一族 春の夢』2017年 小学館より)


こちら現在(2016年)↓

ね、可愛くなっていますでしょ?
そういえばケイトリンも再登場時にはキレイになってましたっけ。
こうして出てきたからには何か役割があるはずで、どんな活躍をするのかケイトリンともども楽しみです。


ついでと言っては何ですが、こうして見るとシルバーも初登場時は今と違って渋かったですねー。


◆◆◆◆◆◆

 

さて、アーサーの家では人間になってしまったアランをどうするか会議中。


アーサー→人間界に戻す方がいいのではないか

マリアとアイザック→一族の秘密を知り過ぎているから殺すしかない

オリオン→血の神が行き場を失うから殺してはダメ

アイザック→記憶を消して放り出そう


え、ちょっと待って。
記憶操作?
ニセの記憶を植え付ける?


そんなことが出来るんだ!
いやあ、いろんな能力を持つ人達がいるんだなあ。


それにしても皆勝手なことを言っていますが、アランと一緒に暮らすという選択肢は誰にもないわけですね。
なぜなら人間は「食料」だから。


だけどエドガーの気持ちはどうなんだろう?
前回「無理だ」ときっぱり言っていたけれど、アランと暮らしたいはずだと思うんですが。


で、思い出したのですが、「秘密の花園」Vol. 10 でシルバー、エドガー、アランがリデルの話をしていましたよね。


あ、もしかしたら「リデル・森の中」を未読の方もいらっしゃるかもしれないので補足すると、リデルは人間の小さい女の子です。
エドガーがやむをえずリデルの両親を殺してしまったので見捨てておけず、数年間育てて祖母の元に帰しました。


エドガーは始めからリデルを家に帰すつもりだったんでしょうが、「秘密の花園」でアランはこう言い放ちましたからね。


「あれはエサだもん」

「『赤ずきんちゃん』みたいに太らせて
エドガーが喰うと思ってた」

「でも逃がしちゃうし」


そこに「それを言うなら『ヘンゼルとグレーテル』だろ」とツッコミを入れるエドガー。
この会話が面白くて好きなんですけど、これって要するに特別な情を寄せている相手でない限り、バンパネラにとって人間は等しく「食料」としか見なされないってことですよね。


つまりアランはエドガーとなら一緒に暮らせるかもしれない。
でもエドガーの目の届かないところで誰か他のバンパネラに喰われてしまうかもしれない。
うーん…。


「人間のアランをどうするか」という議論はまだ続きそうですが、個人的にはそれよりも「どうしたらアランをもう一度バンパネラにできるか」を考えてもらいたいです。


だって人間に戻ったその日からアランは年をとり始めているんですよ。
11月30日の誕生日が来たら15歳になっちゃうじゃないですか!
私にとって「ポーの一族」は「永遠の14歳のエドガーとアランの物語」なので、アランがエドガーより年上になったら、もう「ポーの一族」じゃないんですよ――!(←必死)


えーっと、今は何月?
ファルカがアーサーから「エドガーが現れた」と聞いたのが2016年5月(「ユニコーン」Vol. 1)。
ミュンヘンで会ったのは5月? 6月?
それからエドガーはアーサーの家に帰って来て、すぐにベニスへ行き、影の馬車でヨークまで行って帰って…
まだ6月頃?


6月だとしても11月30日まで5か月しかないんですよ。
その間にアランをポーに戻さないと!


ふと思ったんですが、この「青のパンドラ」でアランの誕生日が公表されたのは、もしかしてタイムリミットを設けるためだったんでしょうか?
エドガーの誕生日は萩尾先生がご自身と同じ5月12日と決めておられますが、作品中で言及されたことはありません。


アランは何の情報もなかったのにどうして突然誕生日が出てきたんだろうと、実は前から引っかかっているんです。
マーク・トウェインの誕生日と同じ」ということにばかり気を取られていましたが、むしろ日付の方が重要なのかも。


ちなみにマーク・トウェインハレー彗星が現れた年に生まれて次に再来した年に亡くなったという話から、彗星が何か関係するのかなと思ってちょっと調べてみましたが、2016年に特別なことはなかったようでした。
ただ『ハックルベリー・フィンの冒険』は、のちのち出てくるんじゃないかなという気がしています。


皆が議論する一方で、当のアランはベッドで泣きじゃくっていたり、息を止める練習をしたりと可愛いです。
マリアとアイザックに生意気な口をきくのも可愛い。
でも人間の体にはなかなか慣れないようで苦労していますが、一体どうなるんでしょうか。
早くポーに戻れますように!


「青のパンドラ」は来月は再びお休みで、Vol. 9 は9月末発売の11月号とのこと。
発売を楽しみに待ちたいと思います。
なお10月号は田村由美先生のデビュー40周年記念号で、萩尾先生と田村先生のプレミアムトークが掲載されるそうです。


◆◆◆◆◆◆


「青のパンドラ」Vol. 1~7 の感想はポーの一族カテゴリー一覧からご覧頂けます。よろしければどうぞ。

ポーの一族 カテゴリーの記事一覧 - 亜樹の萩尾望都作品感想ブログ

 

~2023. 8. 12 追記~


扉絵の楽器について家族が教えてくれました。
モンゴルの馬頭琴だそうです。
確かに馬の頭の飾りが付いていますね。

 

 

(102)「ポーの一族」新シリーズ年表

ポーの一族」の新シリーズでは紀元前まで遡って一族の歴史が紐解かれています。
記事(89)の中に「秘密の花園」までの年表を入れていましたが、その後の内容を加えてこちらに独立させました。
 
今後も必要に応じて加筆修正していきますので、新シリーズを楽しむ一助として頂ければ嬉しいです。
間違いがありましたらご指摘ください。
 
年表には旧シリーズの出来事も一部含まれています。
末尾に( )が付いている項目が新シリーズで、複数の出来事がある場合は最後の項目にのみ付いています。
 
( )内の略語は章のタイトルです。
春=「春の夢」
ユ=「ユニコーン
秘=「秘密の花園
青=「青のパンドラ」
 
略語の後ろの数字はVol. を表しています。
 
・・・・・・・・・・・・
 
【BC】
 
2000より何千年も前「血の神」が海の淵から引き上げられる(青4)
 
2000頃(青銅器時代イオン(大老ポー)、ミノア文明が栄えるエーゲ海上の「ポーの島」に住む。16歳の時、アルゴスに血の神の世話を任される。100年ほどかけて不死人となる(青4)
 
1628頃 ポーの島、地震と海底火山の爆発により海中に沈む。大老、その数年前にハンナを不死人とする(青4) 大老・ハンナ・ベルナドット・オリオン、壺(血の神)を持ってトロイア→ペルガモン→イタリアと移動する(青3)
 
【AD】
 
   4人、ローマ近くの森や村に住む(青3)
 
3世紀    大老、サビーナの村でアドリア・フォンティーン・バリーを一族に加える(ユ4) (青1) (青3)
 
?         ローマはキリスト教が国教となり、5世紀の初めに蛮族に略奪されたため北へ移動(青3)
 
?         ラヴェンナで二手に分かれる。 大老・ハンナ・アドリア・フォンティーン・バリーはアルプスを越えて北へ。ベルナドット・オリオンはイタリアに留まりベニスへ(青3)
 
7~8世紀頃? マリアとアイザックポーの一族に加わる(青1)
 
830頃  ハンナ、イングランドのヨークシャーでクロエをポーの一族に加える(ユ3)
 
?         ハンナ、クロエやシルバーらブリトン人の仲間とヨークシャーの谷にポーの村を作る(春2) (ユ3) 
 
?         大老、フォンティーンやバリーらローマ人の仲間8人とトリッポの城に住む(ユ3)
 
1066     大老、トリッポの城の仲間を殺す。フォンティーンはポーの村の地下に囚われる。その冬、バリーが村に来る(ユ3) (青1)
 
1067     バリー、冬が終わった後、バラを枯らして逃げる(ユ3)
 
1166頃 約100年後、大老とハンナ、ポーの村を出てウェールズのスコッティ村へ(ユ3)
 
14世紀  ファルカ、紅ルーシ国でバリーによってヴァンピール(吸血鬼)になり、100年ほど共に暮らす(春3) (ユ1)
 
15世紀 ルチオ、シビュラの連絡係を通じてバチカンと連絡を取り始める(ユ2)
 
1754     ハンナ消える。エドガー、ポーの一族に加わる
 
1757     リーベルポーの一族に加わる
 
1879     リーベルとポーツネル男爵夫妻消える。アラン、ポーの一族に加わる
 
1888. 9 エドガーとアラン、クエントン館へ行く(秘1)
 
1889. 8 アーサー、ポーの一族に加わる(秘10)
 
1890     大老ベネチアのコンサートに来る(ユ2)
 
1925     エドガーとアラン、パリ万博でファルカと出会う(春2)
 
1934     エドガー、ロンドンでオービンと出会う
 
1944     エドガーとアラン、ウェールズアングルシー島ブランカと出会う。ダン・オットマー、サルヴァトーレによりルチオ一族に加わる。ブランカ、ファルカによってヴァンピールになる。クロエ、ポーの村のバラを枯らして逃げる。エドガーとアラン、パリへ行く(春1~6)
 
1945     エドガーとアラン、パリでブランカに会う(ユ2)
 
1957     エドガーとアラン、リバプールにロビンを迎えに行くがいなかった(小鳥の巣) (青6)
 
1958. 2 ベネチアのコンサートでエドガー、ベルナドットと出会う。アラン、バリーと出会う (ユ2)
 
1958     エドガーとアラン、ロビンを探してミュンヘンへ行き、エドガーがアーサーにマリエン広場の絵葉書を出す(青1) (青6)
 
1959     エドガーとアラン、西ドイツのガブリエル・スイス・ギムナジウムにロビンを迎えに行く
 
1963     アラン、バリーと再会(1958以来)。地下の天国に連れて行かれる(ユ4)
 
1966     オービンの集会とクエントン館の火災
 
1975.6  ロンドンでエドガー、クロエに再会。アラン、バリーに再会(ユ3)
 
1976.6 アラン炎の中に消える。バリーが目撃しエディスを救う(ユ3) エドガーの消息も途絶える
 
2000    クエントン館にアーサーのバラのアーチ完成。オービン、ファルカ、ブランカが訪れる(秘10)
 
2015.12エドガー、アーサーの所へ行く(ユ1)
 
2016 エドガー、ミュンヘンでファルカ、シルバーに再会。バリーと出会う(ユ1) アラン復活(青5)
 
・・・・・・・・・・・・
 
ポーシリーズの作品ごとの年代は別の記事にまとめています。よろしければご参考までにどうぞ。

 

(101)「青のパンドラ Vol. 7 大きく息を吸って」

激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪

 

こんにちは。
『flowers』7月号に「青のパンドラ」Vol. 7 が掲載されましたね。

 

小学館『flowers』2023年7月号より)


扉絵はマジシャンになったエドガーとアランでしょうか。
お揃いの燕尾服にシルクハット。
バラと小鳥がメルヘンチック ♪


…なんて悠長なことを言ってる場合じゃありませんよ。
今号はものすごい衝撃で!


あの、念のために伺いますが、皆様もうVol. 7 を読まれたんですよね?
もしまだの方がいらっしゃいましたら、これからとんでもないネタバレになりますよ。
言いますよ?
いいですね?

 

 

まさかまさかアランが人間に戻っちゃうなんて―――― !!!!


いやもう、この新シリーズが始まって以来驚きっぱなしではありますが、個人的に今度のは「ユニコーン」Vol. 1 でエドガーがトランクを抱いて「アランはここにいるよ」と言った時に匹敵する最高レベルの衝撃でした。


呼吸する
脈がある
体温がある
お腹がすく
のどが渇く
トイレに行く


血の神が体内に吸い込まれてこんなことになるなんて誰が想像したでしょうか。
(もし予想した方がいらっしゃったらすごい!)


しかもどうしたら元に戻るのか誰にも分からない。
もし人間のままなら、エドガー達とはもう一緒に暮らせない。
なぜなら人間は「食料」だから。


これ、アランの身になったらたまりませんよ。


目覚めたら40年たっていて、「実は体が黒い石みたいに縮んでいたのが今は元に戻ったけど中に血の神がいるんだよ」と言われ、そのせいで人間になってしまって、もうエドガーと一緒に暮らせないかもしれないなんて!


こんな現実を一気に突き付けられたら普通は思考停止でしょう。


でもショックなのはエドガーも同じなんですよね。
死ぬほど求めていたアランがやっと復活できたのに、まさかこんな事態に陥るとは…。


それにしてもエドガーのアランに対する独占欲も、なかなかですね。
オリオンの「ぼくが(血の神と)一番親しいから…」という言葉に「アランと一番? ほほう」って嫌味っぽく返すところ、笑う場面じゃないはずなのに面白すぎました。


そのオリオンも、血の神が壺を失って困っているだろうと心配でたまらない。


誰もかれも途方に暮れていて、一体どうなってしまうんでしょうか?


◆◆◆◆◆◆


この場面で楽しかったのは、エドガーとアランの服の好みを少しだけ聞けたこと。


トラディショナルな服をよく着るのは無難で楽だから。
アランは衿の先が丸いピーターパンカラーが好きだけどエドガーは違う(確かにそうですね)。
アランはモスピンクが好き。


時々個性的な服も着ていますが、ファッションに関しては2人ともあまり冒険しないタイプなのかな。
でもシルバーじゃないけど服の流行は移り変わりが早いから、長く着るには上質でベーシックなものが正解かも。


彼らは今回、アーサーがオンラインで買ってくれたVネックのニットをお揃いで着ていますが、新シリーズでは番外編も含めてVネックニットの着用率が高めのような。


ところでアーサーは2人のために色々と買ってくれるし、もちろん自分のためにもお金が必要なわけですが、どうやって収入を得ているんですかね?


工場でつくっているというバラ油やバラ水でビジネスとか。
レスターのクエントン館をホテルに改装して経営とか。
絵を描いて売っているとか。
意外と株で儲けていたりして。


それと、アランの好きなハチミツやパンは、いつから用意していたんだろう?
そんなどうでもいい些細なことが、つい気になります。


◆◆◆◆◆◆


一方、ポーの村では、結界を解かれたバリーが炎の剣を携えて姿を現しました。


一陣の風ののち、カメラがバラの近景から遠景へと引いていき、雨と共にバリーのアップで終わるのが嵐の前触れのよう。
この最初のページを含めて5ページ半が全て横長のコマで、バリーと村人の対立の構図が強調されます。


ラスト、ついにフォンティーンのもとへ辿り着いたバリー。
本当に兄を解放するのか。
するとどうなるのか?


もう、あっちもこっちも大変です!
Vol. 7 は急がずに衝撃をたっぷりと味わわせてくれた回でした。


早く続きが読みたいですが、来月号はお休みで次は7月28日頃発売の9月号とのこと。
うーん、焦らされますね!


◆◆◆◆◆◆


「青のパンドラ」Vol. 1~6 の感想はポーの一族カテゴリー一覧からご覧頂けます。よろしければどうぞ。

ポーの一族 カテゴリーの記事一覧 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

 

ごあいさつ②~ブログのタイトルを変更しました

お陰様でこのブログも先日上げた記事で100本目となりました。


こんな自己満足でしかないニッチなブログにもかかわらず、いつも読んでくださる方、たまーに思い出して見てくださる方、うっかり迷い込んで来てしまった方、皆様どうもありがとうございます。


思い起こせば6年前、「ポーの一族」の復活を機に萩尾ファンに舞い戻り、勢い余って始めたブログでした。


思い立ったが吉日と準備もなしに始めたので、タイトルも行き当たりばったり。
一応「何か気のきいたタイトルはないか」と10分位は考えたものの思いつかず、とりあえず付けたのが「亜樹の萩尾望都作品感想日記」です。


何のひねりもなくて安直すぎるけど、どうせ萩尾漫画のことしか書かないんだからこれでいいやと思っていたのですが…
2年以上たった頃、ハタと気付きました。


月に1回しか更新しないのに「日記」ってサギじゃん!?


これはタイトルを変えるべきではないのか。
しかし今更変えるのもどうなんだろう。
変えるなら何かきっかけが欲しいよね。


などと考えた末、もし記事が100までいったら変更しようと決めたのでした(先送りとも言う)。
そしてこのたび目標に達しましたので、マイナーチェンジしたことをここにご報告いたします。


新しいタイトルはこちら。
「亜樹の萩尾望都作品感想ブログ」


はい。地味すぎる変更でどうもすみません。
しかも安直さは今まで以上。


お詫びついでに言うと、当初は毎月10日頃の更新を目指していたのがだんだん遅くなり、最近はグダグダになっております。
申し訳ありません。


今後ますますグダグダになるかもしれませんがネタ切れするまでは細々と続けたいと思っておりますので、お付き合い頂けますと幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。


亜樹

 

 

(100)「青のパンドラ Vol. 6 アラン目覚める」

激しくネタバレしております。ネタバレNGの方は申し訳ありませんが作品をお読みになってから、ぜひまたいらしてくださいね ♪

 

こんにちは。
「青のパンドラ」の連載が再開されましたね!
今月号は表紙イラストも巻頭カラーも ♪

 

小学館『flowers』2023年6月号より。以下同)


何だか爽やかですね。
お揃いのセーラー服、髪に花。
バカンスなのかな。

 

 

こちらは扉絵です。
とてもきれいですね!
エドガーがいつもと違う感じで可愛い。
アランは「はるかな国の花や小鳥」を思い出しました。
草の上で昼寝していたらエドガーにバラの花束で起こされる、あの素敵な場面みたい。(分かります?)


さて、前回のVol. 5 は、遂にアランが復活したところで終わったんでしたね。
ただし血の神が体内に吸い込まれてしまったため爪だけが青い状態で。


今回のVol. 6 は3つの場面から成っています。


1 アーサーの家
2 ファルカとブランカの家
3 再びアーサーの家


では早速、この順番に感想を書いていきたいと思います。
今回も長文です。毎度すみません。


◆◆ 1 アーサーの家 ◆◆


40年ぶりに奇跡のように蘇ったアラン。
でもエドガーは手放しでは喜べない。
なんせ40年間も炭状態だったし、血の神が中にいるし。


気分はどうか、体は元通りか、ちゃんと動くか、痛いところはないか、過去の記憶はあるか。
心配でたまらないながらも万感胸に迫ってアランをギュッと抱きしめるのを見て、初めてこちらも「良かったねー!!!」となりました。


どうやら血の神はアランの体の奥深くにおとなしく潜んでいる様子。
で、エドガーが名付けた爪の色が「青のパンドラ」。
章のタイトルはこれでしたか!
でもこの血の神、いつ暴れだすのかと不安です。


一方、エドガーの態度に戸惑いつつ、次第に現実を理解していくアラン。
自分が40年間眠っていたと知った時の衝撃たるや、もう…!
それまで「眠りの時季」で長く眠ったことはあっても、せいぜい1、2年でしょうからショックが大き過ぎますよ。


でも40年と知ってすぐに「エドガーきみは? その間 何をしていたの?」と尋ねるところが可愛いな。


その前にエドガーは、アランから「あの火事のせいで…ぼくは眠っていたの?」と聞かれて「そうだよ……眠っていた」と答えるんですが、その時の顔が個人的にたまりません。

 

 

優しい嘘をついている複雑な表情に見えるんです。
本当は眠っていたというよりグール化して炭状態だったんですけど、いきなりそんなこと言ったら可哀想ですもんね。


でも後でエドガーが「きみも目覚めて もとにもどった……」と言った時、アランの中にも「ただ眠っていただけじゃないのか?」と訝しむ気持ちが生まれたようです。


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この場面では、アランが火事のことを思い出し、真っ先にエディスを心配して号泣するのを見て「ああ、本当にアランが蘇ったんだ」と思えたし、ここでちゃんと旧シリーズの最後と繋がった気がして嬉しかったです。


更に嬉しかったのは、エディスのその後が分かったこと。
アーサーは気にかけて見てくれていたんですね。


エディスはイタリア人の青年アランと結婚し、古物商の跡地に「エディスとアラン」というレストランを開店。
現在は長女が店を継ぎ、エディスは引退して孫(双子?)の子守り。


エディスがアランという青年に惹かれたのは、もしかしたら最初は名前からだったのかなあ。
2016年には54歳のはずなので引退にはちょっと早い気もするんですが、きっと幸せなんでしょうね。
時折アランのことを思い出してくれているといいな。


そしてアランは、遠くからエディスの幸せそうな姿を見られるといいですね。


-・-・-・-・-・-


この場面には印象的なセリフが2つありました。


1つは1958年にミュンヘンのマリエン広場からアーサー宛に出した絵葉書を見て、アランが言った言葉です。


「覚えてるよ
…この頃 ぼくら
ロビン・カーをさがしてたんだ」


そ、そうだったのか!
マリエン広場に行ったのは、ロビンを探す旅の途中だったのか――!


「小鳥の巣」に、エドガーと同級生の次のような会話があります。
(青い文字がエドガーです)


「(ロビンは)転入生? イギリス人だね?」

「そう でもミュンヘンからきたんだよ」


更にエドガーはキリアンにこう言っています。


「でも彼が7つの時
彼の両親は離婚して
彼は母親とリバプールへ行ってしまった
2年まえ大きくなったロビンを迎えに
リバプールを訪れると
――彼はいない
父親がスイスへ つれていったと聞いた
ぼくたちは追って
アルプスをくだりラインをくだり
結局父親はロビンを学校に残して
再婚しイタリアへ――」


「小鳥の巣」は1959年の話なので、セリフの中の「2年前」とは1957年です。
そして「ユニコーンVol. 2」に、1958年2月のベネチアのコンサートでエドガーとアランがロビンの話をする場面があります。


これらを整理すると次のようになるかと思います。

 

1957 リバプールにロビンを迎えに行くが、父親がスイスに連れて行ったと聞く

1957. 5 ロビン、死亡

1958. 2 ベネチアのコンサートで「ロビンをファルカにやったら?」などと話をする

1958 スイスにロビンを迎えに行くが、いなかったので探し始める。ミュンヘンでマリエン広場に立ち寄る

1959 ドイツのガブリエル・スイス・ギムナジウムに迎えに行く


どうでしょうか?
もし間違いがあればご指摘頂きたいのですが、とりあえず一本筋が通ってスッキリした気分です。


-・-・-・-・-・-


もう1つ印象に残ったセリフは、場面の最後のエドガーとアランの会話です。
(緑の文字がアランです)


「アーサーの庭は変わらないね…」

「人間は時に運ばれていく
でも ぼくらは変わらない」


ここを読んで、先ほど書いた「ユニコーンVol. 2」の会話の続きを思い出したんですよ。


「成長すればサンタ・クロースも信じなくなる
子供の魔法はいつか…消えるんだ」

「魔法は消えても ぼくらは消えないけどね」


ニュアンスが似ている2つの会話、どちらも心に響きました。


◆◆ 2 ファルカとブランカの家 ◆◆


一方、ファルカとブランカの家。
ファルカがヨークの旅から帰るとすぐにバリーが現れます。
ファルカにとっては疫病神のような男が。


悲願だった炎の剣を手に入れたにもかかわらず、ここへ来てフォンティーンを解放すべきか悩み、ファルカの意見を聞きたいと言うバリー。
なぜなら大老ポーの言葉が気になるから。


「千年しばられていた者を解放するのが
その者にとって よいことかどうか 
よく考えろ 私は保証しない」


大老は、なぜこう言ったのか。
それは大老自身が迷いの中にいたからではないでしょうか。


かつて大老は一族の掟に従わず暴虐を行うフォンティーンを地下に閉じ込め、愛していたアドリアや他の仲間を消しました。
でも、それでよかったのか、どうすればよかったのかと悩んでいる。
長い時がたち、自分のやり方や自分の作った掟はもう役に立たないのかもしれないと揺らいでいる。


バリーは最愛の兄を閉じ込められたことで復讐の鬼と化しました。
でも今、兄にとって何がよいことなのかと揺らいでいる。


ファルカは愛する家族を殺した者達に復讐できたからヴァンピールになってよかったと言う。
しかし家族の命が奪われた日のことを思い出すと今でも狂おしい。


こうしたことを私はまだ上手くまとめることができません。
ただ、この場面には萩尾先生のメッセージが込められているように感じています。


今号の扉絵のアオリは


「“はるかなる一族”が この世紀に問いかける!!」


私達が問いかけられていることは何なのでしょうか。


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バリーはフォンティーンとアドリアに育ててもらったという意識が強く、兄の望みは何でも叶えたい、再び王国をつくってやりたいと思っています(ファルカに言わせるとブラコン)。


その気持ちは分かるんですけど、ちょっと疑問。
バリーはフォンティーンによって「ユニコーン」と名付けられ、誰もその「本名」を知りません。
唯一、本人から教えられたアランが「ユニコーン」と呼ぶと、バリーは逆らえませんでした。


これって「ユニコーン」と呼ばれると逆らえない暗示がかかっているのでは?
もしそうならバリーのフォンティーンに対する忠誠心にも似た兄弟愛は、半分は作られたものなんでしょうか。


そしてブランカが炙り出したバリーが本当に望むもの。
それは決して取り戻せない、人間だった頃の幸せな家族の時間。
ファルカもブランカも想いは同じ。
そしてエドガーも。
「メリーベルと銀のばら」を思い出して、ちょっと切なくなりました。


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この場面での他の新事実。


①バリーはカラスを使う。


ファルカが鳥を使うので当然と言えば当然なんですけど、今まで考えたことがなかったです。
だから他の人の居場所が分かるんですね。


エナジーから生い立ちも読み取れる。


「春の夢」でアランはエドガーからエナジーをもらいながら「きみの考えが伝わってくる」と言っていました。
秘密の花園」でエドガーがブラザーのエナジーを奪った時には、ブラザーの記憶が入り込んできました。

 

そして今回、赤毛の男はフォンティーンからエナジーを送り込まれ、フォンティーンの生い立ちを読み取りました。
フォンティーンの記憶が入り込んできて、それを辿ったということでしょうか。
なるほど、面白いです!


あれ、じゃあアルゴスにカミラの家や話し方が分かったのも、エナジーから情報を得たのかな。


◆◆ 3 再びアーサーの家 ◆◆


ここではアランがポーの村について言ったことに、ちょっと驚きました。
エドガーがアランに「いつかポーの村に連れて行く」と約束していて、村の入口を2人で探したけれど見つからないのだと。


え、2人の間ではそんな話になってたの?


秘密の花園」で彼らがアーサーの館に辿り着いた時は村の入口を探した帰りだった、というのは本当なんでしょう。
エドガーがアランを仲間に加えて9年後の1888年の話です。


すぐにシルバーが館にやってきて、アランを一族として受け入れることはできないと通告し、エドガーだけ村に帰ってくるよう説得したんですよね。
それをエドガーは突っぱねた。


「春の夢」では、1944年にクロエがエドガーに同様のことを言って、エドガーはまた突っぱねています。


だからエドガーがアランに、いつかポーの村に連れて行くと約束していたなんて意外でした。
エドガーとしては、いつかアランを受け入れてもらえる日が来るかもしれないと希望を持っていたんでしょうか。


でもエドガーはずっとアーサーやシルバーと繋がりを持っていたはずなので、村の場所は知っていたんじゃないの?
入口を探していたのはアランに対するポーズ?


いや、でも「ピカデリー7時」では実際に探していたんですよね。
(「ピカデリー7時」は年代が不明なのですが、私は1900年代前半頃ではないかと思っています。)


あの時期はアーサーやシルバーと疎遠だったのかな。
もしや村の入口って実は移動するとか?


そもそもエドガーはなぜアランを村に連れて行こうとしたんだろう?
ポリスター卿がリリアを一族に加える承認を得るのに乗じて、アランも許してもらえるよう頼むつもりだったんでしょうか。


よく分かりませんが、アランも何か秘密があることに気付いてしまいましたね。


そして最後に現れたオリオン、怖かったです!
アランに何するつもり!?


エドガーも、「何もハサミで!」と思ったけど、それだけ必死なんですね。
飛び散る血はオリオンの?
アランの?
血の神が動き出す?


次回もまた急展開しそうで目が離せません!


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「青のパンドラ」Vol. 1~5 の感想はポーの一族カテゴリー一覧からご覧頂けます。よろしければどうぞ。

ポーの一族 カテゴリーの記事一覧 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記

 

 

(99)「青のパンドラ Vol. 6」予告カット

こんにちは。
「春に連載再開」とされていた「青のパンドラ」が4月28日頃発売の『flowers』6月号から掲載されるというお知らせが出ました。


前回のVol. 5 が2月号だったので4か月ぶりの登場となります。
早く再開して頂けて嬉しいです。


5月号に掲載された予告カットがこちら。

 

 

 

カラーは優しい色合いで美しいですね。
背景のバラが人物に溶け込んでいるのが幻想的で素敵です。
アランの方がエドガーより顔の影が濃く見えるのは、何か意図があってのことでしょうか。


モノクロは軽快ですね。
このアランも表情がちょっとミステリアス?
いつもと違う雰囲気を感じます。


アオリは共通で


「ついに復活したアラン…!!
エドガーにとって
望んでいた日常が戻ってきた!?」


いや、きっと望んでいた日常とは違うんじゃないでしょうかね。
どうなるのかドキドキです。
発売日までにもう一度単行本を読んで心の準備をしておかないと。
表紙&巻頭カラー、楽しみです!


ということで、今月は予告の紹介だけでどうもすみません。
来月は感想を書きます!

 

 

(98)フラワーコミックススペシャル『ポーの一族 青のパンドラ 1』

こんにちは。
先月、『トーマの心臓』プレミアムエディションと同時にフラワーコミックススペシャル『ポーの一族 青のパンドラ』第1巻も発売されました。


皆様、きっともう読まれたことでしょうね。
遅ればせながら私もやっと読みました。

 

ポーの一族 青のパンドラ (1) (フラワーコミックススペシャル)

 

カバーの表は月の舟のエドガーとアラン。
この絵が好きなので使われて嬉しいです。


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単行本でまず気になるのは掲載誌との違い。


今回は主に背景に手が加えられている箇所が沢山ありました。
何もなかったところに絵が描かれたり、スクリーントーンが貼られたり。
背景以外でベタが塗られたり、逆に消されたところも。
とても小さい絵ですが、エドガーの顔が描き直されたコマもありました。


他には吹出しの形やモノローグの位置の変更、セリフ(意味は同じ)や表記の変更など。
新たにVol. 3 にストラヴィンスキーの注釈も入りました。


萩尾先生のこだわりが感じられ、こうして完成形に近づいていくんだなあと思いました。


実は変更されるかどうか注目していたセリフがあったのですが、そこは変わりませんでした。
それがこちら。

 

(p. 34より)


1958年のミュンヘン、マリエン広場。
からくり時計を見上げながら語りあう2人。
とても素敵な回想場面です。


ここのアランのセリフ


「こないだベニスで聞いた
バリーの歌った『舟歌(バルカロール)』
よかったな」


これは「ユニコーンVol. 2 ホフマンの舟歌(バルカロール)」での話ですよね。


1958年2月、アランはエドガーと一緒にベニスで開かれたコンサートに行き、バリーが「ミューズ」としてバルカロールを歌うのを聴きます。
その時ファルカがバリーを「ダイモン」と呼ぶのを聞き、コンサートの後で本人から「ユニコーン」という「本名」を教えられました(本当の意味での本名は「バルトロメオ」)。


その後、同じ年にエドガーとマリエン広場に行くわけですが、その間バリーには会っていません。
アランが次にバリーに会うのは5年後の「ユニコーンVol. 4 カタコンベ」で、この時初めて「バリー」という名前を知ります。


つまりマリエン広場の時点ではアランは「バリー」という名を知らないはずなんですけど、何か理由があって変更されなかったのでしょうか。
ちなみにエドガーがバリーに初めて会うのは、ずっと後の2016年です。


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ではVol. 1~5 を通して読んで改めて思ったことを。


やっぱり一番気になるのはアランと血の神の関係ですよね。
どれくらい元のアランで、どれくらい血の神なのか?


もしかしたらそれを測るバロメーターになるかもしれないと思うのが、なにげに何度も出てくるアランの愛読書『ハックルベリー・フィンの冒険』です。


はじめは単にアランの隠れた一面を表すエピソードなのかなと思っていたのですが、それにしては出過ぎる気がするんですよね。
で、本に興味を示せばアラン度(と言っていいのか?)が高いことになるのかなあ、なんて。
うーん、ちょっと苦しいかな。


それよりはもう少し有力なバロメーターになりそうと思えるのがエディスの存在です。


先日、「アランはエディスを仲間に入れようとしていたのだから、エディスの安否を聞いてほしい。エディスに会いたいと思ってほしい」というコメントを頂きました(みかんさん、ありがとうございます!)。


私も全く同感です。
アラン自身に40年間眠っていた自覚があるのかも謎ですが、もし元のままの記憶と感情があるなら絶対にエディスが助かったかどうか心配するはずですよね。
それを口にするか否かでアランの状態が分かる気がするんですが、どうですかね。


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そして血の神とは何者か?という謎も大きい。
そもそも太古の昔にどこから来たのか。
…もしや地球外生命体か?


なんて考えると、がぜんクロエの予言めいたセリフが気になりまして。
Vol. 4 でクロエはシルバーから「バリーにもポーの村の封印を解く」と聞いて、言うんですよね。


「村はまた大混乱になるわよ!
バリーはまたバラを枯らして逃げ出す!
そうね!
大老は村を壊滅させるつもりね!
そうよ 世界の終わりが来るのよ!」


ここでまた『ハックルベリー・フィンの冒険』に戻ると、アランはこの物語が好きだっただけでなく著者のマーク・トウェインと誕生日が一緒だと喜んでいました。
マーク・トウェインの生まれた年にハレー彗星が現れ、本人が予言した通り彗星が再来した年に亡くなったと嬉しそうに話しています。


地球外生命体。
世界の終わり。
彗星の出現。


…え、なんか繋がってしまう?
まさか本格SFドラマが展開しようとしているのか。
いやいや、これは「ポーの一族」なんだから、さすがにそこまでは…
と思いつつ、ありえなくもないような。


あっ、お断りしておきますがこれはあくまで妄想ですから、くれぐれも本気になさいませんように。


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最後に、連載再開に向けて他に気になることを箇条書きに。


バリーがフォンティーンを解放するとどうなるか

語られるかもしれないルチオの歴史

アルゴスとカミラ

ファルカとブランカの消えてしまう子ども達

消えかけている(?)ファルカ

アーサーの亡き隣人と犬のシーザー

ライナーの病弱な娘


予告では再開は春とのこと。
今年は暖かくて桜も早く咲いて関東住みの私としては体感的にもう春なのですが、間もなくでしょうか。
とても楽しみです!


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この本には楽しいショート番外編「火曜日はダイエット」も収録されています ♪
この「〇曜日」シリーズの新作も読みたいな。
萩尾先生、ぜひよろしくお願いいたします!(←ここで言っても)


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「火曜日はダイエット」の感想です。もしご興味があればどうぞ。

(73)「ポーの一族 番外編 火曜日はダイエット」 - 亜樹の 萩尾望都作品 感想日記